100話記念企画 No.026
月曜日。
昼休みに、紀伊梨はC組に来た。
話題は勿論、召喚術の事。
「紫希ぴょん!どうですかどうですか、しょーかんのちょーしは!」
「いえ、その・・・それが、まだ・・・」
「次何したら良いの。」
「次が最後なんですけど・・・『人の夢を見た後、17時までに起きてその人の名前を呼ぶ』だそうです。」
「夢・・・」
千百合はあまりの面倒くささに、自分がやるわけでもないのに天を仰いだ。
夢を見ろってか。しかも片思いの相手の夢を。
「そんな、やろうと思ったって出来ないような事・・・まあそれは最初からか。」
「紫希ぴょん誰が好きなのー?」
「いえ、私別に。誰に片思いしているとかそういうのはない、ので・・・・」
そうなのだ。
ないくせに呼ぼうとしてるから、紫希は未だに困っている。
「今度は何曜日までみたいな縛りはないの。」
「それは無いみたいです。」
「おー。あ!じゃーさじゃーさ、夢を見るまで待ったら良いんだよね!」
「ええ。私、最近夢を見てないので・・・次は夢を見るまで進められないんですけど。」
「でもさ、それって誰かどうでも良い人の夢とか見たらどうすんの。」
「え?」
「例え話だけどさ、もし紫希の夢に私とか紀伊梨とか家族とか、そういう人が出てきたらどうすんの?ノーカン?」
「それなんですけど・・・」
紫希も、何度も読んで色々考えてみたのだ。
解釈というか、場合分けというか、ルールみたいなものを。
「本には、『人の夢』としか書いてないんです。」
「ほうほう!」
「結ばれたい人とか好きな人とか、そういう書き方じゃないんです。人、としか書いてないんです。ですから、多分どなたの夢であろうと人が出てきた時点で・・・」
「その人が対象者か。」
「はい。」
「えー!じゃあさじゃあさ、もし千百合っちの言ったみたいに友達とかおとーさんとかおかーさんが出てきたら!?」
「・・・おそらく、キューピッドさんが勘違いするんじゃないかと・・・」
「ポンコツかよ。」
あほじゃないのかと思わないでもないが、最も文面的に千百合もそうとしか思えない。
「まあでもその手の融通の効かなさがぽいっちゃぽい?いや、無理があるな。」
「んー、よくわかんないけど、紫希ぴょんはじゃあ好きになっても良い人の夢を見ないとなんですな!」
「はい、そういう事になると思います。」
「もし紀伊梨ちゃんとかの夢を見ちゃったら?」
「その時は『17時までに名前を言う』の所を破ろうと思います。それで失敗して、終わりです。」
「えー!失敗して終わりなのー!」
「まあもう良いんじゃない。最終ステップまできたし、十分楽しんだでしょ。」
「・・・・・」
「紫希?」
「え?あ、はい!そうですね、そう、ですよね・・・」
そう、だけど。
「・・・・・・」
放課後。
紫希は一人、図書室でぼーっとしていた。
本当は今日読もうと思っていた本が手元にあるのだが、目が滑る。これは駄目。
『失敗して終わりなのー!?』
逆にだ。
今回の召喚術、成功とは何かと言われると、それは勿論片思いの人と結ばれることなのであって。
ということは、先ず片思いの人が居ないと話にならない。
そもそも、土台失敗することが前提だったのかもしれない。この召喚術は。
(誰かの夢を見たとしても・・・呼ぶ気になるかどうか・・・)
いや、無理。
好きかどうかもわからないのに、そんな失礼なこと出来ない。相手にもキューピッドにも失礼。
土日の間意識し過ぎ、考えすぎていたけれど、今日紀伊梨に言われたことに全てが集約されている気がする。
失敗して終わり。今回の件はこれで終了だ。
(終わったら皆に謝りましょう・・・折角協力してくれたのに・・・)
こんな尻切れトンボになるくらいなら、始めるんじゃなかったかな。
最初に勿体ないとか思っちゃったからだろうか。
それとも。
(・・・自分で、良くわかってない、だけで、)
もしかしたら。
自分にも好きな人が。
「・・・・・ーーーーー」
すうう・・・
と意識が遠ざかっていった。
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