100話記念企画 No.026


あれー?紫希ぴょんどこ行っちゃったのー?

(え?)

紫希居ないね。
連絡しますかw

まだ教室かもしれないね。
ありうるな。春日はしょっちゅうクラスで読書をしている。
ああ、その確率は高い。

後は図書室とか、家庭科室とか・・・
いずれも、居てもおかしくはないですね。
黙って先に帰った・・・まあ彼奴はないじゃろうな。

(皆、皆。私、此処ですよ。)

皆が自分を探してる。
でも、此処に居るのに誰も見ていない。

(皆、探して下さらなくても良いんですよ、私此処に、皆と一緒に、)

見つけた。

(え?)





「春日。おーい。」

ぼんやりする視界。
何かちょっと寒い。
ああ、寝てた。でも眠い。どうして人間は起きた直後が一番眠いんだろうか。

「起きてる?」

起きてますよ。


「丸井、君・・・」


口に出して名前を呼ぶと、丸井はホッとした雰囲気になった。
よしよし、起きたなと思ってるのだろう。

ああやってしまった。
居眠りなんて恥ずかしい。

「・・・・・・!時計!」
「へ!?」
「今何時ですか!?」

バッ!と立ち上がって、黒板上にある壁掛け時計を見た。


カチ、と音が鳴る。
17時丁度。


「・・・・!」

紫希はへなへなと椅子にもう一度座った。

嘘だろ。
成功だ。

「・・・え?何?何か約束とかあんの?課題とか?」
「いえ・・・そうじゃないんですけど・・・」
「?」
「すみません・・・あの、召喚術が、」
「ああ!え、何かやばい?」
「成功しました・・・」
「マジ?あ!じゃあ、お願いを叶えてくれる妖精さんが、」
「違うんです・・・」
「え??」
「言いそびれてたんですけれど・・・妖精さんじゃなくて・・・呼べるのは、恋のキューピッドなんです・・・」
「・・・え、」

言いながら段々顔が赤くなる紫希。
嘘だろ。
まさかこんな。

「ごめんなさい!ごめんなさい・・・!」
「え、お前願いを叶える妖精だって言っ・・・て、ねえな。言ってなかったな。おう、うん。俺の思い込み。」

マジか。
妖精さんだとばかり思っていたのに。
ちょっと予想外の方向から振って湧いた成り行きに、丸井もちょっと頬に熱が灯る。

「ごめんなさい!すみません、本当にごめんなさい、」
「まあまあ、落ち着けってば。時間がなんて?何したらクリア?」
「最後のステップが、人の夢を見て17時までにその人の名前を呼ぶ、だったんです。さっき私、皆が出てくる夢を見て、丸井君も出てきて・・・」

本当に最後の最後、目覚める直前に出てきたのもあって、寝ぼけてうっかり呼んでしまった。
あんなに慎重に注意していたのに。

「じゃあ、俺・・・」
「ごめんなさい!本当に、巻き込んでしまって、ご迷惑をおかけして、最後に油断してしまって、ああもう・・・!」

まだ眠気が抜けきってないのもあって、紫希の頭は今もうぐちゃぐちゃである。
言えば言うほど恥ずかしくなってきて、顔に熱が集まってきて、もう何から弁解して良いやら。

でも。
紫希は気づいてないが、紫希が慌てれば慌てるほど、丸井は段々落ち着きだしてきた。自分より狼狽えてる人が居ると、逆に冷静になってくるあれだ。

兎に角、紫希は召喚術を使ったのだ。
そして成功したというか、指示は遂行した。
相手は自分。

そして、その相手は自分というくだりに、紫希の意図があんまり入って無かったのであろうことも丸井には想像がつく。
何か前、好きな人居ないみたいな事言ってたし。
進めた挙句、偶々自分が相手になっちゃったんだろう。
つまりだから逆に言うと、他の誰かが自分の立場になっていた可能性は普通に高かったわけだ。

そっちよりは今の方が良い。と思う。

「・・・ま!良いって、良いって!気にすんなよ、な?」
「無理です!」
「そこまで嫌?」
「いえあの、嫌だとかそういう話じゃなくて、」
「え、そういう話じゃねえの?誰とだったら良いんだよって話になるだろい?」
「そうですけど、」

「俺は全然嫌じゃねえけど、春日は俺だったら嫌?」

「ーーーー」

違う。
そういう話じゃなくてと言いたいが、紫希も段々わかってきた。

丸井はわかっていないのではない。
わかってるけど、それは丸井にとって非常に取るに足りない話だから無視しているのだ。

今の丸井にとって、巻き込まれただとか迷惑かかったとかちゃんと相手を考えてなかったとか、そういうの別にどうでも良い。

それより大事なのは、紫希が嫌な思いしてないか。
自分は嫌な思いしてない。だから紫希も嫌な思いしていないのなら、不幸な目に遭ってる人はどこにも居ないという事になる。
なら、解決。万事OK。

「なあ。」
「・・・そうじゃない、ですけど・・・そうじゃない、です。」
「じゃ、それで良いじゃん♪」

(軽い・・・・)

いや、態度がじゃなくて。

なんだろう。
丸井と居ると力が抜けるというか、なんだか考え込んでいた事がどうでもよくなってくる事が度々ある。

こんなんで良いわけないだろと思ってたことが、良いのかな、本当に・・・に段々変わっていく。
ああ、甘えてるなあ。

「じゃ、帰るか!待たせてるしな。」
「えっ!?」
「五十嵐が何か、皆で帰ろーとか言ってたぜ?LINE来てねえ?」
「あ・・・あああ・・・・」

来ている。
寝ていたから全然気が付いてなかったのだ。


ついでに今、図書室のカウンターからガタ、と音がしたのにも2人は気づかなかった。


「既読付かねえからさ。呼びに来たんだけど。」
「ごめんなさい・・・!」
「良いって、俺も忘れてたし。どっちみち全員はまだ揃ってねえだろい。慌てない、慌てない♪」
「そうは言っても・・・!」

それでも多少手早く荷物を纏めて、足早に図書室を2人は出る。

「合流したら、成果報告だな。」
「え?」
「召喚は出来たじゃん?」
「あ・・・・!」

そうだ。
それ言わないと。

(は、恥ずかしい・・・!ああでも言いませんと、皆あんなに協力してくれたんですから言うのが礼儀ですよね、ああでも・・・!)

一度収まった顔の赤みがまたぶり返す。
そんな紫希を笑いながら見る丸井は、今向かってるからとLINEを打ちながら話しかける。

「別に、普通に言ったら良いって。」
「普通・・・」
「それとも、失敗した方が良かった?」

失敗した方が良かったか。

どっちがより良いか。という話。

「・・・・・・・それは、失敗したらご迷惑かけないで済みますし・・・」
「だからーー「でも、」

でも。今は。

「でも・・・元々、結果はどうあれ最後までやってみたいな、っていうのがあったので。それは出来ましたし・・・それに皆に協力して貰って、何というか、私は楽しい思い出になったかなって思っていて、それから・・・あの・・・あの・・・

・・・本当に、丸井君がお嫌でないのなら・・・私は、その・・・相手が丸井君で良かった、かな、って、思って、ます・・・」

恥ずかしい。こういう恋愛が絡む話はすごく恥ずかしい。
でも恥ずかしいから言うの止めよう、とはならないのが紫希の性格。

だって聞かれてるんだもん。
友達が意見を聞いてきたのなら、ちゃんと考えて正直に言わないといけないじゃないか。

「・・・・・・」
「ち、違うんですあの、家族とか女の子の友達とか、幸村君みたいに彼女さんが居る人じゃなくて良かったっていう意味で・・・」
「ふうん?」
「あ!あの、でも、だからってそうじゃないなら誰でも良いってわけじゃなくて、あの、丸井君で良かったっていうのは本当ですから、ちょっと待ってください、私何言ってるんだか自分でも、」
「ははは!分かった分かった。」
「・・・本当に分かってますか?」

「召喚したのが俺と春日で良かったな、って話だろい?」

「・・・はい。」

うんまあ、集約するとそういう事になるが。
でも呼び出すものがものなので、そうはっきり言われるとやっぱり恥ずかしいんだけど。

どうやって皆に言おうかな、普通にとか出来るかな、とか色々考えながら、紫希は丸井と図書室を後にした。


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