100話記念企画 No.070
『千百合っち、千百合っちー!』
紀伊梨が千百合の被っているキャップを回して、つばを後ろに持ってくる。
『何・・・何?』
『ほら!こーやって被ったらサトシ君っぽいお!』
『あー。』
『やべえw似合うwなあちょっと、ピカチュウ君に決めたって言ってみーーーいってえ!』
『棗君!』
『へえ、綺麗な所だね。・・・それで?何を探すって言ってたっけ?』
『ポ/ケモ/ン!』
そう、この日は紀伊梨の提案でポ/ケモ/ンを探しに来た。
ポ/ケモ/ンなんて本当に居るかよ。
と紀伊梨以外皆思っていただろう。
でもこうして付き合っていたのは、小学生だったから。
あることだってないことだって、自分の目で確かめない限り本当じゃない。皆、そういう年だったからだ。
『こういう所に居るものなんだね。』
『そーだよ!ゲームだと、あっ!野生のポ/ッポが飛び出してきた!とかって言うもんね!』
『確かに飛び出して来そうではあるw』
『草むらにいるんですか?』
『うん!大体!他のとこにも居るけど、草むらが多いかなー!』
『・・・・・』
この緑地は、背の高い雑草が生えてるところが大部分。
フェンスの向こうには森。
その向こうに山。
千百合達は2年生になるまで、ずっとこういう所でしか遊んで来なかった。
1年生の頃はーーーいや、実をいうと小学校高学年になるまで勝手に海へ行くなと言われていた。
当たり前である。子供だけで海なんて危険すぎる。
でも、だから千百合はずっと長い間、湘南の地に住んでは居ても湘南が『海の見える街』だなんて感覚がなかった。
海なんて夏に車でしか行けない場所だ。そんなの、いくら地理的に近いと言われてたって身近さに欠けすぎる。
今こうしてたって、海なんか見えよう筈もないしなあ・・・とか思っていたら、先頭を進んでいた紀伊梨が叫んだ。
『あ!』
『『『『え?』』』』
『見て見て!こっち行けるお!』
「ここ、こんなだったんだ。」
あの時紀伊梨が見つけたと言ってた抜け道は、今見ると抜け道でもなんでもなかった。
普通の道だった。
ただ、あんまり誰も通らないから隠れていただけ。その証拠に、地面には人が通ることを想定して敷石が敷いてある。(それでも最早土地の隆起のせいで凸凹だが)
「昔より通りづらいね。体が大きくなってるし、自転車も重くなってるから。千百合、大丈夫かい?」
「平気。・・・それより。」
「うん?」
「段々思い出してきた。」
千百合が忘れていた記憶ーーー高台に辿り着くまでのあれやこれやが、今ここに来たことで芋づる式に次々と引き出されていく。
「合ってただろう?」
「うん、合ってた。・・・よっと。」
悪路を自転車を押しながら少し進むと、そこから広めの道に出る。
ここから先は山道だ。
そうだ、山道だった。
こんな上り坂じゃ降りて歩くしかないじゃん、バカかよと思ったことも今思い出した。
「だっる・・・」
「あはは!前も同じことを言っていたね。」
「だって怠いのも前から変わってないもん。前より坂がなだらかになってるわけでもないしさ。」
「まあ、代わりに前より俺達は体が大きくなってるから。歩幅が広がって、疲労は前よりしない筈だよ。行こう。」
「まあね・・・・・」
「千百合?」
「・・いや。なんでもない。」
幸村の言う通りだ。
自分達は大きくなった。
手足は長くなったし、体力だってあの時よりある。
(精市、背中大きくなったな)
いつの間にか。
私以上に貴方は男の子になっていたんだなと思った。だけ。
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