100話記念企画 No.070


暑い日に人は喉が渇いてることをよく知覚する。
汗が出ると、ああ水分出て行ってるな、何か飲みたいなと思う。

でも気づきにくいこともある。
それはこういう時。
塩のおにぎりを頬張った時なんかにはじめて、ああ塩分足りてなかったんだなと思うのだ。

(美味い・・・・)

「どうぞ。」

「「有難うございます。」」

「ふふ、仲良しさんねえ。」

出されたお茶をにこ、と笑って受け取る幸村と違って、千百合にそんな余裕はない。
いや、店の人に他意はない。仲良しに見えたから仲良しねと言ったに過ぎない。
でも自分には含みを持って聞こえてしまうのだ。

ここは山道中腹にあるお茶屋さんである。
各種おにぎりと、お茶。
それだけのシンプルなメニューが、この山道ではなかなかどうして何より美味いものに早変わりするのだ。

「あの時もここで休憩したよね。」
「そうだよ。それで、お金が足りないものだからおにぎりは分けたんだ。」
「あー、そうだった。」




『兎に角、お茶は全員飲もう。』
『そうだろうなwそうした方が良いわw』
『えー!紀伊梨ちゃんお腹空いたー!お茶要らないからおにぎりが良いー!』
『でも紀伊梨ちゃん、暑いですから水分は大事です。』
『脱水で倒れるぞ。』
『倒れないもん!』
『いーや、倒れる。』
『そんなことないもん!』
『あるんだよしつけえな。』
『け、喧嘩は止めましょうよ・・・』
『お前ら、こんな時にまで喧嘩すんなしw』

そう、この頃は紀伊梨とよく衝突していた。

『分ければ足りるんじゃないかな。』
『紀伊梨ちゃんお腹空いたー!』
『お前自分のことしか考えてないのか。』
『考えてるもん!でもお腹空いたもん!お腹空いた、空いた空いたー!』
『じゃ、じゃあ紀伊梨ちゃん、私の分も食べても良いですから、』
『わーい、やったー!』

千百合は口に出しこそしなかったが、紫希のこういう所も当時好きじゃなかった。
そうやって場を流してたら良いってもんじゃないぞと思ってた。

『しかし、こっから上って何があんのかねw』
『迷子になったらどうしましょう・・・』
『最悪此処には人居るんだし戻ったら良いじゃん。』
『えー!上まで行きたいー!行きたい行きたいー!』
『まあ、まだ引き返さないとどうにもならないような時間ではないから。』

お茶も買った。
ペットボトルは良い。持ち運びできて。

『よーし!しゅっぱつしんこー!』

こんな山の中、出発する気起きねえわ。
と千百合は思っていた。


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