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次に白羽の矢が立ったのはロビンフッドだった。
彼らのマスター、舛田真衣にとって初めてのアーチャーであり、初めて再臨したサーヴァントでもあるロビンフッドは、指名されたことに一旦愚痴を挟みつつ、ゲーム内に転移した。
* * *
ロビンフッドは脳天への衝撃で目覚めた。
「い……ッ」
戦場で受けるかすり傷より遥かに痛くないのだが、思わず口に出してしまった。頭を押さえつつ伏せていたらしい頭を上げると、鬼の形相を浮かべた中年男性が立っていた。
「堂々と寝るんじゃない、次は立たせるからな!」
「……」
とりあえず頷くと、男は踵を返してロビンフッドの下から去っていった。
混乱しつつ周りを見回してみると、肩を震わせている少女の後ろ姿を見つけた。
顔は見えないし、服装も見慣れないが、間違いない。マスターだ。
暫くの間笑っていた彼女は、小さく咳払いしてからロビンフッドの頭を叩いた男の話を聞き始めた。
ロビンフッドは今は話しかけてはいけないのだろうと察し、状況把握を再開した。
マスターの話に聞いたことがある、ここが恐らく高校の教室で、ロビンフッドが来ているのが学ランだ。ロビンフッドは今高校生なのだ。
授業の真っ最中に居眠りをして、制裁を受けたというわけだ。
今まで突っ伏していた机に視線を落とすと申し訳程度に広がっていたノートに、ロビンフッドのモノではない文字が連なっていた。
曰く、ロビンフッドと彼のマスターは高校のクラスメイトで、席は前後。
中学校から同じ学校だが、特に仲良くなったのは高校に入ってからとのことだ。
共通の友人もいて、それなりに気兼ねない仲……、つまり主従関係がないだけで、現実と大差ないということだ。
ディルムッドは現実との差に苦労していたようなので、難易度的にはずっとマシだろう。
頭の整理をつけていると、授業の終わりを示す鐘が鳴った。
起立、礼の言葉に合わせて授業を締めた。
「あはは、怒られてやんの」
教師が教室を出て行ってから、にやついたマスターが自分の椅子に座ったまま振り返って笑った。
ロビンフッドはなんとなくノートを見られないよう閉じながら、唇を尖らせた。
「あの先生怖いんだからさ、寝る授業くらい選びなよ」
「耐えられるんなら寝てねえよ」
「またゲーム?」
「あ〜、ま、そんなとこっすかねえ」
「なんかはぐらかした? ……あ」
ゲームの導入の都合だとも言えず、目を逸らして応えると、マスターが眉をひそめた。それから何かに気づいたように声を漏らす。
「新しい彼女か」
「え」
予想外の言葉にロビンフッドが固まると、彼女は半目になった。
「ふーん、そうなんだ。相変わらずスパン短いね」
「いや、ちょっと」
知りもしない女の話題に、ロビンフッドがどう弁解したものかと思っていると、マスターはにやにやしていた表情を引っ込めて、顔を背けた。
「またしばらく遊べないんだ」
ロビンフッドだったら聞こえないくらいの大きさだったが、ロビンフッドには確かに聞こえた。少し寂しそうな拗ねたような横顔を見て、ロビンフッドは衝動的に彼女の背中に手を伸ばしたが、それよりもさきに視界が暗転した。
「誤解ですって!」
「うお!?」
伸ばした手越にはぎょっとした顔のサーヴァントがいた。
「……」
ロビンフットは何とも言えない感情に苛まれ、ディルムッドと一緒になって静かに膝を抱えた。
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