ね、面白くなかったでしょう。
リザはそう言ってグラスを口に運んだ。中身がただの水だということほっとして、何故かわからず首を傾げた。

「面白いっつーか、変な人生送ってんだな、おまえ」
「今時、孤児なんて珍しくないでしょう」
「いやそこじゃなくてシスターのくだりな。孤児院建てるために泥棒ってどういう思考回路だよ」

シャチが苦笑いして言った。シスターのぶっ飛びように関しては心底同意だ。

「シスターがなくなった後に実感したんですけど、あのひとは本当、規格外です」
「強い人だったんだね。賞金もすごかったんじゃない?」
「賞金はかかってませんよ。泥棒にとって賞金かけられることは致命的ですから」

と、昔シスターに教わったことを口にした。
ふと泥棒猫の彼女が脳裏に浮かんだが、彼女は彼女で規格外だ。なんだかんだ否定していたが、彼女は強い。それに知名度を上げたのは海賊になった後のはずだ。まぁあの美貌である。目立つのは仕方ない。

「確かにリザも賞金首じゃないもんね」
「ええ、追われる身なんてことになったら自由に動けないじゃないですか。効率が落ちます」
「それもシスターの教えなんだよな。本職って感じだな」
「実際本職なんだよ」
「最後の最後まで現役でしたしね。なんの予兆もないし、最後の会話は『朝ごはんパンでよろしく』だし。泣くに泣けません」
「そこまでくるとなんかスゴイね」

リザの口から飛び出るシスターの話に二人と一匹はドン引きを通り越して畏敬の念すら抱く。

「それに反してジャンバールとの出会いが意外とフツーだった」
「そんなことないんですよ、助けられた瞬間、こう、きらきらってなるくらいかっこよかったです。うーん、シスターの印象が強すぎましたかね」
「だな」

ふとベポが考えるような仕草をした。
「家族かー、じゃあおれは兄ちゃんかな!」
「いやー、ベポ先輩は先輩ですよ。お兄ちゃんって柄じゃないですね」
「えー」
「まず人間じゃないしな」
ペンギンの言葉にベポが凹む。リザはご機嫌取りを始めると、シャチが意気揚々と手を上げた。
「俺は?」
「シャチ先輩もですね。ていうか先輩って呼んでるんですから先輩でしょう」
「チェッ。じゃあ兄ポジションはペンギンかー」
「ポジションってなんだポジションって」
「そうですねぇ、一番近いのはそうなんじゃないですか。でも実の兄って感じではないですね」

リザがペンギンを見ながら言うと、「義理の妹か」と悪ノリで頭を撫でられた。柔らかい手つきに、今更ながら最初の警戒していたのがバカみたいに思えてきた。
それからベポが順番に名前を挙げていく。といってもここにいる二人と一匹ほど話すわけではないので距離感はやや遠い。

「じゃ、キャプテンは?」

締めに出された名前にリザは腕を組んだ。

「トラファルガーさんは身内って感じはしないです」

目下リザが一番苦手なのがローだ。
しかしそれを口に出すと、ローのことを尊敬してやまない彼らが煩い。

「「キャプテンはキャプテンだろ!」」
「それ言い始めると元も子もないんですけど」

と、そこにバタバタと足音を立てて別のクルーが飛び込んできた。
「お、おい、キャプテンが……!」

キャプテン?
丁度話題に出てきていたひとの名前に、三人と一匹は顔を見合わせた。