「全部出せよ」
「……わかってますよ」

リザは 袖口からバッサバッサと大量の札束や麻袋、それとナイフを数本を出していく。
誤魔化しは許さないとばかりに見てくるパーカーの男――おそらく、トラファルガー・ロー。比較的柔らかな眼差しで傍に居るジャンバール。面白そうに見物しているシャチを始めとしたクルーたち。

「それで全部か」
「ハイ」
「本当か」
「ハイ」
「……」
「……」
「ベポ」
「分かりましたよ!」

リザはため息をついてから、ベルトから裾を引き抜いた。
バサバサバサ。札束がリザの足元に積もる。日用品も落ちてきた。こうなりゃヤケだ。リザは中に引っ掛けてた分もすべて落としてしまう。
「わあ」
「スゲェ数だな」
「幾らぐらいあるんだ……?」
「一束百万ベリーでしょ? いち、にい」
「一億じゃ済まねえだろ、コレ」
「いま服から服が出て来たぞ」
驚く海賊たちを尻目に、リザはブーツを緩めズボンを引き下ろした。

は?

と、何人もが間の抜けた声を上げたが、ショートパンツを履いたリザがズボンをひっくり返したところでとうとう言葉を失った。
再び札束の雨が降る。
直接足についていたケースから丸めた紙を外して札束の上に投げる。
ベポが一番にそれを開いた。
「地図かー。どこの島だろう」
ベポの言葉に、海賊たちが宝の地図か!?と目を輝かせ、リザは白熊が地図読むのかと目を見張った。
その後はっとして、リザはズボンを履いてから脱いでいたブーツを地面に近い場所でひっくり返した。中を覗き込み掻き出す。
今度は札束ではなく、麻袋が落ちてきた。コロリと金銀宝石、輝く装飾品が外に出てきた。量はそれほど多くない。

「これで全部です」
リザの目の前に積まれたそれらは、手ぶらだったリザが持っていたとは思えないほどの量があった。体積はもちろん、質量も。
これだけのものを持って軽々と走っていたのか、シャチは思わず息をのんだ。いったいいくらになるのだろう。おそらく全員が思っている。ただひとり、彼らの船長以外が。

「いいや、まだだな」
「キャプテン?」
組んでいた足を解いて立ち上がってローがリザに歩み寄る。塵でないモノが積もっているのだから、当然足元には山が出来ている。まさしく宝の山。リザを包囲するようなそれの前で立ち止まり、ローが手を伸ばす。
長い腕は築かれた砦をいとも容易く越えてきた。リザの被っていたキャップを掬うように奪い取り、中を確認することなく逆さまにする。
リザの舌打ちと共に、いくつかの貴金属が落ちていく。そのなかに果実が紛れているのをみつけたローが反対の手でそれを掴んだ。
「へェ、こんなもんもあんのか」
ニヤリとローが口角を上げる。

不可思議な模様を表面に走らせたリンゴに似た果実。海賊ならそれが何なのか誰でも知っている。

「悪魔の実!?」
「なんで食べなかったんだ?」
「……海は貴重な逃げ場のひとつですよ。リスクが高すぎます」
何の実かもわからないのだから、さらに実食する気にはなれない。
本当にヤバいときの一か八かの賭けに使えそうだから盗っておいたのだ。

「本当にそれで最後です。あとは煮るなり焼くなり、お好きにどうぞ」

次の島で降ろされるのか。それとも今ここで殺され、海に捨てられるのか。
だが、もしも殺すというのなら黙って殺されるつもりもない。

リザは袖にあるナイフを確認しながら、ローを見据えた。ローは口角を釣り上げたまま、
「リザだったな」
と断定的に確認した。頭のいいタイプにありがちな形だけの問い。答える義務はない。
ふんっ。と鼻を鳴らすリザのその生意気な表情は、瞬く間に崩れた。

「お前は今日からウチのクルーだ」