リザが何かを言う間も無く、ローはジャンバールを連れて奥の船室へと去って行った。
呆然とするリザの肩を、だれかが叩いた。振り向けば白いもふもふ。一歩下がって見上げる。ベポだ。
「おれはベポ! リザの先輩だよ! 今日からよろしく!」
「えっ先輩? ……ていうかなんで白熊が喋って……」
「白熊のくせに話してすみません……」
「えっ、あ、ちょっと、凹まないでくださいよ! あーもう、ベポ先輩!」
ズーンと沈んでいたのに、リザが先輩と呼ぶとすぐに元通りだ。
どうやら感情の起伏が激しいらしい。……計算でやっているとしたら恐ろしい白熊だ。
「えへへ、リザ、なんかあったら頼っていいよ。おれ先輩だからね!」
「は、はい……ってそうじゃないですよ! せ、先輩はいいんですか!? 急に仲間だなんてそんな、普通じゃないです!」
「うーん、なんとなくそうなるんじゃないかとは思ってたし。もし宝だけが目当てなら、あそこでバラして体だけ持って帰ってたよ?」
「え゛」
思わぬ言葉にリザの頬が引き攣った。
「たぶんあそこにいたクルーはみんな同じこと言うと思うけど。それにキャプテンが決めたんなら文句なんてないよ」
「は、はぁ」
この海賊団は船長の独裁政治らしい。
珍しいことではないし、前の船だってジャンバールが絶対ではあったのだが、海賊のこういうところにはよくわからない。
リザの引いた視線を物ともせず、ベポはつぶらな瞳を輝かせてリザを見下ろした。
「それにしてもリザ、あんなにいっぱいどうやって持ってたの?」
「企業秘密です」
「えー」
「すみません。……代わりと言っては何ですが、この地図をどうぞ」
「いいの? ありがとう!」
「……ていうかこれ、置いていきましたけど、没収されますよね」
「どうだろ。全部ではないんじゃない?」
「じゃあ少し回収しときますか……」
リザは麻袋をひとつ摘まみ上げ、ブーツの中にしまった。
ベポの中でリザは既に仲間らしく、船の中案内しよっかと申し出てきた。
リザとしては仲間扱いに全然納得できていないが、なんにせよ次の島まではこの船に居なければいけないことに気付き、不承不承頷いた。
「じゃあ、お願いします」
「りょーかい!」
ジャンバールはローについて行ってここにはいない。ならばベポと一緒にいるのが一番いい。
たったったっと、サイズに似合わない軽快な動きで先を行くベポを呼ぶと、不思議そうな顔できょとんと首をかしげた。海賊のはずなのに、可愛い仕草をするベポがおかしくって、リザは手をベポに向けて差し出し、少しだけ笑った。
「短い間ですが、よろしくお願いします。先輩」
「短くはならないと思うけど、リザ、これからよろしく!」