遠い昔の日のこと。
アマゾンリリーで一番大きな木の上で、ハンコックと鈴蘭が、夜空を見上げたその日、ふたりは誓いを立てた。
ハンコックが何と誓ったか、もう覚えていない。そのころは出会ったばかりで、彼女の願いに大して興味もなかったのだ。
まあたぶん、きっと今みたいに自分勝手なことだった。
鈴蘭が誓ったのは、妹のことだった。
マーガレットと、それを取り巻くものすべてを守ることを。
マーガレットを幸せにすることを誓った。
それに対しどこに対抗心を燃やしたのか、ハンコックが「わらわも守れ!」と駄々をこね、押しに押されて結局頷いたのを覚えている。
私はその誓いを守れているのだろうか。
マーガレットがこの瞬間も笑っていればいいと思う。
叶うことなら、私の隣で――
* * *
海軍本部へ向かう船の上、夜中にふと目を覚ました鈴蘭は、故郷からとは遠く離れた夜空を見上げていたら、なんだか感傷的な気分になってしまったのだ。
甲板で一人、鈴蘭は目を閉じた。
「――……しんぱい、してっかなぁ」
寝起きの声はかすれていて、揺れる海の中に沈んでいった。
風を感じながら目を閉じる。
笑っていてほしい。でも心配してくれていたら嬉しい。
「我ながら、矛盾してんな」
自分勝手な思いに乾いた笑いが漏れた。ハンコックに文句を言えた身ではない。
マーガレットは強くなった。
ハンコックも強くなった。
彼女らはもう、守られなくても大丈夫だ。
鈴蘭が傍に居る必要なんてない。
首から下げたネックレスの、その先についた笛に触れる。
きっと一番弱いのは鈴蘭だ。
幼い日の自分が見たら、きっと笑われてしまうだろう。
それでもまだ、覚悟はできない。