空から船が降ってきた。

落ちてくる絶叫の中に聞いたことのある声があった気がして、鈴蘭はハンコックに駆け寄った。

「ハンコック……!」

鈴蘭が声をかけたが、ハンコックはぴくりともせず海上に落ちた船を凝視していた。

ルフィがエースを呼んで叫ぶ。
その叫びはハンコックと鈴蘭のもとまで届き、その生存を知らせた。

「ルフィ……!」
恍惚とした表情でハンコックがつぶやいた。
「よくぞ無事で……!」
鈴蘭は一瞬、釣られて安堵したものの、次の瞬間には罪悪感が胸を占めた。

ルフィが死んでいる可能性だって十分にあった。
その事実が鈴蘭の胸を締め付ける。

「……見惚れんのもほどほどにな」

強張らせた表情を無理やり解して、鈴蘭はハンコックの肩を小突いた。

ルフィは劇的な登場から圧倒的な存在感をもって戦場を駆けた。
流石ハンコックを射抜いた男だ、と鈴蘭は小さく笑う。

大っぴらには支援できない身だが、進行方向の敵を削っておくくらいはできる。
鈴蘭はいくつもの矢をつがえると、大雑把に放った。
意図しない方向に飛んでいく矢も、この人ごみの中なら誰かしらに当たる。
無駄に速さのある完全無差別攻撃はそれなりの成果を出した。

鈴蘭が次から次へと矢を放っていると、ハンコックが突如一直線にどこかへ向かう。ハンコックに思わず目を剥いた。
ハンコックが明らかな目的をもって動くすれば、理由はひとつだ。

「マジかよ、堂々としすぎだろ、あいつ……!」

人が陰ながらやってるというのに、と頬が引き攣ったが、ルフィに対しては本当にどこまでも馬鹿正直なので仕方がない。恋の力とは末恐ろしい。
鈴蘭はまだ知らないその感情に少し身震いした。

鈴蘭の角度から、ハンコックがルフィに鍵を渡そうとしているのが見えた。
鈴蘭は周囲にいる輩を始末しながら、抱き付かれて倒れ込むハンコックを見て頬を引きつらせた。