鈴蘭は無差別に攻撃するたび向けられる『お前もか』という視線をスルーしながらハンコックの下へ走った。
『あの方以外、男はすべて敵』――そういう方針だ。悪いが、船長のご意向だ。
当の船長、ハンコックは海賊の中で死神と名高い、白猟のスモーカーと対峙している。
「ハンコック!」
「おお、鈴蘭」
「おお、じゃねーよ。なにやってんだ、お前」
「こやつがわらわの邪魔をするのだ」
「だから、おれはアンタじゃなくあいつを……!!」
スモーカーの言葉に、鈴蘭は思わず感嘆した。
ハンコックのことをアンタ呼ばわりとは。
性格は悪くともこの美貌だ。
容姿だけならどんな人間にも勝る――もちろん、鈴蘭にとってはマーガレットが一番だが――ハンコックを目の前に他の人間に目移りするなんて。
よほどの仕事人間と見た。
スモーカーがちらりと視線を送った先を見ると、麦わら帽子が駆けている。
鍵を渡すところは見ていたが、なるほど、スモーカーはルフィを追おうとしてハンコックに邪魔されたのだろう。
「……わらわの邪魔、なぁ?」
その言い回しをからかうべく、鈴蘭はニヤニヤしてハンコックを見た。
ハンコックは察して頬を赤く染め、キッ、と麗しい顔面を歪めた。
「な、何じゃ、わらわに物申すか……!」
「別に何もいってねーだろー?」
口元を緩めて煽ると、ハンコックが身を捩りながら照れた。
そうやっていると、鈴蘭の視界の隅で、頬を引きつらせたスモーカーがルフィを追おうした。
おっと、と進行方向に弓を放つのとほぼ同時に、スモーカーの纏う煙が石化する。
「わらわから目を離すとは良い度胸じゃ。石くれにしてやろう」
「あー、やっぱ弓当たんねえなあ」
「なんなんだよお前ら……!」
眉間に濃く皺を寄せたスモーカーが振り返り、十手を向け、忌々しそうに吐き捨てる。
「わかっちゃあいたが、碌なもんじゃねえな。七武海ってのは」
「硬いこと言わねえで、一緒に遊ぼうぜ」
「フン、男に生まれた身の上を呪うのじゃな」