胸にかけた銀笛が揺れる。

劈くような悲鳴と雄叫びが場を支配している。
周りを見渡せば赤ばかり。
また一つまた一つと消えていく声。
鈴蘭は見聞色の覇気を少しだけ抑えた。

もし、自分が。
そう思かけて、すぐに首を振った。

違う。違うな。

この場にいる人たちは皆自分の意思でここにいるのだ。
それを自分のせいだというのは冒涜だ。

「お前もこんな気分だったのかよ、火拳」

最悪だな。
乾いた声で、鈴蘭は吐き捨てた。
処刑台の上で自分を救いに来る仲間を見ていたエースは、何を思っていたのだろう。

眉を寄せる鈴蘭は腹部に大きな穴をあけ横たわるエースの傍らに膝をついた。
白ひげ海賊団に追い打ちをかけようとする将校がエースの傍に海賊がいるのを見止めたが、それが鈴蘭であることに気付くと足早に戦線へと駆けて行った。
不用意なことをして攻撃されてはたまらないのだろう。それだけの前科が九蛇にはある。

エースの遺体に手を伸ばし、まだ僅かに熱の残る身体を撫でる。
傷口の淵をなぞったあと、ポーチの中から小瓶を一つ取り出し、傷が露わになっている場所へ垂らした。

「ちゃんと助けられてくれよ」

目を閉じて、鈴蘭は小さく呟いた。