「はっはっは。いやー、ルフィ、ほんとにありがとな!」
「気にすんな。アイツはおれの恩人なんだ!」
「なァに、マーガレットを救ってくれたんだ。礼を言っても言い足りないさ!」

男がそんなに珍しいのか、寄ってくる女たちから逃げたルフィはマーガレットと村の片隅に逃げた。
そこにはニョン婆と鈴蘭がいた。
軽く自己紹介を終えたあと、闘技場での件についての話になった。
ルフィはマーガレットは自分の恩人で、助けることは当たり前だと言ったが、鈴蘭にとってはなにより大切な妹の命を救ってくれた恩人――正確には妹の恩人だが、鈴蘭からしてみれば妹の恩人はイコール自分の恩人である。寧ろ自分の恩人よりもよっぽどありがたいと思う。

鈍感なルフィでも理解できるほどに鈴蘭は過保護だ。
「此奴のような者のことをシスコンというらしい」
外の世界について島で一番詳しいニョン婆があきれ顔でそう言った。
しかしその重度のシスコンっぷりを抜けば、鈴蘭は結構気さくだ。何より妹の恩人であるルフィに邪険な態度を示すはずがなく、鈴蘭とルフィはすぐに意気投合した。

現在、鈴蘭は新聞を読むニョン婆に興味を示したルフィを見ながら、マーガレットの淹れたお茶を飲んでいる。
ああこれこそ至高の味だ。
マーガレットが淹れるのなら例え水が腐っていようと血で淹れられていようとなんでも美味しい。

「ええ〜〜〜〜!?!? あいつ……!! 七武海!?」
普段新聞の類を読まないルフィはハンコックが七武海であることに驚き、ニョン婆は呆れた表情を見せた。
「蛇姫がこの国の“皇帝”並びに『九蛇海賊団』の船長となったのは11年前。
あのコはまだ若かったがたった一度の遠征で、その首には8千万の懸賞金がかけられた。
そこの鈴蘭が船医になったのも同じ年。鈴蘭は『九蛇の魔女』として懸賞金をかけられた。たしか、4千万だったかニョ。
もともと轟いておった九蛇の悪名と相俟って、中枢の者たちは即座に蛇姫を警戒し、“七武海”への加盟を進めてきたニョじゃ……――だが今やその称号も剥奪の危機……」

まだまだ続くニョン婆の話を一度に聞いたルフィは再び叫び声をあげた。
七武海と海軍本部が白ひげと戦うことに戸惑いを見せるルフィを見て、ニョン婆は再び呆れた表情を見せた。

「ただ、その話はあくまで予測の話じゃ。しかし十中八九戦いは起こる。世界政府は打って出たのじゃ…。
白ひげは仲間の死を決して許さぬ男。それを知ってなお、白ひげの優秀な部下、ポートガス・D・エースの、“公開処刑”を発表した……!」
「……!! ……誰だって!?」
「エース……火拳のエースじゃ」

「……どうしたの?」話を聞いていたマーガレットが訝しげに聞くが、ルフィはエースが処刑される、という情報で頭がいっぱいだ。
ほわほわお茶を飲みながら聞き流していた鈴蘭も、マーガレットが口をはさんだことで、
「白ひげがどうしたって?」
と会話に意識を注ぐ。

「兄ちゃんなんだよ…! エースはおれの兄ちゃんなんだ!!」
「何と…!?」
「……!?」
「? エース? 兄ちゃん?」
「少し黙っておれ鈴蘭! ――まことか!? そなたの兄!?」
「捕まってたなんて知らなかった……処刑ってなんだよ!! もう逃げられねェじゃねェか!!」

適当に聞いていたので話についていけない鈴蘭を置いてけぼりだ。
しかし妹が会話に参加しているので、どうにか理解しようと頭をフル回転させる。
話によればどうやら六日後、マリンフォードでルフィの兄が処刑されてしまうらしい。ここからシャボンディ諸島は一週間かかるので、仲間と集まる前にルフィの兄の件は終わってしまう。
しかし、兄が幽閉されているインペルダウンになら海軍船で4日。ルフィの兄を救う方法はハンコックが収集に応じ、それに乗じて軍艦に乗るしかないらしい。

「(でもあいつ嫌がってんだよなぁ……。まぁヤな思い出もあるし…)」
「じゃ、おれ、あの女に頼みに行く!!!」

黙れと言われて律儀にだまっていた鈴蘭は、ルフィとニョン婆が九蛇城へ行くのを見送っていたが、振り返ったニョン婆が鈴蘭に向けて声を張った。

「ほれ、何をしておる鈴蘭!おぬしも行くニョじゃ!」
「えー……」
「あれ? 姉さん、行かないの?」
「行く」