「ここが大監獄、ね」

鈴蘭は真正面にそびえる海賊にとっては地獄そのものの建物を見上げた。

アマゾンリリーを出てから四日と半分が過ぎた頃、インペルダウンについたと知らせに来た海兵と共に甲板に出れば、周りにはたくさんの軍艦と海兵がわらわらと広がっていた。
ハンコックはそのど真ん中を悠然と進んでった。鈴蘭はその後を一二歩開けてついていく。

モモンガがボディチェックことを口にすると、ハンコックが微妙に緊張した。
「(大丈夫か…?)」
素肌まで調べられると色々となると不味い。
ハンコックの背中の刻まれた焼き印を思い浮かべ動揺しつつも鈴蘭は平静を装った。
冷静に考えてみれば素肌までいく前にルフィが見つかる。

もし何かあったら……速やかに全員気絶させて逃げられるか? いや、まあハンコックと合流できればなんとでもなるか、と適当に納得して見送った。
海楼石を付けられたハンコックが奥の部屋に連れて行かれるのを見ながらそう決めた。


* * *

ハンコックが何の騒ぎも起こさずに出てきたので、とりあえず一安心した。

「それでは、次は鈴蘭さん、来て下さい」
「あ、ほいほい」

鈴蘭がサングラス美人に呼ばれて近寄ると、海楼石の錠をかけらそうになったので腕を引いて首を傾げる。

「いや、私能力者じゃねえよ?」

一瞬ふれても何ともなかったからか、彼女は戸惑った様子で自身の上司に判断を煽いだ。

「どちらにせよ手錠はつけるべきだろう」

真面目なモモンガがそう言ったのに対し、鈴蘭は飛びかかる勢いで反抗した。

「待ってくれよ、冗談じゃねえ! 私は拘束されるのはゴメンだ!」
「とはいえ、さすがに何もせずに入れるわけにもいかんだろう」

乗船前のやりとりからして冷静な話し合いができると踏んだモモンガが圧し切ろうとするが、鈴蘭は打って変わって拒否した。

「嫌だ! どうしても錠しなきゃいけねえってんなら私は入らねえぞ!」
「な……っ! 単独行動はさせないと言っただろう!」
「能力者『は』海楼石をしなきゃならねえっつってただろ。枷されるなんて聞いてねえ!」

断固として首を縦に振らない鈴蘭に対して、当てが外れたモモンガは少し戸惑っている。ダメもとでハンコックを見たが、フンと鼻を鳴らして一蹴された。

「鈴蘭がこうなると動かせるのは一人しかおらん」
「こいつが来なくて困るのはそちらも同じだろう、なんとかしろ!」
「早まるでない。そのひとりというのはわらわではない、わらわでさえ鈴蘭に無理強いはできん」
「外で待ってりゃいいだろ、あんなに軍艦があるんだ、私くらい一網打尽だ!」

鈴蘭は両手首を背に回し、手錠から逃れるように隠した。
何がそこまで頑なにさせるのか、インペルダウンの入り口、ルフィが回廊を駆けずり回っている中、再び言い争いが勃発した。