思わぬ事態にその場は一時騒然としたものの、結局、鈴蘭が全武装解除することで話がついた。
鈴蘭ひとりであれば監獄の署長と中将で十分抑えられるだろうという見解だ。鈴蘭自身もそう思う。ハンコックだけは不満げだったが、正直なところハンコックにとって鈴蘭が飛びぬけて相性が悪いだけで、単純な実力で言うとそんなものだ。
鈴蘭は数本の小刀と医療用メス、注射器、それから背負っていた弓と矢を置いていくことになった。鈴蘭は弓矢が得意ではないのだが、マーガレットが丁寧に手入れしてくれるので手放さずに持っている。そのため弓を手放すのは大層渋ったが、海軍側が譲歩していることも理解していたので鈴蘭も百歩譲った。

鈴蘭はレベル4の監獄所長室からレベル6に下りるリフト内で、
「メロメロの実ってほんと反則だよな」
とマゼランを虐げるハンコックに向かって言った。世間話の体を装い、先ほどのことを尋ねてみる。
「わらわが美しいがゆえのこと」
ハンコックからの返答。なるほどそういうことらしい。

事情を把握してから、カモフラージュの返答に対し確かにと頷いた。

「正直ハンコックが食べなきゃここまで強力になってねーよな」
「本当に全く、性質が悪い」

心底同意と言った様子でモモンガに頷かれ、鈴蘭は苦笑いした。

メロメロの実。
直接ダメージを与えることでも石化することができるが、その本領は能力者自身に邪な感情を抱いている石化するところにある。
大勢の人間を個々の強さ無関係に無力化することができる、まさに反則級の能力だ。
しかしそれは老若男女を虜にする絶世の美女であるハンコックが得たからこそで、自分が食べていてもここまで強くはならなかったろう。

世の不公平を嘆いていると、マゼランを邪険にしていたハンコックが小首を傾げてじっと見つめてきた。

もうすぐ30になるというのに、様になり過ぎるというのもいかがなものか。
鈴蘭の心情を知ってか知らずか、ハンコックは白磁のような指を伸ばし、つい、と鈴蘭の輪郭をなぞった。
「わらわは」、と艶のある唇を開く。

「そなたの顔は嫌いではない」

鈴蘭の顎を掬い上げ、誘うように微かに微笑みを浮かべる。

何か見てはいけないもののような、白百合が咲き誇りそうな雰囲気がリフト内に広がった。目をハートにしていたマゼランの鼻からつーっと血液が垂れてきた。
くだらないと思いつつも目が離せないモモンガが、ごくりと喉仏を上下させた。

「嫌味か」

そんな怪しい空気を、ハンコックの手と共に鈴蘭が払い去った。
唇を突き出し鈴蘭が不満を訴えるとハンコックが得意そうに笑った。

「相変わらず素直ではないな」
「うるせ。はいはい、女帝のお言葉有難くいただきますよ」

そうこうしているうちにリフトは6階についていて、我に返ったモモンガが言った。

「なにをやっている、行くぞ」
「わらわに命令するでない!」
「世話掛けるね、中将殿」
「強気な貴女も素敵です!!」
「黙れ!!」

そして、相対する。