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晴れてダブルヤンキーと知り合い擬きになった私は、特に大きな問題もなく一学期を終えた。
中学最初の夏休み、私は父の実家に来ていた。
「じーちゃん、久しぶり〜」
「おー! よく来たな!」
農家をやっている祖父母は、こんがりやけた肌に皺を寄せて歓迎してくれた。
毎年長期休暇の際にはこうして里帰りをしているのだが、母の実家に行ったことはない。母方の祖父母が家に来ることはあるので縁が切れているわけではないものの、この年にもなれば何か事情があることくらいは察する。
まあそんなことは今は関係ない。
「姉ちゃんはなー、今料理学校行ってんだぜ。似合わねーよなー」
弟が呑気に笑ってそう言ったので、頭に拳を落とす。その光景を見て祖父は豪快な笑い声をあげた。
「そうかそうか、じゃあ今日の夕飯はアキにお願いするか!」
「え〜、お母さんのが上手じゃん」
「この人は孫の手料理が食べたいだけなのよ」
祖母にそう言われては、もう反論はできない。
「仕方ないなあ」
私は苦笑いして、夕飯の献立を考え始めた。
入学試験で自覚した私の厄介な性格が家族には適用されないと気づいたのは、やりとすぐのことだった。
新堂くんにとっての料理が「お客様に提供するもの」であるなら、私にとっての料理とは「自分の食卓にあるもの」なのだ。だから、その食卓を共にする家族の為なら、私は抵抗なく料理をすることができるのだ。
まあ、理屈はこの辺にして、そろそろ作り始めようじゃないか。
遠月の名門の名は伊達ではなく、実習授業こそ新堂くんに頼っているものの、私の料理の腕前はこの短期間でメキメキ上達した。授業自体はかなり真面目に受けている方だし、家での復習も欠かしてはいない。今我が家の夕飯担当は私だ。朝昼は母が作っているけれど、到底敵わず悔しく思いながら舌鼓を打つ日々だ。
「ねーちゃん、味見!」
弟がパカッと口を開けて寄ってきた。私が熱々の揚げ物をその口に放り込むと、「熱い!」と揉んどりうって消えていった。
私が遠月で学んだことをそのまま夕飯に反映させているものだから、私の横でそれを見ている弟も同じように学んでは当番のときに披露している。
今更ながらなんか悔しいので、腹いせだ。
水のグラス片手に恨めしげな目をして戻ってきた弟に、夕飯ができたから皆を呼ぶように伝えた。
「んん、美味い! こりゃアキが農場を継いだ暁にレストランを併設する計画が、現実味を帯びてきたのう!」
「またその話かよ、親父。俺が跡継がずにサラリーマンになったからって、孫に強制すんなよな」
「強制なんかしとらんわ! なあ、アキ」
「まあ吝かではないよね!」
就職難のこの時代、畑仕事も嫌いじゃないし、レストラン云々はともかく跡を継ぐこと自体は結構乗り気だ。
私が卵焼きにかぶりつきながら言うと、祖父は勝ち誇って白い歯を見せた。
中学最初の夏休み、私は父の実家に来ていた。
「じーちゃん、久しぶり〜」
「おー! よく来たな!」
農家をやっている祖父母は、こんがりやけた肌に皺を寄せて歓迎してくれた。
毎年長期休暇の際にはこうして里帰りをしているのだが、母の実家に行ったことはない。母方の祖父母が家に来ることはあるので縁が切れているわけではないものの、この年にもなれば何か事情があることくらいは察する。
まあそんなことは今は関係ない。
「姉ちゃんはなー、今料理学校行ってんだぜ。似合わねーよなー」
弟が呑気に笑ってそう言ったので、頭に拳を落とす。その光景を見て祖父は豪快な笑い声をあげた。
「そうかそうか、じゃあ今日の夕飯はアキにお願いするか!」
「え〜、お母さんのが上手じゃん」
「この人は孫の手料理が食べたいだけなのよ」
祖母にそう言われては、もう反論はできない。
「仕方ないなあ」
私は苦笑いして、夕飯の献立を考え始めた。
入学試験で自覚した私の厄介な性格が家族には適用されないと気づいたのは、やりとすぐのことだった。
新堂くんにとっての料理が「お客様に提供するもの」であるなら、私にとっての料理とは「自分の食卓にあるもの」なのだ。だから、その食卓を共にする家族の為なら、私は抵抗なく料理をすることができるのだ。
まあ、理屈はこの辺にして、そろそろ作り始めようじゃないか。
遠月の名門の名は伊達ではなく、実習授業こそ新堂くんに頼っているものの、私の料理の腕前はこの短期間でメキメキ上達した。授業自体はかなり真面目に受けている方だし、家での復習も欠かしてはいない。今我が家の夕飯担当は私だ。朝昼は母が作っているけれど、到底敵わず悔しく思いながら舌鼓を打つ日々だ。
「ねーちゃん、味見!」
弟がパカッと口を開けて寄ってきた。私が熱々の揚げ物をその口に放り込むと、「熱い!」と揉んどりうって消えていった。
私が遠月で学んだことをそのまま夕飯に反映させているものだから、私の横でそれを見ている弟も同じように学んでは当番のときに披露している。
今更ながらなんか悔しいので、腹いせだ。
水のグラス片手に恨めしげな目をして戻ってきた弟に、夕飯ができたから皆を呼ぶように伝えた。
「んん、美味い! こりゃアキが農場を継いだ暁にレストランを併設する計画が、現実味を帯びてきたのう!」
「またその話かよ、親父。俺が跡継がずにサラリーマンになったからって、孫に強制すんなよな」
「強制なんかしとらんわ! なあ、アキ」
「まあ吝かではないよね!」
就職難のこの時代、畑仕事も嫌いじゃないし、レストラン云々はともかく跡を継ぐこと自体は結構乗り気だ。
私が卵焼きにかぶりつきながら言うと、祖父は勝ち誇って白い歯を見せた。
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