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「慶次、今年の花見は私の後輩も連れていきますが、宜しいかしら?」
「え?まつねぇちゃんの後輩も?俺は別に構わないけど。」
「それは良う御座いました!さあ!腕に縒りを掛けて御弁当を作らなければ!」
満面の笑みを浮かべて腕を捲るまつは随分と張り切っている。
桜が綻び、週末には見頃を迎えるだろうと慶次は窓の外を眺めた。
ーーー週末
「こっちですよ、シイカ。」
「待って下さい、まつ先輩!」
「あれ?シイカちゃん?」
「何だ慶次。知っているのか?」
「まあ、ちょっとね。」
花見当日。
まつが連れてきたのは意外な人物だった。
彼女がまつの後輩で有る事は知っていたが、花見に呼ぶ程仲が良かったなど初耳である。しかしその性格を考えればまつが気に掛けるのも何と無く分かる気がするが。
「すみません、まつ先輩。身内だけの御花見だなんて知らなかったとは言え御邪魔してしまって…」
広げた茣蓙の上に座ると、恐縮して頭を下げるシイカにまつは首を振った。
「いいえ、そんなことはありませぬ!誘ったのは私ですし、御花見は人数は多い方が楽しいですし。ね、犬千代様?」
「おう!皆で食った方がまつの飯はより旨い!!」
「まぁ…犬千代様ったらっ。」
豪快に笑った利家にまつは両手を頬に添える。
「あいっかわらずアツいねぇ!まつねぇちゃんとトシは!!」
「素敵な方々ですよね。」
「あれ?そーゆーの興味ないんじゃなかったのかい?」
シイカの口から出た意外な言葉に慶次は首を傾げた。すると、彼女はあら、と意外そうに言葉を続ける。
「私だって10代の女の子よ、慶次さん。見る分には幸せになるわ。見る分には。」
「………そっか。」
あくまでも見る分で有る事を強調したシイカに慶次は肩を落とす。
知ってはいたが改めて虚しい。
「まつー!!某、腹が減ったぞー!!早く飯ー!!」
「はいはい、只今。」
そんな事など露知らぬ利家が花見弁当を大声で要求すると、まつは微笑みながら、バスケットを開けた。
「あ、先輩!手伝います!!」
「まぁ…!では御願い致しますわ。」
シイカはその様子に素早く動くと、まつの傍に付く。少し驚きつつも嬉しそうに快諾され、二人はてきぱきと料理を広げた。
「本当に貴女は気が利きますわ。いい御嫁さんになれますわよ。」
準備が出来ると、上機嫌なまつがシイカにそう告げる。
すると、彼女はえっ、と小さく漏らした後、大袈裟な位、両手を振った。
「そ、そんなっ!!わ、私は…」
「あら?その御顔。誰か気になる殿方がいらっしゃいますのね?隠しても駄目ですよ。」
「ち、違っ……!!」
まつの誘導尋問から逃れようと、シイカが顔を上げると、丁度、慶次と目がかち合う。
幾度か瞬きをする慶次に彼女の頬に色が付いて見えたのは、桜の色が反射しただけではなないかもしれない。
桜ひらひら
花のせいか、君のせいか
fin!
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ballad
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