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「うはー、降るねぇ。」
朝の天気とは丸で逆の曇天を、慶次は生徒玄関から眺めた。
「誰かの涙雨じゃないと良いけどなー。」
もしこれがそうだとしたらあまりにも悲惨だ。誰かが恋に破れたもすいではないようにと強く願わずにはいられない。
「……慶次さん?」
「ん?」
なんとなく祈るように、首から下げた御守りを強く握っていれば、ふと後ろから声を掛けられた。振り返ると、部活帰りであろうシイカが大荷物で立っている。
「あ、シイカちゃん。」
「どうかしたの?」
「いやー、傘忘れちゃってさー。」
不思議そうに首を傾げるシイカに慶次は肩を竦めた。
「朝は降ってなかっただろ?」
「でも予報では降るって言ってたわよ。」
「らしいね。」
鋭い指摘に苦笑いが浮かぶ。
テレビは見るが天気予報は気にしない慶次は痛い所を突かれた。
「止むまで待つの?」
「そうしたいんだけど、今日、風呂当番なんだよなぁ。」
「あら、大変。」
困った様に手を頬に添えたシイカに慶次は悪戯っぽく微笑みかる。
「そうなんだよ。あ、入れてくれるかい?」
「ふふ、馬鹿仰い。慶次さんが入ったら私も濡れちゃうじゃない。」
「そーだけどさぁ……」
相合い傘、何て言う概念は無いらしく、冗談だと思われ、躱されてしまった。
ばつが悪そうに頭を掻く慶次にシイカは小さく微笑み手にした傘を差し出す。
「だから貸してあげるわ、この傘。」
「え、い、いいのかいっ?!」
「ええ。私、折り畳みも持ってるから。」
驚く慶次に、彼女は鞄の中から畳まれた傘を取り出して続ける。
「早く帰らないと、寮の晩御飯に遅れちゃうんでしょ?」
「風呂当番だよ。……まあ、それもあるんだけどね。」
「ふふっ。相変わらずね。」
「あはは……ありがとな。」
「いいえ。ちゃんと返して頂戴よ。」
「あっ!待って!」
じゃあね、と傘を広げて一歩前に出た背中を呼び止めて、慶次は照れ臭そうに言った。
「あのさ、……途中まで、一緒に帰らない?」
一緒に帰りませんか?
立ち止まった君は微笑んだ
fin!
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ballad
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