※滅多に出てこない友達=オレvsキミ主人公

ドドドドドド………

「止まれっ!!止まれと言っているのが解らぬのかっ!!」
「はぁ、はぁ…もぅっ、勘弁して下さぁ〜〜〜い…っ!」

最近、昼休み、放課後は勿論、登下校の時まで
私、古井シイカは、吹奏楽部部長の毛利さんに追われています。

事の始まりは、2週間位前でして、屋上でフルートを一人で吹いていた(趣味で、です。)ところ、突然ドアが開き、

「…今の演奏は貴様か?」
「え…あ…はい…」
「あぁ、我が日輪よ…その御心遣いに感謝致す!!」
(…何だろう…いきなり太陽仰ぎ始めちゃった…)

少し怖くなったので、ゆっくりフルートをしまい、こっそり帰ろうとしたんだけど……

ガシッ!!

「?!!」
「逃がしはせぬぞ、日輪姫。」
「に、にちりんひめ?」

と、腕を掴まれて、そう呼ばれました。

まぁ、その場はなんとか切り抜けたものの、あの日以来、もう、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日[にちりんひめ]とか呼ばれ、彼に追われている訳です…。
正直あのオクr…ゲフンゲフン、細身の御体の何処にあの体力が在るのかが解らない…そして追われる理由も解らない…

そして冒頭、現在昼休み。
本日もバッチリ追われている訳です。

「はぁ…はぁ…も…だめぇ…」

40分近く逃げ続け、体力が尽きかけたその時、

キーンコーンカーンコーン

「む!予鈴か…。已むを得ん、日輪姫よ、放課後は貴様の教室で待っておれ!逃げるでないぞ!!」

神の救いか、チャイムが鳴って、毛利さんは踵を返し、自教室に戻っていった。

…ああ、真面目な人で良かった…。
これが同じクラスの伊達さんだったらこうはいかなかった筈…。

「って言ってる場合じゃない!!私も教室戻らなきゃ!!」

一日ついたのも束の間、教室に向かって私は再び走り始めた。
1日中走ってばっかり…!!本当にもう、勘弁してほしい…!!


──放課後。
続々と教室を後にするクラスメイトを横目に私は席を立てずにいた。

「………。」

帰りたい。
でも、勝手に帰ったら明日が怖い……。
倍速で追われるような気がする……。
だからと言って毛利さんを待っていたら、その後どうなるか解らない……。

どうしたらいい、の……

ガラッ!

「おひゃあっ?!!」

途方に暮れていると、突然教室の扉が滑り、毛利さんが現れた。ついうっかり変な声も出た。

「…何だ今の声は?」
「い、いえ…、御気になさらず…。」
「まぁ良い…貴様逃げなかったのか。」
「はい?」
「覚悟が決まったと言うことだな…。」

いやいや、何の覚悟ですか?
変な確信を得た毛利さんに首を傾げるも、彼は端整な顔に薄く笑みを浮かべ、ずかずか教室に入ってきた。
うわーー滅茶滅茶怖いんですけどー。

「…これで漸く完成する。」

何が?

もしや儀式?太陽の為の儀式ですか?
え?このノリはアレ?
もしかしなくても、私 生け贄?
捧げられちゃうノリですか?

毛利さんはだんだん私の元に近づいてくる。

なんかもう、動けなくなっちゃった…
だって毛利さんの眼力半端無いし…

だって、さっきからずっと瞬きしてないんだよ!!
目が乾くよ!!ドライアイだよ!!
現代病だよ!!かなり怖いよ!!
そんな私を気にするでもなく、毛利さんは両腕を広げて私に向き直った。
物凄く変態っぽい…っ!!!怖い…!!!

「さぁ!!日輪姫!!我が吹奏楽部に入部してもらうぞ!!!!」
「生け贄だけは……っ………え?」

バッと前方に腕を振り下ろした毛利さんの言葉に耳を疑った。
吹奏楽部?入部?

「生け贄じゃなくて?」
「?何を言っているのだ貴様は。」

聞けば怪訝な顔をする毛利さん。
そうだよね!普通生け贄とはありえないもんね!あまりの気迫に疑わなかったけど!
恥ずかしさに顔を隠しながら私は猛省した。顔から火が出そう!!恥ずか死ぬ!!
あ、そうだ。……恥ずかしいといえば。

「じゃあなんで[にちりんひめ]なんですか?」

ふと浮かんだ疑問をぶつけると、驚いたように毛利さんはカッと目を見開いた。

「!!貴様自分の身分も忘れたのかっ?!」
「え?身分?」
「良かろう、我が思い出させてくれるわ。あれは2週間程前、我は使えぬ駒共の事をザビー先生に相談に行ったのだ…」

頼んでない!など言う隙が果たしてあるだろうか。そうして着いていけない私など気にも止めず、毛利さんの回想が始まった。

──回想──

「…という訳で、大会が近いと言うのに、フルートのソロが全く上達しないのです。」
「オーゥ!!ソレは大変ですネー!!サンデー!!」
「どうにかならぬでしょうか…」
「……ダイジョブデース。アナタは今日、屋上でオ天道サマカラ来たプリンセス出会いまース。彼女フルートとってジョウズ言いマース。」
「日輪から…?」
「そうネー。彼女を仲間にスレバー、全て解決でース!!」
「おぉ…流石はザビー先生…。」

──回想終了──



「…と言う訳だ。」
「どういう訳ですか。」

何だその嘘丸出しの助言はーー!!
え?!それ信じたの?!信じちゃったの?!!毛利さん?!!
と言うかあの胡散臭さ120%教師の[愛の相談室]って行く人居たんだね!知らなかったよ!
信じ難い回想にパニックをお越しながらもなんとか誤解を解けないか必死で思考を巡らせる。何か……何か………そうだっ!

「あの、毛利さん」
「なんだ」
「私たち、1年生の時同じクラスでしたよね?2週間前に初めて会った訳じゃないじゃないですか…」

伺うようにそう言うと、毛利さんは目を凝らして私を見つめた。
ひぃ…!真顔の美形…!怖い…!!

「ふん、知らんな。」

しかし暫くして事も無げにそう言った毛利さん。
一蹴ですか!?流石に酷くない!?
私 そんな影薄かったかな?!!
がっかりを隠せない私が複雑な表情を浮かべると、毛利さんはふっとまとう空気を和らげた。

「日輪姫よ。」

声に気付いて毛利さんが私に顔を向ける。
わー、なんちゅう麗しい顔してんだこの人…いや、にちりんひめじゃないけど……。

「案ずるな、我は貴様を迎えに来たのだ。」
「え?」
「日輪の国を追われ居場所が無いのは不安であろう。」
「……はい?」

どうやら毛利さんは私の複雑な表情を国を追われて途方にくれていると読んだらしい。
何だそれ!!
また、胡散臭さ120%教師の出任せか?!!
何か電波っぽいですよ毛利さん!
呆気にとられていると、毛利さんはそれを肯定ととったらしく、どんどん話を進めていく。

「国に帰れずとも、姫は姫ではないか。」

にこりと微笑む毛利さん。
ああ、何てこと。顔が良いだけに不意討ちで、不本意にも、ときめいてしまった。勘違いしてるにしても、…その笑顔はずるいと思う…

「それに居場所が無いのなら…」

待って待って!!何此の展開?!何此の展開?!
じりっと距離を詰める毛利さんに心臓がどきどき脈打つのがわかる。
やだやだ、どうしよう…!!

「……居場所が無いのなら、我が部に入るが良かろう!!」
「ん?」
「貴様が入れば我の完璧な譜陣は漸く完成する!!貴様も居場所が得られ一石二鳥であろう?!」

そう揚々と語って毛利さんは懐から1枚の紙を取り出した。入部届と書いてある。
………あぁ…『漸く』って、儀式じゃなくて部活のメンバーね。へぇ〜、そっかぁー、ふぅ〜ん。

「さぁ!今すぐ此の入部届けに記名し、理事長に提出してくるがよい!!」

尚も高らかに上から目線の毛利さん。
ついさっきまでどきどきしていた私の純情を返せ!!

「…嫌です。」
「何っ?!」
「私 吹奏楽には入りません。」
「何故だ?!何故我が誘いを拒むっ?!」

逆に何故拒まれないと思った毛利元就!
別に入部しても良いんだけど、どきどきしたのが悔しいし、2週間追いかけ回された疲れもあるし、去年同じクラスだったのを覚えていないのもムカつくし…!!!

「CD-ROMが飛び交う部活なんて絶対に嫌!!!」



!!二つ返事などしてやるものか!!


fin
─ ─ ─ ─ ─
幾らか纏まった心算で居りますが……元就さん、危ないですね…
どうも、オクラさんは自己中、という偏見が御座いまして……、度を越して電波っぽいですね…。元就ファンの御嬢様方申し訳在りません…orz

拙作で御座いますが、楽しんで頂ければ、幸いに御座います。

読んで戴き、誠に有り難うございました!

20071118
20100113 加筆修正
20210712 加筆修正
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ballad

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