ザーッ…


窓を打つ激しい音に目が覚めた。
カーテンを開ければ、明るくなっている筈の外はまだ夜かの様に暗い。

「………日輪よ……何故……」

窓の外の曇天が如何にも憎らしく意図せずに言葉が漏れた。

*****

今日は朝から天の機嫌が悪い。
我が日輪は厚き雲を覆われ、ちら、とも顔を見せてはくれなかった。

「はぁ……何故、何故よりにもよって今日なのだ……」

放課後になっても未だに止まぬ長雨の空を教室から臨み、我は呟く。
先日の予報では週末に雨が降る、などと曖昧な事を言っておったが、何故よりにもよって……。

「………今日の部活動は、休むとするか。」

定期演奏会が近いが、一駒一駒がまだ完全なる演奏が出来ないのだから合わせる必要もなかろう。合わせる必要があれば、副を中心にやれば良い。
兎も角、我は体調不良の旨を副に伝え、生徒玄関に向かった。

廊下に出れば、弥生の月らしからぬ、ひやりとした肌寒い風が傍らを走る。今朝からの雨のせいもあるであろう、空気が重い。

「……此れだから、雨天は嫌なのだ…。」

小さく呟いたつもりだったが、誰一人居らぬ廊下には、思いの外、我の声が響いたのがまた気に入らなかった。
生徒玄関迄の道は何時も以上に長く感じ、漸く辿り着いた己が下駄箱に目を向けると、人の影が1つ、目に入る。

「…………ん?」

その形から、恐らく女子であろう影は、我が発した小さな音に気付き、此方に手を振る。

「あ、お疲れ様です。毛利さん。」
「………日輪姫……か。」


影の正体は、我が日輪より降り立ちし、日輪姫だった。
その様から、誰かを待っているようだ。

「日輪姫よ、此のような所で何をしておる?」
「あの、毛利さん。その日輪姫、止めてもらえませんかね…」
「今は我が質問しておる。其れに答えぬか。」
「あ、ごめんなさい。えっと、実は元親さんから今日は毛利さんの御誕生日だと聞いたので……」
「長曾我部から……?」

そう言えば貴奴とは幼き頃からの腐れ縁だったか。まだ其の様な事を覚えておるとは、女々しい奴め。

「して、其れが如何した?」
「はい。えっと、今日初めて聞いたので、お祝いとか用意してなくて……。代わりにもならないかと思うんですけど、これで。」

日輪姫はそう言うと、通学鞄から黒のケースを取り出した。

「……それは貴様のフルートではないか。」
「はい。」

日輪姫はそれを開き、中の眩い銀の筒を組み立て相槌を入れる。

「御誕生日なのに、毛利さんの大好きな御日様が今日は出てないから代わりに気分が明るくなるような曲を聞かせたいなぁって……すみません、そんな事しか思い付かない頭で……。」

はにかみながら言う日輪姫に我は目を見開いた。

「我の生誕を……祝うと申すのか……?」
「え?あ、はい。拙い腕ではありますが、喜んでもらえたらなって。」

馴れ合い等、愚の骨頂と考えている我の生誕を祝うなど、家族か幼き日の姫若子位だったと言うのに……可笑しな女子がいたものよ。

「よかろう、日輪姫。何が吹ける?」
「えと……楽譜があれば大概は……。」
「ほう。ならば音楽堂に行くか。貴様の腕前、我が捨て駒共に聞かせてやろうぞ。」
「え?!そ、それは……」
「我の生誕を祝うのであろう?我の指揮で演奏するのではないのか?」
「……まぁ…そうですけど…」
「ふふ……早うついて参れ。」
「あっ、待って下さいっ!!」

何ぞ僅かに弾む気持ちと連れ立って踵を返せば慌てて我が後を追う足音。
雨天もたまには悪くないと思えば、何時の間にやら、雨粒は消え、雲間から日が差していた。




ちょっとでも喜んでもらえたかな?

fin


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後書き

えー、3月14日は毛利さんの御誕生日だそうで………つい3時間程前(現在23:58)に知りました!←

故に突発的下書き無しの超短編の歯切れ悪作品が出来上がってしまいました……
14日中に上げたかったのに…………


拙作ですが、楽しんで頂ければ幸いで御座います!!

此処まで読んで下さり、有り難う御座いました20090314
20210712 加筆修正

*前次#


ballad

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