「佐助、クリスマス空いてるか?」
「えっ?!…まぁ、旦那ん家でクリスマスディナーを振る舞う位だけど」
「よし。じゃあ午前中ボクん家に来い。」
「え!!?」
「いいな、3時迄には来いよ。時間は厳守だ。」
「い、いいの?!俺様行っても!!?」
「うん。待ってるよ。」

シイカはふわりと笑って踵を返した。
これはもしかして、もしかするかもしれない!

*****

大将や旦那達に夕飯までには戻ると告げて、足取り軽く寮を出た。イルミネーションに彩られた街はクリスマス一色で、そこを抜けた閑静な住宅街にもその空気は漂っている。

柄にも無く胸を躍らせシイカの家のインターホンを鳴らし出て来た彼女のエプロン姿に驚きつつ、家の中に通されたのだが、これ如何に。

「………」
「で、何から始めるんだっ?」

場所は台所。
質素なエプロンを掛け、ワクワクと言わんばかりのシイカは料理道具や食材が所狭しと並べられた机に身を乗り出した。

おかしい。
クリスマスに家に来いって俺様は命じられて今度こそって意気込んだって言うのにこの始末。それなりに御洒落して恥ずかしくない様な格好してきたのは久方振りの幼馴染み宅に上がるためだけではない事くらい察して欲しかった。

「……ねぇ、これって新手の嫌がらせ?」
「何を言う!!ボクは本気なんだぞ!!御嬢様にボクの手料理を味わって頂きたいんだ!!」
「うわぁ。悪意が無い分更に残酷だ。」
「失礼だな!ボクが何をしたって言うんだ!!」
「あー、もういいよ。分かったから。で、俺様に何をしろって?」
「料理を教えてくれ!取り敢えず茹卵だ!茹卵の作り方からだ!」
「…じゃあ、まず手を洗おうか…。」

これ以上文句を垂れてもシイカは気付くまいと、俺様は肩を落とし当然の様に用意されたもう1つのエプロンに腕を通す。

斯くして、淡い期待を描いた俺様のクリスマスはシイカの仕える御嬢様の為に御料理教室と化したのだった。


予想はしてたけどね…!


fin!
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ballad

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