暦の上では春と言えど、まだまだ寒さが厳しい2月中頃。
放課後の教室で日直の仕事である黒板の掃除に精を出していると、不意に肩を叩かれる。

「日誌終わったぞ。」

振り返ると同じく日直のシイカが日誌を片手に佇んでいた。

「御疲れ〜。」

黒板消しをクリーナーに掛け、粉受けに戻して俺様は両手を払う。

「ストーブも消したし、日誌担任に出して帰ろうか。」
「うん。所で佐助」
「ん?」

シイカから日誌を受け取り、前を行くと、声を掛けられて足を止める。

「折り入って頼みがある。」
「何よ急に。改まっちゃって。」

からかう様に口角を上げると、シイカは俯いた。
夕陽を背にしている為、表情までは見えないが、何と無く何時も寄り大人しく見える。

これはもしかしなくてもアレかもしれない。

「あの…バレンタイン…、」
「…チョコケーキの作り方教えろとか?」
「おお…!よく分かったな。流石幼馴染み。」

懐疑の眼差しを向けるとシイカは驚いたのか目を瞬いた。
畜生、ちょこーっと期待したのに。

「俺様もう騙されないからね。」
「何の事だよ。フォンダンショコラの作り方を教えろ。」

フォンダンショコラ何て手の込んだものちょっと前まで茹卵も作れなかった奴が言う事じゃなくない?
相当気合い入ってると見て間違いないだろうが、問題はそこじゃない。

「………誰にあげるのさ。場合によっちゃ教えらんないけど?」
「御嬢様。」
「ですよね〜」

予想通りの反応に俺様は自嘲に似た笑みを零し肩を落とした。
恋愛感情云々でなくていいから、御世話になってる御礼って形で俺様っつー選択肢は無い訳?まぁ、渡す本人に作り方聞くなんてありえないんだけどさっ!

「……つーか、シイカさ、好きな人とか居ないの?」
「だから御嬢様…」
「男だよ。男」
「……えー……………一億二千八百万人譲って佐助。」
「寄りに寄って2005年の日本人口でほぼ最下位。」
「いいじゃん。2005年の世界人口、六十四億六千四百万人から見れば上の方なんだから。」
「そう言う門題じゃないから。」

こんなに尽くしてるのに俺様の順位がそんなに低いなんて心外だ!いやもう侵害だ!

「まぁまぁ。製作過程の失敗作はあげるからさ。」
「……成功したのもせめて一個くらい頂戴よ。」
「んー……まぁいいか。それで。じゃあ、教えてくれるんだな?」
「はいはい。」

だからと言って、そんな事で臍を曲げる程俺様は純朴ではないので、確信に似たシイカの要望には首を横になんて振れない。肩を落としつつも是の返事しちゃうのだ。


BitterValentine
何だ彼だ言って、俺様、幼馴染みには甘いんだ。


fin!
*前次#


ballad

+以下広告+