「あちゃー、降ってきたー。」

担任のパシリで資料室に教材を置きに行った帰り窓の外を見れば土砂降り。
こりゃ参った。とっとと支度して帰ろう。
早足で教室に戻ると、窓際に見慣れた影が見えた。

「シイカ?」

窓枠に肘を付いて雨を眺めていたのは幼馴染みのシイカ。
声を掛けると、此方に顔を向けた。

「佐助か、」
「帰んないの?」
「ああ、傘なくってな。」
「え?今朝持ってたじゃん。」
「御嬢様が御忘れになってね。貸して差し上げた。」
「一緒に入ってきゃ良いのに。」
「馬鹿言え。1つの傘に2人も入ったら、御嬢様が濡れてしまうじゃないか。」
「まぁ…、そーだけど……。」

帰る支度をしながら言えば、じとっとした目を此方に向けられる。別に悪意があった訳じゃないから、へらっと笑う。

「じゃあシイカはどうやって帰んの?」
「小雨になるまで待って走る。予報じゃ夕方から弱くなるって言ってたし。」
「ふーん……あ、そーいや旦那も持ってなかったな。」

俺様は鞄を担いで、再度窓の外に目を遣ったシイカの横の桟に寄り掛かり呟いた。すると、悪戯っぽい笑みを浮かべたシイカが此方に目を向ける。

「何やってんだよ、オカーサン。しっかりしなよ。」
「違うから。俺様旦那のオカーサンじゃないからね。」

苦笑いを返しても尚、シイカはにやにやしている。
俺様をからかおうなんていい度胸じゃないの。なんて思っても口にせず、頭の後ろで手を組んで天井を眺める。

「まあ、旦那なら走って帰れそーだから良いけどねー。」
「酷いぞ、それ。確かに馬鹿は風邪引かないけどさ。」
「そっちの方が酷くない?」

肩を竦めればシイカは小さく笑った。

「佐助は帰んないのか?」
「俺様?帰るよ。」

問われた事に首を傾げて返すと、シイカは至って真面目な口調で続きを紡ぐ。

「だったらさっさと帰ってやんなよ。風邪も引かない息子が御腹空かせて待ってるんじゃない?」
「だから俺様、旦那のオカーサンじゃないってば。」
「でも弁当とか作ってやってるじゃん。」
「弁当作ればオカーサンな訳?」
「そう言う訳じゃないけど、佐助ってなんか世話焼きオーラが滲んでんだよね。」
「何それ…」

確かに世話焼きだとは良く言われるけど、そんなオーラを出してるつもりはないんだけど。つーか、オカーサンって俺様、男なのに…。
そんな心中をシイカが察する筈もなく、弁当以外にも縫い物だの何だのぶつぶつ言った後、腕を組んで頷いて更に言葉を続けた。

「うん。立派なオカーサンだよ。みんなのオカーサン。ゴッドマザー猿飛っ!!」
「何かの洗礼名みたいに呼ばないでよ……」

がっくりと肩を下げ、半目でシイカを見れば肩を竦めて顔を綻ばせていた。

「ははっ!ごめん、ごめん。それより、ほら、オカーサン!!可愛い息子が待ってるよ!!さっさと帰ってやんな。」
「あー、もー分かったよ。」

急かす様に俺様の二の腕を軽く叩くシイカに頭を掻く。
どうしたってオカーサンを否定するのは難しいらしい。それならそれで逆手に取ってやろうじゃないか。

「だけどさ、シイカ。」
「うん?」

頭に疑問符浮かべるシイカにちょっと恥ずかしいけど微笑みかける。

「オカーサンはアンタも心配なんだけど?ほら!帰りますよ!」
「……何それ。」

悪ノリすれば呆れ半分な笑顔を浮かべてシイカは頷いた。



1つの傘に2人で入ると幼き日々を思い出す、なんてね!


fin!
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ballad

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