「…ククク…先生、24日か25日は空いていますか?」
「たった今一杯になりました。」

クリスマスが間近に迫った放課後。私の机の前に現れたのは、我が校切っての変人、保健医の明智光秀その人だった。

過剰的自意識

ある事件がきっかけで嫌な方向に好かれてしまった私は、あれ以来、良く分からない好意(?)を向けられているらしい(猿飛談)
明智先生は焦点が合っているか定かではない目を細め、教員とは思い難い長髪から覗かせた。

「それは私のために空けておいてくれた、と言う事ですね?そうですね?」
「違います。断じて違います。自意識過剰も大概にして下さい、頭かち割りますよ。」
「おお、怖い怖い。それでは、24日は私の家にいらして下さいね。」
「人の話聞いてました?!行かないっつーの!!何で勝手に行くことになってるんですかっ!?」

聞いている様な態度を取っておきながら、この男、全く人の話を聞いてない。結局自分の用件だけ言い去ろうとする明智先生に怒声を浴びせる。

「そんなに照れなくても…」
「照れてねぇ!!」
「まぁまぁ…それより、私の家に来れないとなると、何か御予定があるのですか?」
「ゔ…」

明智先生の素朴な問いに私は口籠る。
痛い所を突かれた。絶賛彼氏募集中の私にはクリスマスを一緒に過ごす相手がいなければ予定もない。拒否する事で精一杯だったから、口から出任せの嘘の予定だって考えてない。

「どうしました?御予定あるんでしょう…?」
「え、ええ……まぁ……。」

更に追い撃ちを掛ける様に薄く笑った明智先生に頬の筋肉が引き攣った。
このまま言い訳出来なかったら明智先生宅に御呼ばれして一生太陽を拝めなくなるかもしれない。土竜に嫁がされそうになった親指姫の気持ちが今なら痛い程分かる。分かるから燕でも雀でも何でも良いから助けて下さい!!!
しかし、願った所で南の国の王子様の遣いが来る筈も無いのが現実。
妙な空気が流れた。

「宜しければ教えて頂けませんか?」
「はあ…」

そんな事聞くんじゃねーよ!と思ったが、秘密だって言ったら何か呪われそうだ。
思い出せ私!去年、一昨年、何をしてクリスマスを過ごしたんだ!思い出せ!

「えー……っと、カラオケに……友達と…」

思い出したは良いが、友達は彼氏と過ごすとか言って誰も相手にしてくれなかったから独りでカラオケに行った記憶しかなかったという虚しさ。
苦し紛れに友達とを取って付けて、恐る恐る明智先生の顔色を伺うと、残念そうに目を細めていた。

「おや…残念ですが、是非楽しんで来て下さいね。それから背後には御気を付けて。」
「……はは。(うわ、ストーキングして来るつもりだこの人。)」

愛想笑いを浮かべながら、クリスマス当日は絶対外出しないと誓った12月のある夕暮れ。




この分だと二年参りと初詣も危うい気がする。


fin!
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ballad

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