朝から男子も女子もソワソワしているとある2月の朝。
学校に到着した私は足早に理事長室に向かう。

「御早う御座いまーす。」
「あら御早う。」
「早いではないか。」
「オハヨーシイカー。」

重厚な扉を開けると信長理事長と理事長秘書の濃姐さん、それから理事長の諜報部員で1年の蘭丸が快い(?)返事で迎えてくれた。

脅迫的要望

「シイカ先生、ね。蘭丸。」
「いいじゃん別にー。」
「良くはないと思うけど…。あ、理事長、濃姐さん。バレンタインでーす。」

苦笑いを浮かべつつ本題をと鞄から2つ包みを取り出して両者の前に差し出す。

「まあ、有り難う。」
「御苦労、」

柔らかく笑った濃姐さんと対照的に相変わらずヘの字口の理事長に上から労われて、私は何とも言えない笑いを浮かべた。

「ねー、蘭丸にはー?」

袖を引っ張る違和感に目を遣ると、不服そうな蘭丸に催促されているではないか。

「教師が生徒にってのはあれだなぁ……。」
「えーっ!!蘭丸もチョコ欲しいー!!」
「うーん、…じゃあ今度金平糖持ってきたげる。」
「ホント?!やったー♪」
「あらあら、蘭丸くんったら。」
「感謝するぞ。新任生物教師。」
「名前覚えて下さいよ。」

尚も駄々を捏る蘭丸に言うと、パッと顔を輝かせた。
これって餌付けかな…?まあ、理事長達は何も言ってこないからいいか。
何て考えていたら不意に後方のドアが開く。

「おやおや、愉しそうですね。私も交ぜて下さい。」
「理事長、濃姐さん、私はこれで。失礼しました〜。」

がしっ。

「無視ですか?酷い事をしますね。」

現れたのは明智先生。
入れ違いに帰ろうとした私は腕をがっしり掴んで行動を阻止された。

「何ですか明智先生。あたし今急いでるんですけども。」
「どうしてですか?貴女の本命は今目の前に居るじゃないですか。」
「すいませーん。誰か腕利きの脳外科医を呼んで下さーい。この人脳に異常がありまーす。」
「フフフ…相変わらず照れ屋さんですね。」
「もうやだ…。疲れた……。」
「癒してあげましょうか?その代わりに私の乾きも」
「結構です。」
「……フフフ、そんなに照れなくても。」

相変わらず何処から来るのか分からない自信を携え、一々癪に障る言い回しの明智先生に肩を落とすが、やっぱり癪に障る言い回しが返ってきた。これじゃあ堂々巡りじゃないか。

「んだ、コイツ。腹立つなぁ。明智先生、一体何がしたいんですか。」
「貴女が食べたいんです。」

問えばまた不可解な事を言い出した。
もう駄目だ。私の手には負えない。

「理事長、この虚け者を自慢のモデルガンで撃ち抜いて下さい。」
「冗談ですよ。貴女を食べる前には死ねません。」
「濃姐さん、コイツの脳天にその簪を突き立てて下さい。」
「冗談ですってば、冗談。あぁ、帰蝶、構えないで下さい。」

珍しく引き攣った笑みの明智先生がたじたじと後退りするのを見て、もう良いだろうと私は話を切り出す。

「で、結局何なんですか?」
「………チョコレートが、欲しいんです。」

少しばつが悪そうに小さく呟いた明智先生の言葉に私は目を瞬いた。

「え?チョコ?なんだ。そんな事ですか。」
「……え、」

意外そうな明智先生を尻目に鞄から濃姐さん達と同じ包みを取り出して、その前に突き出した。

「あたし、教師陣皆に配ってるんですよ。明智先生にも差し上げます。」
「あ、……あぁ、良いのですか。」
「義理ですからね。」
「そんなに照れなくても…」
「蘭丸、確か弓道部だよね。今度練習の時、この人 的にしたら?」
「ああ……そんな………」



念は押したけど大丈夫かな…?


fin!
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ballad

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