「刮目すべしっ!!朝の服装検査だっ!!」
「朝っぱらから元気だなぁ…浅井先輩…」


風紀委員の日常・前編


おはようございます、BASARA学園1年3組風紀委員の古井シイカです。
ぶっちゃけた話、別に風紀になりたかった訳じゃなく、係決めのじゃんけんに負けただけなのですが…

「おおっ!!古井!!今日も定刻通りの登校だな!!流石は我が理の生徒だっ!!」
「………おはよう……シイカ……」
「おはようございます…」

某超人を思い浮かべる配色のヘルメットと警棒が初期装備の委員長浅井先輩と、影を背負った学園1の美人で理事長の妹な副委員長市先輩にどういう訳か気に入られてしまって、この朝の服装検査をサボるにもサボれなくなっています。
いや、サボろうと思えばサボれるんだけど、こうも気に入ってもらえると頑張っちゃおうって気になってしまうわけで…お人好しなんです、ぼくは。

このBASARA学園じゃ、風紀委員なんてあって無き様な存在で、こうしてしっかり活動しているのは浅井先輩と市先輩とぼくだけ。
あ、でもたまに2年の五本槍先輩(五つ子)たちが手伝いに来ることもあるっけ。

教室に荷物を置いて、"風紀"の腕章を付け、ぼくは再び浅井先輩が叫ぶ校門に向かった。

「そこっ!!スカート丈を伸ばせっ!!そこっ!!学ランの前を閉めろっ!!」

ぞろぞろと登校してくる生徒達に早速チェックを入れる浅井先輩。
市先輩はと言うとそんな浅井先輩の隣で、

「……無駄なアクセサリーの着用は禁止……だよ?………市の言う事……聞いて………ね?」

怖っ!!!
すごい近くに行ってボソボソと囁く様に注意する。慌ててピアスやらブレスやらを外す生徒。……末代まで呪われそうな気がするもんね…

「何をしている!!古井!!貴様も仕事に取り掛からんかっ!!」
「あ!!はいっ!!」

浅井先輩の声で我に返り、名表を挟んだバインダーを手に、ぼくは市先輩の隣に行った。
約半分の生徒が登校し終わり、浅井先輩は手にした警棒を握り直した。

「……そろそろだ。奴等が来る!!」

時刻は8:05。
8:30迄に登校すれば遅刻にならない我が学園。最大の登校ラッシュは8:05〜8:20の15分間。
この15分を浅井先輩は"悪の15分"と呼ぶ。

「市!!古井!!気を引き締めて掛かれっ!!」
「……はい」
「はぁい…」
「刮目すべし!!朝の服装検査だっ!!」

高らかに叫ぶと手にした警棒を振り上げる。
すると前方に3つ、人影が現れた。

「まぁ、浅井殿が朝から正義に燃えておりまする。さ、犬千代様。参りましょう。」
「う〜 まつ…某あいつ苦手」
「利いっつも怒られてんだもんな。」
「お前もだろっ慶次!」

前田先輩ズだ。
料理上手のまつ先輩は兎も角、生徒会と仲悪い慶次先輩は学ラン着てないし、Yシャツ白くないし柄入りだし、大食いの名高い利家先輩に至ってはYシャツは着てないし学ランの袖が千切れている…

「───ム!前田ッ!貴様何度言ったらわかるのだ!制服を着ろ!!」
「断る!」

浅井先輩が警棒で利家先輩を指せばすかさず返答する。
まつ先輩はまつ先輩で「犬千代様ったら、なんと堂々たる答えっぷり…」なんて陶酔してるし…
ぶっちゃけ まつ先輩が言えば直ると思うんだよね…。

「オハヨー、市ちゃん、シイカっ!」
「………」

肩に仔猿を乗っけた慶次先輩がぼくたちの方に歩いてきた。
市先輩は俯いて何も言わないので、とりあえずぼくは注意を喚起する。

「おはようございます、慶次先輩。学ラン着て登校して下さい。」
「固いコト言うなって。市ちゃんも、朝から暗いよ?どーしたの」
「市……いつもと同じよ…。」

確かにいつもと変わらない。いつもと変わらず暗い。
しかし慶次先輩にはそんなことは通用せず、顎に手を宛てて深刻そうに呟いた。

「美女の浮かない顔……これはもうアレしかないだろ。な?そう思うだろ?シイカ。」
「アレって何ですか。」

馴れ馴れしく肩を叩く慶次先輩。なんだよ、アレって。聞けば口角を上げて利家先輩と未だ言い争う浅井先輩と目を合わせる。

「恋煩い。にくいネ!この色男!」

ぐっ、と親指を立てれば、肩の仔猿も真似をした。

……あ、可愛い…
和むぼくとは反対に浅井先輩は顔を真っ赤にして叫ぶ。

「だっ、黙れっ!意味不明なことをほざくなっ!!」
「市ちゃんのことどう思ってるのさ〜〜」

反論する浅井先輩を丸無視して慶次先輩は人差し指でぐりぐりと円を描くように浅井先輩を指差す。

「黙れと言っている!無駄口を叩くなっ!!」

……このツンデレめ。
素直に好きって言っちゃえよ。
溜め息をついて顔を上げれば再び前方から何かがやって来る。

ブロロロロ……

「?あ、あれは…」

ブォンッ!!

「おっと邪魔だぜ。田舎モンがよー」

全身校則違反!!長曾我部元親!!
改造原チャに釘バット。服装はもはや制服と言えない。原チャをとばして、慶次先輩といざこざやってる浅井先輩の背後を悠々と通り去った。
じゃんけんで負けただけとはいえ、ぼくも風紀。いくらなんでも酷すぎる!!この人だけは許せない!!

「停まってくださいっ!!長曾我部先輩っ!!」
「あー?なに言ってか聞こえねーぞー。」

大声で叫ぶも聞こえないふりして通りすぎんとする。

「っ…!!停まりなさ」

ドン!

「!?」

再度叫ぼうとすれば後方から来た原チャリに長曾我部先輩は激突された。

「うおわぁぁぁぁぁっ!!?」

ガシャーーン!!

そのまま原チャごと前のめりに倒れた長曾我部先輩。

「…!…長政さま……」
「ム!?何事だっ?!」

長曾我部先輩の悲鳴と大きな音にやっと気付いた浅井先輩と市先輩が前田先輩ズとの話を片してこっちに駆け寄ってきた。

「えっと……」

どうして良いか分からないぼくはおろおろしながら土煙が掃けるのを待つ。

「すまーん。長曾我部ー。生きてっかー?」
「てんめぇ…!」

見えたのは原チャに跨がる転校生の先輩と頭を押さえそれを睨み付ける長曾我部先輩。

「わざとやりやがったな!?」
「いや、お市先輩に見取れてた。」
「嘘吐け、この野郎!!今日は許さねぇぞっ!!」
「ははっ!怒った〜!じゃ、風紀の皆様、御仕事頑張って下さーい!」
「待ちやがれッ!!」

転校生先輩がこちらに手を振って駐輪場へ原チャを飛ばし、長曾我部先輩も、その後を原チャを牽きながらダッシュで追い掛けて行ってしまった。

キーンコーンカーンコーン…

「…あ、予鈴。」

嵐の様な出来事に唖然としていると、予鈴が響く。

「ム!!HRが始まる前に戻るぞ!!」
「はーい。」
「…はい」

遅刻は悪である!と豪語する浅井先輩の号令と共に校門を閉めて、本日朝の風紀委員のお仕事はこれにて終了。
時間厳守出来なかった生徒がまだ結構向こう側にいるけど、御免ね、ぼくに出来る事はないんだ…。罪悪感に駆られつつ、浅井先輩達の後についてぼくは校舎へ入った。

───昼休み

ガラッ!!!

「古井シイカはいるかっ!?」
「あ、はいっ!!」

お弁当を食べようとすると、突然教室の扉が開いた。

「古井!!作戦会議だっ!!弁当箱を持ってついて来いっ!!」
「えっ?!作戦会議って何ですかっ!!」
「いいから来いっ!!急げっ!!」
「は、はいっ!!」

浅井先輩の一喝に広げかけたお弁当を畳んで、教室を出る。

「………ごめんね……シイカ………市がしっかりしてないから……長政さま怒ってるの………」
「い、市先輩?!(居たんだ…)そんなっ、市先輩のせいじゃありませんよ!!」

前方をずんずん歩く浅井先輩に気をとられていたせいで、市先輩の存在に気付かなかった…
……にしても、今日は何時にも増して凹んでるなぁ……
浅井先輩について行った先はプレハブの一室。扉には【"学園の悪"対策本部。関係者以外の立ち入りを禁ず。】と勢いだけの筆跡で記してある。
浅井先輩は荒々しく扉を開けるとぼくたちに入るよう促した。

部屋は几帳面に整頓されていて、中央に机が4つ合わせられてある。
ぼくは促されるまま中に入り、そこつくように言われた。

「……どうしたんですか?」
「実はな、理事長が実績の無い部活は廃部にしろと、その判断を我々風紀委員に任せると仰ったのだ。」

市先輩お手製の弁当を頬張りつつ、重々しく答える。
ちなみに今日のメニューは白米に煮干しと干し海老だ。相変わらず素材そのままですね。

「そんなっ!?皆さん頑張ってるのに実績だけで決めるなんて、浅井先輩の大好きな“正義”に反するじゃないですかっ!!」
「分かっているっ!!だが理事長命令は絶対なのだっ!!」
「そんなの変だっ!!先輩らしくないっ!!」
「……やめて……シイカ……長政さまは悪くないの………にいさまを止められない市が………」
「!!!市!!お前のせいでは無いと言っているだろう!!メソメソするなっ!!」

ぼくと浅井先輩の口論を市先輩が止めに入るが、その文句が浅井先輩の逆鱗に振れたのか、彼はぼくとの言い争いもなおざりに、市先輩を怒鳴った。
それによって、一時静寂が戻る。

「………で、どうするんですか?」

沈黙を破ったのはぼくだ。

「……」
「まさか本当に理事長の言いなりになるんですか?!」
「違う!!断じてそれはない!!ただ、どうすればいいものか…」

頭を抱える浅井先輩。

「……じゃあ、実績のある部だけを調べたらどうですか?理事長はどれ程部活があるか知らない筈ですし…」

「……だめ……それはだめなの………にいさまは知らなくても………義姉さまは知ってるから……」
「あ〜、そっか……濃さんがいますね〜……うーん…」

ぼくが頭を抱えて考えると、昼休み終了の予鈴が鳴った。

「あ…」
「兎に角、案が出ないうちは理事長に従うしかあるまい。今日は野球部の調査をする。授業が終わったら生徒玄関に来い。いいな?」
「そうですね…。分かりました。では、放課後。」
「………じゃあね……シイカ……」
「失礼します。」

ぼくは教室に戻るべく対策本部をあとにした。果たして放課後どうなることやら……
あ、お弁当 食べ損ねた……




はてさてこれからどうなるんだか……


to be continued
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ballad

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