私は独り暮らしの一般人。
でも、私の部屋は独り暮らしの一般人が住むには適さない。
私の部屋は基本洋風だけど、一カ所だけ不自然な襖がある。
部屋を借りたばかりの時、何を思ったか、その襖に貼ってあったこれまた不自然なシールを剥がしてしまった。
それが事の始まりだと知らずに………、
「……うう…重い……」
「ふん。漸く目覚めおったか。さっさと我に茶菓子でも持ってこい。」
「……日曜日くらいゆっくりしたいんですけど…」
武将と一緒!〜日曜日〜
襖はどういう訳か戦国時代に繋がっていたらしく、一週間日替わりで戦国武将が私の部屋に現れる。
「何をしている、早く茶を持ってこぬか。我を待たせる気か!」
「はいはい……もう、疲れるなあ…。」
日曜日は安芸の知将、毛利元就。
どこまでも自分中心で人使いが荒い、オクラみたいな兜を被っている人。
何時も寝てる私のお腹の上に直立して、ゴミでも見る様な目で見下した状態で遭遇するのだが、いい加減に止めていただきたい。
今日も今日とて、来て早々お茶と茶菓子を要求され、私は顎で使われている。
「粗茶ですが。」
「……本当に粗末な茶よ。」
「………。」
出したお茶を一口飲んで、元就さんは鼻で笑った。
何なんだこの人!いや、今に始まった事じゃないけど!腹立つなぁ…でも口じゃ勝てないしなぁ……。
ぶつけようのない思いに歯を食い縛りながら、すいませんねぇ、と愛想笑いを浮かべる。元就さんはそんな私を一瞥し、無言のまま、茶菓子を摘み、御茶を飲み干した。
何だ彼だ文句を付けるくせに、この人、一切残したりしないんだよね。
「おい、」
「はい?」
「今日の菓子を9つばかり包め。なかなか美味であった。」
「……はあ。それはどうも…。」
ブ●ボンのバ●ムロールなんだけど……元就さん、甘い物好きなのかな。
「直ぐに出ますから、御帰りの際に持ってきますね。」
「よかろう。して、貴様。今日は暇であろうな。」
突然、そう切り出した元就さんに思わず驚いた。だって、元就さん、人の予定とか気にしなさそうなのに……何だろう少し嫌な予感がする。
「いえ、お昼から仕事ですが……。」
「ふむ、午の刻までか……」
嫌な予感はしたものの、一応問われた事に答えると、元就さんは口許に手を当てて何事か考え出した。
黙ってると綺麗な顔してるのに勿体無い人だなぁ…。
「よかろう。午の刻までの間、貴様に有り難い御教えを、我が直々に説いてくれるわ。」
「……え?」
暫くして元就さんは偉く得意気に私を見下してそう言った。
有り難い御教えって……三本の矢とか?
あ、でも、御教えって事は誰かの受け売りって事だよね?
疑問符を浮かべていると、元就さんは私を鼻で笑った。
「貴様如きの思考では我が何者が想像も付くまい。」
「え、毛利元就さんじゃないんですか?」
「無論、我は安芸を守りし毛利元就に違いはない。だが、今言うておるのは、もう一つの我が定めの話である。」
「もう一つ?」
聞けば突然立ち上がった元就さん。そして右手を私の方に突き出して高らかに名乗り上げる。
「我が名はサンデー毛利!跪くがよい!!」
「さ、サンデーっ?!!」
いきなりどうしたって言うんだ元就さん!!?
バ●ムロールに何か入ってましたか元就さん!!?
予想だにしない展開に目を白黒させていると、元就さんはそれを勘違いしたらしく、満足そうにしている。
「貴様でもザビー教は知っているであろう?我はその“ぶれぇん”ぞ。」
ザビー教…?
ああ、確か安土桃山辺りで布教に失敗した酷い勘違い宗教だって何かで聞いた事あるかも………え?元就さん、もしかして信者なんですか…?
そんな私の疑問など露知らず、元就さんは勝手に話を進めだした。
「今日は貴様にザビー様が御教えくださった“愛”について説法してくれる。有り難く思い、心して聴くがよい!」
「え!?えぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
「案ずるな。我が計画にて説法を行えば、貴様を仕事に遅刻はさせまい。」
「い、いえ、そうじゃなくて…!!」
元就さんの口から愛なんて言葉が出た事が驚きだったり、現代日本にとって過去の“異物”であるザビー教なんか教わったって迷惑の、えぇぇぇぇぇぇぇっ!!?だったんだけど、元就さんには1つも伝わってないらしく、彼はどんどん話を進めていく。
「まずはザビー教の始祖たるザビー様とはどの様な御方であられるか。口で申すよりその神々しき御姿を見れば分かる事。と、言う訳で御呼びしてある。」
「はっ?!!」
「そろそろ御到着の頃合、」
ドカァァァァァァンンン!!!!
「!!」
元就さんがそう言うと同時に、寝室から爆発音。慌てて音源へ向かえば、室内はスモークを焚いた様に真っ白で、奥に人影が2つ程見えた。
「ザビー様!!」
「えっ!?」
後からやってきた元就さんは人影を見つけると、素早く部屋の窓を開け、謎のスモークを取り払う。
すると其処に現れたのは白髪半裸の御爺さんと河童頭で碧眼の大男。
「オゥ!サンデー!ココが、みらーいデースカー!?」
「ほぉう!見た事ばないもんばっかじゃのう!」
「ザビー様!チェスト殿!如何にも此処が未来に御座います。」
「ナンダカー田舎ヲ思イ出スネー!オゥ!がーる!アナタ、愛ミナギッテマスカー!?」
謎の片言で謎の問いを掛けられたら所で私は何も答える事が出来なかった。
私の目に映っているのは、昨日折角、二度も小太郎さんが直してくれたのに幾度目かの崩壊を迎えた……
「襖あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
Sunday!!
散々ですよ、日曜日!
fin!