十三話
「……うう…私としたことが、何て恥知らずを……。」
赤沢もみじは後悔していた。
時刻はもう夜半。
裁縫、料理、掃除に洗濯を前田慶次の邪魔に合いつつ粗方教わった修行初日の夜である。
宛てられたら部屋で寝支度を整えながら、もみじは只管昼間の発言を悔いていた。
「幸村様を愚弄するか!?幸村様は武士の中の武士!私なぞには勿体の無い程御立派で素晴らし…っ!!」
「ああっ!何という恥知らず…っ!!!」
無意識に思い出した台詞に、もみじは己で支度した布団に上体を投げる。
土下座のような形で羞恥に震える彼女の脳裏に続いて蘇ってきたのはその後の前田慶次の言動だった。
「虎若子の兄さんかぁ!いいねぇ!御似合いだよ!」
「その怒り方だともみじちゃん、兄さんにかなり惚れてるね!」
「何処が好きなの?やっぱ強いとことか?」
「2人は何時から恋仲なんだい?」
「先に惚れたのはどっち?」
止むことを知らない慶次の質問は思い出しただけでも恥ずかしい。色恋沙汰に不慣れなもみじにしてみれば、軽い拷問などよりも精神がすり減ったことだろう。
(まつ様が仲裁してくださったから事なきを得たものの、前田慶次め…なんと…)
真っ赤になりながらももみじの眉間には皺が寄った。すると同時に再び脳裏に楽しげに質問してくる前田慶次が浮かんだではないか。
「しつこい……っ!!」
記憶の中の慶次を振り払わんとに吐き出しながら、もみじが布団に叩きつけた拳は、ばふっと柔らかい音をしか立てなかった。
手応えの無さにどっと疲れがやってきたのか、もみじはずるずるとだらしなく手足を伸ばして布団に全身を投げ出す。
敷き布団に顔を埋めて、俯せになりながらぽつりとこんな言葉が漏れた。
「……幸村様は…私をどう思われてるのかしら…」
何の気なしに呟いた言葉にはっとしたもみじは顔を再び赤くして、羞恥からくる行き場のない力量を布団の上を転がり回って発散する。
そうして加賀の夜は更けていくのであった。
>>続く