謎の穴に落下し、デンジさんに助けられてそのまま医者に連れて行かれた。
診断は軽い捻挫で、日常生活に支障はないし、重い物を持ったり無理な動きをしたりしなければ、治るのに時間は掛からないらしい。
絶対安静とか言われなくて良かった…。不便だけど、料理とか掃除とか出来るからね。

そんな訳で只今医者の帰り道。
付き添いで来てくれたデンジさんに謎の穴に落下した経緯を聞かれたので順を追って話をしている。

「それで、心配になって見に行ったんですけど……あ、」

ふと、サンドパンとガブリアスが草臥れていた光景が蘇った。
そうだ、ナギサタワーの地下らしい場所のエレベーター壊しちゃったんだっけ。謝らないと。

「どうかした?」
「あ、あの、デンジさん。謝らなきゃならない事があるんですが、」
「何?」
「穴を辿って行ったら、配線が沢山張られている円形の地下室に辿り着いていたんです。」
「配線か………タワーの下かな……、待って、もしかして掘り終わった?」

少し間を置いて信じられないと言わんばかりの語勢でデンジさんは言った。
実際タワーの下に行った事がないから、確信は持てないけれど、私はゆっくり頷きながら言葉を続ける。

「間違ってなければ…。それでですね、あの子達、トンネル掘るのに夢中になってて、多分ガブリアスだと思うんですが、そこのエレベーターを壊して地下室に穴開けちゃったんです。」
「エレベーター?」
「ご、ごめんなさい!!」

首を傾げた彼に私は先手必勝とばっと頭を下げた。

ん?今は直ぐごめんなさいが出たのにさっきは何で有り難うだったんだろう?……まあ、今はいいか。

デンジさんの反応を待ってみたものの、中々返ってこないので、そろそろと頭を上げてみる。
彼は少し難しい顔で何か考えていた。何事かぶつぶつ呟いてもいる。

…怒ってる?怒ってるのかな?

「エレベーターは……にある筈なんだけど……」
「あ、あの、デンジさん…?」
「……行ってみよう。」
「え?」
「ナギサタワー。穴の場所も確認したい。」
「え、ちょっ…デンジさん…!?」

顔色を窺おうとしていた所、左手首を掴まれて、そのままナギサタワーまで連行されてしまった。

▲▼▲▼▲

「あ、あれ…?」

ソーラーパネル張りのタワーに連れて行かれ、エレベーターで地下に降りると、あの円形の場所に着く。
着いたのだ、エレベーターを壊してしまって行けない筈の地下に。しかも開いた扉は広場の中心の柱に付いている。
混乱する私を余所に、デンジさんはさっさと行ってしまった。
それに気付いて慌てて後を追うと、彼はガブリアスが壊しただろう穴の前で立ち止まっている。

「あ…、それ……」
「やっぱりな。」

近付くと、納得したようにデンジさんは呟いて、私に向き直りこう言った。

「これは建造中に使ってた機材運搬用なんだ。だからトンネルの位置は此処で大丈夫。」
「そ……そうなんですか…良かった………って、良くないですよね!本当にごめんなさい!!」
「いいよ。壊そうと思ってたとこだし、最短結んだら此処なんだし。……そっか、掘り終わったか…。」

ホッとしたけれど、そう言う訳にはいかないと我に返り頭を下げる。
しかし、デンジさんは薄く微笑んだ後、何処か寂しげに呟いてトンネルを見つめていた。
……どうしたんだろう…建造中に使った物だから思い入れでもあったのかしら?悪い事しちゃったな…。

「えっと…デンジさん、」
「そうだ、トモエさん。」

何とか御詫びがしたくて、掛ける言葉も用意せずに控え目に声を掛けたものの、ふっと顔を上げた彼の声に掻き消されてしまった。
何も考えていなかった手前、デンジさんの声を遮る訳にもいかないので、私は何事もなかった様に装い返事をする。

「なんですか?」
「連れて行きたい所があるんだ。出たついでだから。」
「え?」
「……駄目か?」

ちょっと寂しそうに問われてしまい、行く場所の詳細を聞く機会を失ってしまった。
反射的に首を横に振ると、彼はまた、薄い微笑みを浮かべる。

……何か狡いな、デンジさん。

何て私が考えてる間に、左手首を掴まれて、また何処かに連行されるのだった。


つづく>>

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