act.16
「あ、あの、ほんと、賠償額とか大したものじゃないからっ。お手伝い、3日くらいでいいよ?」
「………すいません……」
「あと、店の制服とかあんまりヒラヒラしてないからっ。……元気……出して?」
「……有り難う御座います…。」
act.16
営業妨害。銃刀法違反。
真っ黒なサラサラロングにゴスロリ着物に身を包んだあたしを誰が真選組副長補佐、鷹居紅刃だと思うだろう。
畜生、この制服ヒラヒラ少ないけど、裾が短ぇんだよっ!!
先日の騒動はあたしの初単独任務遂行を優先させられ保留になった筈だった。
しかし次の日予想だにしない事が起こったのだ。
──回想──
「よォ〜、紅刃君〜。」
「松平公。また来たんですか?」
「それ酷くない?そんな迷惑な顔しないでよ。」
「はいはい。で、何スか?」
「そうそぅ〜。アレ、オメェの単独任務、アレ、しなくていいわ。」
「は?!」
「栗子、件の牛野郎と別れたから〜。」
「えっ?!な、何でっ、…ですか?!」
「昨日、町で見掛けた焦げ茶のフワフワ頭ト目が合ってビビッと来たんだとよォ。因みにィ黒刃と喧嘩してたらしいぜぇ。」
「………あ?」
「オメェに一目惚れしたんだよ。どうしてくれんだ畜生。」
「どうしろって、ンな事オレに言われても…」
「“黒刃様の御知り合いでしたらパパの御知り合いで御座りますでしょ?紹介して下さいで御座いまする、パパ”とか言われちまったじゃねーかァ!!どーすんだよォ?!」
「だからどうしろとっ!!?」
「つー訳でェ、鷹居、あのゴスロリ店で働け。手続きしてきたから。」
「はぁァァァァァァ!!?」
──回想終了──
ふふふふふ、儚きかな、人が生……。
対抗しようにも六面ゴスロリだから助けてくれる人は居ないかった。
だからせめてもの抵抗に、近藤さんから妙ちゃんの隠し撮り写真全部巻き上げ、土方さんのマヨネーズにケチャップをコラボさせ、沖田さんのアイマスクの目を志村け○風にして、山崎さんのミントングッズ全て破壊し、自室にジュ○ーの“勝手にしやがれ”(古い)の歌詞を書いたメモを置いて、屯所を出てきたのだ。
兄者からは市民にバレると悪いからと、この黒髪サラサラロングなヅラ(指名手配犯ではない)を渡されて現在に至る。
慣れない着物だが、裾が短いから転びはしないけど、とてつもなく恥ずかしい。
道行く人が店内覗いてンじゃねーかっ、畜生!!
頼むから真選組の皆さん市中見廻りに来ないで下さいィィィィィィ!!
からんころん
あ、客が来た。
「いらっしゃいまぁ…………」
営業スマイルを顔に貼り付け、振り替えって固まった。
「あり?働き始めたって、とっつぁん言ってたのに、紅羽いねぇじゃねぇですかィ。」
「総悟、お前確か桂がここに来てるみてェだっつってたよな?だから恥を忍んでここに来たんだよな?」
「そんなん嘘に決まってるじゃねぇですかィ。わー、土方さん、頭固ぇ。」
「取り敢えず一発殴らせろ。痛くしないから。」
「嫌でィ。」
眼前には見慣れた洋服の見慣れた二人組。
………………
何しに来たの、アンタらァァァァァァァァァァ!!?
仕事しろォォォォォ!!!!あ、仕事してんのか。市中見廻りか。
だからって入ってくんなよ!!
「ちぇー、折角紅羽のゴスロリ見れっかと思ったのに。居ねぇんじゃどうしょもねェや。」
「用がないならさっさと出るぞ。」
お?気付いてなくない?
奴らあたしの事、気付いてなくない?
ヅラ(何度も言うが指名手配犯ではない)被ってるけど顔変わんないのに。化粧も薄いのに。
まぁ、いつもアホ面してるからこんな営業スマイル見た事ないから分かんないんだろうな。
よし、出ていけ。あたしの頬筋が痙攣起こさないうちに出ていけ。
店を後にしようとする二人組の後ろ姿に念を送っていると、沖田さんが足を止めた。
「ん?」
「あ。」
振り返ったァァァァ!!目が合ったァァァァ!!やべ、めっちゃ眉間に皺寄せてこっち睨んでるよっ!!土方さぁぁぁぁぁん早くそいつ連れて出てって下さぁぁぁぁぁいィィィィィィ!!!
「どうした?総悟。」
「土方さん、あれ。アイツ。」
「あ?」
沖田さんがあたしを指差して土方さんに言った。言うなよっ!!心の中に仕舞っておけよっ!!
まぁ勿論土方さんはその指先を見る訳になるんだが、土方さんに顔見られたら一発じゃんっ!!一応補佐やってんだから大概一緒に居る訳だし、すぐバレるじゃんっ!!
しかし、不審だからするまいと思っていても、人間てのは面白いもんで、あたしは顔を逸らしてしまった。
「…………」
「あーあ、土方さんがおっかない顔で睨むから顔逸らしちまったじゃねぇですかィ。」
「地顔だ。アイツがどうした。」
「あり?気付きませんかィ?……なら人違いですかねィ。」
「?」
「何でもありやせんよ。取り敢えず出ましょうぜ。野郎二人でこんなとこ長居したくありやせんし。」
「ああ。」
その会話の後、自動ドアの開く音と閉じる音がした。
……少し空いた間が気になるけど、どうやらバレなかったかな。よかった〜
でももしかしたら外から除いてるかもしれないから、暫く俯いてよ。
なんたって相手はあの沖田さん…………ん?
相手はあの沖田さんだ。そう、相手はあの沖田さん。
………………。
いやいやいや。
何かものすご視線感じるけども、めっちゃ近くに人の気配がするけども……っ!!
無いよ。いくら何でもそりゃないって……うん……きっと………。
……………。
顔、上げてみよっかな……
あたしは恐る恐る顔を上げてみた。
「よぅ、紅羽。随分と可愛いカッコじゃねぇですかィ。」
目の前には爽やかに嫌な笑みを浮かべた沖田さん。
「!!!ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!?』
あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!バレてたっ!!
めちゃくちゃバレてたっ!!
「おおおお沖田さんだけですよねっ!?今ここに居んの沖田さんだけですよねェェェェェ?!!」
ちょっと私より低い肩を掴んで前後に揺らすと、沖田さんは少し気分悪そうに店の外に親指を向ける。
「………!!ぬ゙ょ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
その方向に目をやれば、口から銜え煙草を落として固まってる土方さんを発見してしまった。
てか何か変な悲鳴が出たんですけどっ!!“ぬ゙ょ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????”って何?!どうやって発音すんの?!!
「なぁにやってんですか、アンタらァァァァァァァァ!!!」
「や、紅羽のゴスロリを土方さんがどうしても見てぇって聞かなくて。」
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!?」
濁音ばっかの悲鳴を上げると不穏な雰囲気に気付いたのか、土方さんが再び店内に侵入してきた。
「おい、総悟!!今何つった!!?」
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!?でさァ。」
「鷹居の奇声じゃねぇよ!!オメーがその前何つったんだか聞いてんだっ!!」
「紅羽のゴスロリを土方さんがどうしても見てぇって聞かなくて。と言いやした。」
「テメェェェェェェェェェェ!!!その口は嘘しか吐けねぇのかァァァァァ!!?」
「強ち嘘じゃねぇですねィ。」
「よーし、分かった。剣を抜けェェェェェェ!!!」
ふてぶてしく沖田さんが言うと、土方さんは店内だというのに抜刀した。
「ちょ?!土方さんっ!!やめて下さいよっ!!」
「望むところでィ!!」
「え゙え゙え゙え゙え゙っ!!?沖田さんもッスかっ?!!」
珍しく沖田さんも土方さんの煽りに乗り、抜刀する。
ちょ、マジでやめてくれって!!
店の娘達がこっちみてヒソヒソやってるよ!!
あ、会話聞こえる。
「きゃー!!あんな男前二人に取り合いされてるー!!」
「いいなー、鷹居さんっ。」
「少女漫画みたーいっ!!」
アンタら今までのやり取り見てたっ?!!
どうなってんだよ君らの思考回路はっ!!どう見たって違うだろうが!!ピンクの色眼鏡を外せェェェェェ!!
からんころん
あ、また客が。
「………こんなところで抜刀なんて、公務員が何をしてるんだ?」入ってきたお客さんと思われる人がそう言った。
…土方さん達の影になってて、顔が見えない…
「!!テメェは…」
「アンタこそ何してるんでィ。まさかここに服買いに来たって事ァねぇだろィ?」
「僕は頼みがあって此処に来たんだ。それより、刀を仕舞ったらどうだ。迷惑だぞ。」
おお、何処の誰だか知らないけど、何て常識と度胸のある方なんだっ!!
お客さんと思われる人の言葉に土方さんと沖田さんは刀を仕舞った。
「…ッチ。行くぞ、総悟。」
刀を仕舞うと土方さんが沖田さんに言う。
すると沖田さんは懐から携帯を取り出した。
「あ、ちょっと待って下せェ。写メ撮りたいんでさァ。」
そう言って、携帯のカメラをあたしに向けてきたんで、レンズ部を鷲掴む。
「撮らせるか。早く出ていけ。営業妨害。銃刀法違反。」
「ちぇ。」
沖田さんは渋々携帯を仕舞った。
「それじゃあな。しっかり働けよ。」
「また来まさァ。」
「もう来んなっ!!!」
土方さんと、ニヤニヤしながら出て行く沖田さんにしっし、とあたしは手を払う。
そして、あの二人を追っ払ってくれたお客さんに対応すべく再び営業スマイルを顔に貼った。
「いらっしゃいませ、お客様。」
「ああ、うん。」
曖昧な返事が帰ってきたので、営業スマイルのため細めていた目を開く。
あれ?男の子?
でも男にしては声高いよな。
背も低いし、隻眼の睫毛は長い。髪も長くて綺麗だなぁ…。
お客さんを凝視していると、その人は口を開いた。
「僕の顔に何かついてるか?」
「あ、失礼しました。本日はどのような物を御求めでしょうか?」
何か変だな。この返し。美容室みたい。
しかしお客さんは、この変な返しを特に気にせず、懐から写真を取り出した。
「すまないが、服を買いに来たのではないんだ。この写真の男にはここの商品を売らないで欲しい。」
「……はぁ。」
写真を手に取り確認する。
切れ長の目に色素の薄い長髪の落ち着いた雰囲気の成人男性………どっかで見たことあるなぁ………。
えーっと……と、と……
「…………東…城…さん?」
あたしがボソリと呟くと、お客さんは、綺麗な隻眼を零れんばかりに目を見開いた。
「!!やはりコイツはこの店に来てるのかっ?!!」
叫んで、あたしの二の腕辺りを両方、ガッと掴んで迫る。
「うわっ!?あ、いや、じゃねーや、いえ、私の知り合いに似ていたので…」
「僕はコイツに数々の嫌がらせを受けているんだっ!!世話にはなっているんだが、正直存在がウザくて堪らないっ!!」
「え、ちょ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙〜〜!!!」
お客さんは腕を掴んだまま、あたしを前後に揺すり始めた。
……うぉえ、揺すられんの初めてだけど、これ気持ち悪っ!!
土方さんと沖田さんの気持ちが分かりました。今までごめんなさい。
「あわばばばば〜!!お客さぶぁぁぁぁっ!!」
「頼むっ!この男にだけは商品を売らないでくれ!!」
小さいくせに、どこにこんな力隠し持ってんだよっ!!
やべ、何か出る。食道辺りまで来そうっ!!
ずるっ………、ぱさ
「あ。」
頭が何か軽くなったかと思うと、前後の運動が止まった。
ん?頭が軽くなった、だと?
頭だけで振り返ると、足下に黒髪サラサラのヅラ(何度も言うがry)が落ちている。
「あ。」
慌ててヅラ(何度もry)を拾い頭に戻すため、その場にしゃがんだ。
「………紅羽…か?」
「え?」
不意に名を呼ばれ、ヅラ(何ry)を戻して振り替える。
が、前に居るのはさっきのお客さんだけ。
「あれ?」
「紅羽、君は紅刃紅羽ではないか?」
もう一度呼ばれたその声は眼前のお客さんの口から紡がれていた。
ああ、お客さんが呼んだのか。
てか、何で名前知ってんだ。あたしはそんなに有名か?
「そう……ですけど……」
取り敢えず返事をすると、お客さんは途端に笑顔になった。
「やはりそうか!!久し振りだな、紅羽っ!!」
お客さんは嬉しそうにあたしの肩を叩く。
「えっ?えっ?」
あたしは状況が理解できず狼狽えた。
ちょ、誰?誰だ、この人?
あたし、隻眼の知り合いなんて………
「あ。」
いたわ。心当たりを思い出して、あたしは声を上げた。
この大きさ、この喋り方。しかも、東城さんに世話になっててセクハラされるようなのって……。
「……きゅー……ちゃん?」
「そうだっ!!柳生九兵衛だっ!!」
たらめらいがちに、聞けば、お客さん、───きゅーちゃんは満面の笑みで頷く。
わー、マジでか。どーしよー。
再会出来たのは嬉しいさ!!そりゃ、きゅーちゃんなんかかなり久し振りだし!!しかしっ!!
………わーい、また変なカッコで旧友に再会しちゃったぞー。
やべーよ。絶対何でこんな事してるかって聞かれるよ。
あ゙ーーっ!!また、バトルロアイヤルホスト行きですかぁーーー?
To be continued……