act.17
「ふふふふふ………鷹居紅刃、バイト完全遂行により、只今帰還致しましたでありますよ、副長………」
「ちょ、な、何?何か怖いんですけど。」
「ふくちょー、今度の土曜日非番でしたよねー?空いてますかぁー?」
「何?いきなりキャラが変わったんだけど。可愛い感じ狙ったみてーだが、逆に怖いんですけど。」
「………死のバトルロアイヤル……ふふ、ふふふふふふふふふふ………」
「え?意味解んないんだけど。鷹居、大丈夫か?鷹居?鷹居ー?」
act.17
こんの、駄目人間んんんんんんんっ!!!
こんにちは、今日も元気だ鷹居紅羽です。
今日は、先日のなんやかんやでやらされたゴスロリバイトが終わって、無事真選組復帰を果たしたあたしの最初の非番であります。
因みに此処は此の話では3度目となるバトルロアイヤルホストだったりします。
で、隣にいるのは、
「…鷹居、何で俺が来る必要があったんだ?」
「きゅーちゃんがあたしの上司も連れてくるように言ったからです。」
土方さんです。
ぶっちゃけ相当嫌です。
きゅーちゃんに言われなければ連れてこなかったのに……。
あんな醜態見せた挙げ句……ぎゃー!!思い出すだけで鳥肌がっ!!
「柳生の倅か…。お前、面識あんのか?」
「昔、剣術道場やってまして、妙ちゃんときゅーちゃんとはそん時からの付き合いですよ。」
「へぇ。で?何で呼び出しくらってんだ?」
「あの場で事の次第を掻い摘まんで話したら、“紅羽に此の様な格好をさせるなど、一体どんな上司だ!!僕が成敗してくれるっ!!"って言って上司同伴で此処に来るように言われたのだった。」
「何その語り口調っ!?てか、それ俺じゃねーだろっ!!?やらせたのはとっつぁんとオメーの兄ちゃんだろーがっ!!」
「六面ゴスロリの恨み、果らさでおくべきか……」
「………」
声のトーンを落としてボソリと言うと、土方さんは部が悪そうな顔をした。
ざまぁみろ。
これから2週間はマヨケチャコラボも、し続けるからなっ!!
「……ここ灰皿ねェのか。」
「最近のファミレスは喫煙席の方が少ないんですよ。ある訳ないじゃないですか。」
こんな感じの嫌な雰囲気の中、暫くして、きゅーちゃんが店内に入って来るのが見えた。
「あ、きゅーちゃん。こっちこっちー。」
入り口に向かって手を振ると、きゅーちゃんは手を振り返しつつあたしらの方に向かってくる。
「紅羽っ!!すまない、東城を撒くのに時間が……何で君がいるんだ?」
席に着くなり、きゅーちゃんは土方さんを発見して訝しげに言った。
「……コイツに連れてこられたんだよ。」
「紅羽に…?貴様、紅羽とどういう関係だ。返答次第では抜刀するぞ。」
「待った待った。きゅーちゃん、土方さんはきゅーちゃんが連れてこいって言ったあたしの上司だって。」
あたしは、どっかのお父さんみたいな事を言い、腰の柄に手を添え、抜刀せんと構えるきゅーちゃんを宥めつつ言った。
「上司?」
「そうそう。」
「そうか……それならばっ!!!」
納得し、柄から手を放したかと思ったら、きゅーちゃんは突然、土方さんに食って掛かる。
「貴様が紅羽にあの様な格好をさせたのかっ!!」
「なっ?!濡れ衣だっ!!」
「嘘をつけ!!紅羽は上司の命令だと言っていたぞっ!!」
「コイツの上司が俺だけの訳ねーだろっ!!」
「では何故ここに貴様がいるっ!!どうせ貴様も東城の様な奴なのだろうっ!!侍としての恥を知れっ!!」
「テメーんとこの細目と一緒にすんじやね…って、俺じゃねーからっ!!!」
面識があるのは何となく分かってたけど、うあー、土方さん連れてきたの失敗だわー。すっげー仲悪そう。
取り敢えず此の騒ぎどうにかしねぇと……回りのお客さんの目が痛ェ…。
「土方さん!!落ち着いて下さいっ!!騒ぎ起こすために来たんじゃねーんですよっ!!」
「そうですよ、若っ!!柳生のホープが此の様な所で警察沙汰でも起こしたらどうするのですっ!!」
「「…………」」
ん?あたしの他にもう1つ声が聞こえたぞ?
「貴様……何故ここにいるっ!!!!」
ドゴンッ!!!
べきっ!!
「ぎぃやァァァァァァァ!!若ァァ!!折れましたぞ、若ァァァァ!!!」
「……東城さん…」
「近藤さんみてーなことすんだな、コイツも。」
騒ぎを止めるどころか、逆に大きくなってしまったので、場所を変えるべく、あたしたちは渋々バトルロアイヤルホストを後にした。
*****
「………どういうことですか?紅羽。」
「や、一番安全なとこで話し合おうと言うことになったので。」
「だからどうして此処ですか?」
「一番安全だからです。」
時刻は昼。
無闇にファミレスを巡っていては真選組副長補佐“鷹居紅刃"が女だとバレないとも限らないので、あたし、土方さん、きゅーちゃん、瀕死の東城さんは兄者の部屋──幕臣寮D棟301号室、4LDKバストイレ完備(国営、家賃なし)──にやって来ていた。
「…はぁ、紅羽。貴女とひ、むぐっ!?」
びたっ!!
「それ以上口を開くな、愚兄めが。
べりべりべり、
「いたた……紅羽、どこにガムテープなどを仕込んでいたんですか?」
「じゃ、皆さん。どうぞ上がって下さい。」
「完全無視ときましたか。」
もうホントに嫌だ。何か最近、あたしの事 玉の輿に乗せようとしてんのがありありと感じられてイラっとくる。
そんな兄者を放置して、あたしは勝手知ったる兄者の部屋にずかずか上がり込んだ。
「ああっ、勝手に入らないで下さいよっ。」
一番広いリビングに入ろうとすれば、兄者が慌てて止める。
「何スか。彼女でも来てんですか?やましい事でもしてたんですか?」
「馬鹿な。彼女なんて金のかかるもの私にいると思ってるのですか?」
「有り得ないッスね。」
「少しは考えて下さいよ…。嫁入り道具(全て母の御古)の整理をですね、」
「はーい、皆さん上がって下さーい。」
「……紅羽 最近、私に冷たくないですか?」
イラっとくるんだよ、イラっと!!嫁入り道具って何だ。お前が嫁入りすんのかっ!!?
まぁ、それはさておき。あたしはリビングにのソファーと机の上の物を片してきゅーちゃんらを招き入れた。
「……随分立派な所だな…」
「うちの屯所とは大違いじゃねーか。」
「………すいません。包帯みたいなの有りませんか?」
「それじゃあ紅羽、どういう事か詳しく話してもらおう。」
「若、そんな、無視なさらないで下さい。」
「えーっと、あたしはなんやかんやで、」
「紅羽君まで……」
*****
「………と言うわけで、あの店でバイトしていたのでした。」
あたしは本職で真選組にいる事、そこで男装してる事、何でゴスロリ店でバイトしてたかと言う事を簡単に、きゅーちゃんに説明した。
「……成る程、そう言うことか。」
「ゴスロリ店で働かされた最大の原因は、そこで東城さんをミイラにしている兄者と、その変態上司である警察庁長官なんだな。」
納得するきゅーちゃんに念を押し、土方さんの濡れ衣を取り敢えず脱がしておく。
「じゃあなんでそいつを連れてきたんだ?」
「…………あー、あたし仮にも女の子な訳で、40過ぎたオッサンとか、かなり変態な兄とは一緒に歩きたくねーなーと、」
「…僕が東城に付きまとわれていると同じ感覚か…。」
「そーなるな。」
あ、何か、きゅーちゃんとは同志になれそう。変態から逃れ隊とか結成できそう。
「紅羽っ!!東城さんは変態ですけど、私は違いますっ!!お金が欲しいだけですっ!!」
「むがっ!!むがもごむが!!」
……東城さん、何言ってっか分かんねーよ。つーか兄者、どれ程包帯巻いてんだよ。
「変態ですよ変態。公然猥褻罪ですよ。」
「私が何時そんな事をしましたかっ!!」
「わぁーお。金に眼が眩んで自身で分かんなくなってると来た。」
どうしよう。ホントに嫌になってきたー。昔は優しいお兄ちゃんだった筈なんだけどなー。
「しかし、紅羽一人を男所帯に入れると言うのはやはり心配だ。」
「あー、だいじょぶ、だいじょぶ。何かもう慣れた。風呂とか妙ちゃんとこ行くし。」
「だが、紅羽は女の子ではないか。真選組なんて危険すぎる。」
あ、この流れ前にも聞いたことあるぞ。妙ちゃん時と同じだぞ。
「どうだろう、宿舎だけでも僕の家にすると言うのは。」
やっぱりな。……でもどうしよう。何かもう兄者の言う事聞きたくねーんだよな。御言葉に甘えちまおうかな……
「うーん、じゃあ御言葉に…」
「御言葉ですが九兵衛君、」
「……あれ?」
兄者がしゃしゃり出て来たんですけど。あたしの回答権を奪ったんですけど。
「黒刃殿、僕は今、紅羽に聞いているんだが。」
「九兵衛くんは家の紅羽が誰彼構わず相手にする尻軽女と御思いですか?」
「そんなことはないっ!!」
「紅羽は自分の身は自分で守れます。その辺にゴロゴロいる浪人や警官何か相手にならないほど腕が立つ事は君も知っているでしょう?」
「……っ。」
「君の同情心で紅羽を甘く見ないで頂きたい。何れは私を越える使い手になるのですから、男の中で生活することなどで挫折してもらっては困ります。」
「………っく、」
「……兄者……。」
うおおおお!!な、何だいきなりっ!!兄者っ!!アンタそんな風にあたしを想ってくれてたのかっ!!
「紅羽なら、道徳観に背く様な過ちはしないと、私は信じてますから。だから真選組入りも許可したのですよ。」
「ああ、あ、兄者……っ!!!」
くっ!!嬉しい事言ってくれんじゃねぇかっ!!やっぱり兄者は昔と変わらぬ優しいお兄ちゃんだっ!!
兄者っ!!一生付いてきますっ!!
「それにねぇ、土方さん。真選組には紅羽を女なんじゃないかなんて思ってる方は1人もいらっしゃいませんでしょう?」
ん?あれ?何か雲行きが……
「そうだな。鼠1匹いねぇ。知ってる奴除けば、全員が完璧に男だって思ってる。」
「ですよね〜。天地が引っくり返ったって気付きませんよね、こんな顔じゃ。」
「言葉遣いもナチュラルにハマってるし。」
「青年役声優にでもなれる声色ですし。」
「背なんか総悟よりデケェし。」
「肩幅なんて私と然程変わりませんし。」
「悲鳴が可笑しいし。」
「仮に女だとバレても喰おうとする人なんていませんよね〜。」
「幾らアイツらが餓えてるからって、そりゃねぇな。」
「逆に喰われそうですからねぇ。」
前 言 撤 回
お前らあたしの事何だと思ってんだァァァァァァァ!!!もんすたーかっ!!?えいりあんかっ?!!言ってみやがれボケェェェェェェェェェ!!!
「……そ、そうか…。紅羽がそこまで強いのならば、僕が守る必要はないな。」
きゅーちゃァァァァァァァァァんっ!!!
素直に信じんなァァァァァァァ!!
や、97%ホントだけどもっ!!!だからって、そりゃねェだろォォォォォォォっ!!!
「ええ、そういう事です。九兵衛くんの御厚意は大変有り難いのですが、此方にも事情が御座いますので。事情がね。」
やっぱりそれかァァァァァ!!!
玉の輿だろっ!!?今の言葉はその機会を逃さぬための口実だったのかァァァァァっ!!!
「…………こんの、駄目人間んんんんんんんっ!!!!!」
「ぶはっっ!!!?」
あたしは兄者にラリアットを一発かまして、部屋を飛び出した。
「鷹居っ?!」
「紅羽っ!!何処に行くんだっ!!」
土方さんときゅーちゃんの声が聞こえたような気がしたが、知らねぇっ!!
こういう時はママ(マドマーゼル西郷)に愚痴を聞いてもらって慰めてもらうしかないっ!!
畜生っ!!少しでも兄者を見直したあたしが馬鹿だったっ!!
幕臣寮を出て目指すはかぶき町、かまっ娘倶楽部。
前後左右も見ないで走り続けた。
……それが仇になるとは知らず、
ぐいっ!!
「!!?」
不意に腕を引かれ、バランスが崩れる。
「なっ?!」
そのまま路地裏に引き込まれた。対峙しようとすれば、鳩尾に重い衝撃が走る。
「づっ!!」
薄れゆく意識の中で、最後に見たのは……
派手な着物と煙管。
笠から覗く鋭い隻眼だった。
To be continued……