act.19
「うははははははははは!!もっと腰入れて掛かってこいよっ!!そんなんじゃオレは倒せねぇぜェェェェェェ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「オイ、黒刃っ!!何だよアレっ!?どうなってんだよっ!!」
「だから言ったじゃないですかっ!!手遅れだって!!」
「手遅れって鷹居の事じゃねーのかよっ!!」
「当たり前じゃないですかっ!!」
「酷っ!!」
act.19
パブロフの犬的な
はぁ、これは困りましたよ。
上手くいけば浪士集団の筆頭を取っ捕まえて特別給金、栄誉賞受賞、懸賞金収得でイイ感じー♪だったと言うのに、あんなに暴れてしまっていたら……あぁ、もう逃げてられてしまっていますよ、きっと……。
「近藤さん。一先ず浪士確保の援軍を呼んで下さい。私はあのアホを止めてきます。」
「え?!今、トシに死ぬから止めろって言ってたのに、黒刃殿行くの?!」
「土方さんと沖田くんを御借りしますよ。一人で行けば私も死にかねませんから。」
私は近藤さんに増援のお願いをして、腰の刀に手を添える。
「あのまま放置する訳にはいきませんしね。土方さん、沖田くん、力を貸して下さい。」
「おう。」
「了解でさァ。」
目配せをすれば二人とも頷いてくれた。……あ、ホントにいい人。しかも高収入…。
まぁ、それはさておき、私達は増援を近藤さんに任せ、屋形船へと突っ走った。
*****
久し振りに振り回す真剣にあたしは歓喜を感じていた。何時もならこんな大人数相手にこんな応戦は出来ないのに実行してる辺りから自分の中の何かが疼いているのが分かった。
本来ならばこう言うの為に真選組に入ったのに、全く以て今までこういう機会がなかったからかもしれないけど。兄者に対するストレス発散にもなるし。
あ、殺してはいないよ?峰打ち的な感じ。若干太刀は入るけど、死ぬ程ではない……筈。
「くははっ!!どうしたっ?!それで終わりかっ?!!」
冷静に分析する頭とは逆に、死屍累々の如く折り重なる浪士達を前に口から紡がれた言葉に、気持ちが昂っているのが分かる。
まずい。此のままいけばマジで殺すかもしれない。
血湧き肉踊るとはこういう事か。あたしの中の血が…
「紅羽っ!!3回 回ってわん!!」
「ハァァァァァァァ?!!」
前方から見慣れた影が3つ、現れたかと思ったら、そう叫んだ。
前者は兄者、後者は土方さん。もう1人は沖田さんか?
……あーぁ、あたしも土方さんとハァァァァァァァ?!!って叫びたいんだけど……
くるくるくる……
「わんっ!!」
「やりやがったァァァァァァ?!!」
条件反射とは恐ろしい。
よりによってあの2人に見られた……。
羞恥と絶望であたしはその場にへたり込む。
……うぅ、気持ちの昂りは見事なまでに消えるから悔しいったらない……。
幸い、浪士達は気絶してるから襲ってこないけど、代わりに兄者と微妙な顔した土方さんと沖田さんが駆け寄って来る。
…穴があったら入りたい……否、この場から消えたい。
……あの、誰かマ○オの土管くれませんか?マリ○が出たり入ったりして別のとこに繋がるアレ。
「紅羽っ!!無様でゲフンゲフン、無事ですかっ?!」
「今なんて言おうとしたっ?!無様ですかっ?!って言おうとしただろ、クソ兄者ァァァァァァァァっ!!!」
「ッチ。良かった、無事みたいですねっ。」
「何で舌打ちっ!!?つーか無事じゃねーよっ!!アンタのせいで精神的にボロボロだよっ!!!』
駆け寄って、良かった良かった、とあたしを抱き締める兄者に安心どころか殺意が湧いた。
コノヤロー、何時か覚えてろよ……。
「………どうなってんだ?、黒刃……?」
「サッパリでさァ。」
気絶した浪士達をお縄に掛けた土方さんと沖田さんが哀れな物を見る様な目で声を掛け、近付いて来た。
いや、近付いて来んなよっ!!ゴスロリ衣装に加えて3回 回ってわん、まで見られて、合わせる顔がねーんだからっ!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!来ないで下さいっ、土方さぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
「俺だけっ?!!」
「いや、沖田さんもっ!!」
全力で否定すると、土方さんは少し申し訳なさそうな顔をしたが、沖田さんがやたら愉しそうなんですけどっ!!足を止めた土方さんとは逆にずんずん近寄ってきてますけどっ!!
「来ないで下さいってばっ!!沖田さんっ!!」
「そう言われると行きたくなるのが人間でさァ。」
「確かにっ!!確かにそうさっ!!でもやめようぜっ!!ホント、合わせる顔がねーんですってばっ!!」
嫌がれば嫌がる程、愉しそうに笑顔で近寄る沖田さん。
畜生っ!!コイツSなんだなっ!?
いい人だって思ってたのにっ!!
「殺られる前に殺る。これ鉄則。」
「は?」
「来るなァァァァァァァァァっ!!沖田総悟ォォォォォォォっ!!」
「ちょっ?!紅羽っ?!!」
あたしは未だ抱き付いたままの兄者を全力で引き剥がし、沖田さんに向けてやっぱり全力で突き飛ばした。
「うるあァァァァァァァァ!!!」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」
そしてそのまま2人は死屍累々の如く折り重なる浪士の中に突っ込んでいった。
「紅刃君っ!!大丈夫かいっ!!」
兄者と沖田さんが倒れたと同時に真選組の皆を連れた近藤さんが慌てて走ってくる。
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!パパァァァァァァァァっ!!!」
「え?!パパっ?!!」
あんまりにも普通にあたしを心配してくれる近藤さんに感激し、あたしはドロップキックをかました。
ドムッ!!!
「ぐふぅっ?!!」
「あ、すんません。調子こきました。」
あたしのドロップキックが強烈すぎたのか、近藤さんは呻き声と共に蹲る。
「い…、いいよ。平…気平気…。大丈夫だったか、い?紅刃、君?」
明らかに平気そうには見えないが、あたしを心配する近藤さん。
…うぅ、ホントに良いゴリラ……
「あいっ!!オレは元気ですっ!!とっても無事ですっ!!」
「……そ、そう……うぅ……」
敬礼して見せると、近藤さんは力無く微笑んで、ぱったりと倒れた。
「「「「局長ォォォォォォォォォォ!!」」」」
「あり?キツ過ぎたか?ドロップキック?」
「綺麗に決まってたからな…」
首を傾げていると、隣で声がした。振り向けば、煙草銜え、げんなりしている土方さん。
「のわっ?!土方さんっ!!近付くなって言ったじゃないですかァァァァァっ!!」
「あっぶねっ!!ちょ、殴り掛かってくんなっ!!さっきの別にそんな気にしてねーよっ!!」
「嘘だァァァァァァァァァァっ!!!哀れな物を見る目だったじゃねーですかァァァァァァァァ!!!」
「待っ!!あれは、ど、同情と言うか、懐かしみと言うか……、」
「懐かしみ?…………やった事あるンスか…?」
「…………………1回、な…」
自嘲するような土方さんの伏し目にあたしは殴り掛かるのを止めた。
………このプライドの高い副長様に一体誰がそんな羞恥プレイを?あ、沖田さん?
「取り敢えず屯所に戻るぞ。コイツ等しょっぴくのと、さっきの3回 回ってわんが気になるからな。」
「やっぱ気にしてンじゃねぇですかっ!!!」
「ククッ…ま、そんなもんだ。手柄だったな、鷹居。」
「……あ、はい…。」
近藤さんを担いで屋形船から去る土方さん。……何か、笑ってなかったか?
「おら、早くしろ。総悟と黒刃持ってこいよ。」
「あ、待って下さ……って2人もですかぁっ?!!!」
*****
「えー、何から話せば良いのやら。」
屯所に戻って、兄者は近藤さん、土方さん、沖田さんをあたしの部屋に集めて唸った。
「取り敢えず3回 回ってわんですねィ。」
「わ゙ぁっ!!それ以上言うなっ!!」
「そうですね。実は私共の家系には夜兎の血が若干量入ってるんですよ。」
「夜兎…ってーと、あの星海坊主と同じ…」
「万事屋のチャイナもそうでさぁ。」
土方さんと沖田さんが興味深げに相槌を入れる。
「そうなりますね。あ、直接じゃないんですよ。私共の母方の祖父の母の父方の祖母の旦那の父親が夜兎だったらしいです。」
「え、ちょ、待って待って。黒刃殿。紅刃くんのお祖父さんのお母さんのお父さんのお祖母さんの旦那さんってアレ?何?どゆこと?」
「つまりは先祖に夜兎がいるんですよ。物分かりが悪いゴリラですね。」
「あ、今ゴリラって言った。確実にゴリラって言ったよね?」
「まぁ、そんな訳で、我が家は代々気性が荒くて戦い好きなんですよ。」
「アレ?無視?」
兄者は、近藤さんの言い分?何それ?おいしいの?と言わんばかりの無視をかまして、着々と話を進める。
すんません、近藤さん…。
「殊、我々兄弟はその血をえらく濃く引き継いでましてね、刃物とか拳とか凶器を振り回すのが大好きなんです。」
「……兄者、それじゃ、只の危険人物ですよ…。」
大分重要な事をぺらっぺらと他人事みたいに話す兄者に溜め息をついてあたしは言った。
「そりゃあ初耳だな。」
「紅刃に戦闘部族の血をねィ。」
然程驚きもせず、土方さん達は応える。
「つーか、ひい祖父さんだかそのまたひい祖父さんだか知らねーが、そんな遺伝、俄に信じ難ぇな。」
「土方さん、よく少年漫画にあるじゃねぇですかィ。主人公の祖先が人間じゃねぇなんて設定。」
「そうですよ。例を挙げれば、幽☆遊☆白☆●の主人公とか。あんな感じです。」
「知らねーよ。」
「えっ?!知らないんですかっ?!あの、ジャンプの名作をっ」
「うわー、土方さん、おっくれってらァ。アレめっちゃ面白かったですよね、黒刃さん。」
「ええ!!何と行っても、鴉対蔵馬戦は外せませんね!!」
「俺ァ終盤の三勢力の辺りが好きですねィ。」
おいおい、話が擦れまくりじゃねぇか。
誰が某漫画談義をしろと言ったよ。土方さんが完全においてけぼりくらってんじゃん。あ、近藤さんも。
「オイ、紅刃。俺等、何の話してたっけ?」
不意に土方さんがあたしに話を振った。
「オレの3回 回ってわん、ですね。」
「だよな。オイ、黒刃、総悟。いい加減にしろよ。」
「あー、でも氷泪石の話も捨てがたいですねー」
「それだったら、桑原・御手洗戦も外せませんぜ?」
「駄目だ、全く聞いてねぇ。つーか総悟ジャンプ講読者か?法度違反で切腹だぞ。」
ち、っと舌打ちして土方さんは懐から煙草を取り出した。
…ホント好きですね、煙草。このニコ中が。
「もういいわ。鷹居、お前が説明しろ。」
「え゙え゙え゙え゙え゙っ!!?自分の醜態を自分で話すンスかっ?!どんな体罰ぅぅぅぅぅ?!!」
「いいから早くしろ。減給すっぞ。」
「あ、すんません。それだけは勘弁して下さい。」
「お前案外簡単な奴だな。」
「減給は兄者に殺害される事を意味しますからね。えーと、餓鬼の頃に道場破りを再起不能にした事がありまして、そん時もさっきみたいに発狂染みてたらしいンスよ。」
「え、お前、それ幾つン時?」
「3つか4つだったかな。」
「………」
「で、そん時は止める術無く兄者と父上て押さえ込んで病院連れてかれたんですよね。精神科。」
「ほぅ。」
「そんで、一種の催眠術?みたいなの掛けられて、“紅羽、3回 回ってわん”に従う子供に育てられたのでした。おわり。」
「催眠術、掛けられてンのか?」
「あ、条件反射かな?パブロフの犬的な。」
「は?」
「やんないと毎食抜かれたンスよ。外食にも連れてって貰えない。」
「つーか、何で“3回 回ってわん”?」
「ああ。それは、3回 回ってわんする事で自分に絶望させ、羞恥心を煽り戦意を失うからみたいッスよ。」
「………そうなのか。」
「あ、何スか、その目。その可哀想な物を見る様な目。」
「……お前、大変だったんだな…。」
土方さんはそう言うと、目を細め、あたしの肩を叩いた。
「ちょ、何スかっ?!余計惨めになるじゃないっスかっ!!」
「あ、悪ィ。所で、その台詞、誰が言っても利くのか?」
「はぁ…、オレ以外なら。」
「…………へぇ。……紅羽、3回 回ってわん。」
「なっ!!?」
くるくるくる……
「わん。……って何させるンスかァァァァァァァっ!!!!」
「ははっ!ホントやりやがったっ!!面白ぇなコレ!!」
「遊ぶなァァァァァァァ!!」
それから暫く、土方さんは事ある毎に3回 回って わん、をあたしにやらせた。
畜生ォォォォォォォ!!!今に見てろよォォォォォォォ!!!
To be continued……