extra.6
「くぁ〜…あー。…はざーす………アレ?」
「何だ、鷹居。やっと起床か。」
「あ、土方さん。あの、皆は…?」
「あ?昨日の会議聞いてなかったのか?」
「へ?」
「今朝早くから慰安旅行で、俺とお前以外全員武州の温泉行ったぜ。」
「え……?え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙っ?!!!!」
おるすばん。
朝っぱら、と言っても優に9時は過ぎてるが、あたしの奇声が屯所内に響いた。
「何でっ?!!何で起こしてくれなかったんスかっ?!!」
「何でって、テメェが昨日留守番で良いって承諾したんじゃねぇか。」
「え?嘘?マジっすか?」
「おう。昨日の会議で、」
──回想──
「明日から慰安旅行だが、屯所を空にするのは心許ない。と、言うわけで、今から留守番を決めます!」
「えーっ!!」
「反対ーっ!!」
「局長がやってくださいよー。」
「副長を殺ってくださいよー。」
「おい誰だ今の!!切腹だぞコラァ!!」
「所で近藤さん、今年は何処行くんですかィ?」
「何処って何時もの温泉に決まってるだろ、総悟。武州の温泉宿だ。」
「温泉って………。それ、紅刃も一緒にですかィ?」
「勿論だ!なぁ、トシ!」
「……近藤さん、もしかして忘れてんのか…?」
「え?」
「紅刃ですぜ?」
「うん。何か問題あるか?」
「……」
「……」
「な、何?」
「話んなんねぇや。土方さん、こりゃ完全に忘れてますぜ。」
「…だな。」
「え?何何?何なの?」
「あいつ……女だろ?」
「…………あっ!で、でも、もう予約しちゃった…!!」
「はぁ……仕方ねぇな…。オイ、てめーら。今回は俺と鷹居で留守番すっから。精々楽しんでこい。」
「キャッホォォォォォ!!!!」
「副長来ないとかラッキィィィィィィ!!!!」
「俺どんだけ嫌われてんのっ?!!てか今言ったの誰だ!!?」
「土方さん、」
「あ?何だ総悟。」
「あんたはそれでいいかもしれやせんが、紅刃の意見はどうなるんでィ。」
「心配すんな。あいつ、さっきから山崎の隣で爆睡中だから。どうせ明日から慰安旅行なんか知らねぇよ。」
──回想終了──
「承諾してねェェェェェェェェェェ!!!」
回想が終わったところであたしは叫んだ。
何だよ今の回想!承諾どころかあたし喋ってすらいねーじゃん!!
「何言ってんだ。会議中に寝るなんざ法度違反で切腹モノなのを留守番で負けてやってんだぞ。有り難く思え。」
「そりゃ切腹よりはましだけれども……!!」
しゃあしゃあと答える土方さん。
確かに切腹よりは良いけどさ、温泉だぜ、温泉っ!!
以前のフリーター生活では資金不足で滅多に行けなかったし、だからって現在でも収入はほぼ兄者の私利私欲(貯金)に使われてるし、小遣い月15000円で過ごすあたしにとっちゃ慰安旅行位でしか旅行行けないしで物凄い貴重だっての!
「あ゙ーっ!!オレも行きたかったァァァァ!!!」
「あのなぁ、鷹居。」
考えてたら何か惨めになって叫んだあたしに土方さんは頭を抱えた。
「お前自分が男装して真選組にいるって自覚あんのか?」
「ありますよ!失礼だなぁ。」
「じゃあどーやって風呂入んだよ。」
「そんなん1人ずつ入ればいいじゃないっすか。ヤらしいな、土方さん。」
「誰がヤらしいんだ誰が。温泉だぞ?温泉。誰が入ったって構わねぇんだぞ?」
「何言ってんすか。オレは女湯に入るんスよ。」
「お前、今、男装中」
「………あっ!!」
「ホント、お前行かせなくて正解だったわ……。」
あたしの反応に土方さんは盛大に溜め息を吐く。
そうだった。
あたし今、一人称“オレ”って言ったじゃん。
忘れてた。
「ちっ、不便だな。」
「ま、しゃーねぇだろ。入隊時にてめーで決めたんだ。」
「へーい。」
そう言った土方さんに、あたしはやる気の無い返事をする。
じゃあ皆が帰ってくる迄土方さんと2人かー……………あー……何か凄ぇ嫌だな。
土方さんと2人って。何か色々めんど臭い事になりそうな気がする。
「で、皆は何時帰ってくるんすか?」
そんな心の内は口が裂けても言えないんで、あたしは土方さんに聞いた。
一刻も早く皆に帰ってきて頂きたい。いや、ホント切実に。
だって土方さんと2人だけってそんな事が………兄者に知られるその前に!
「あ?そうだな、3日位で帰ってくるだろ。」
「長っ!!仮にも国家公務員がそんなに屯所空にして良いんスか?!つか、それまでの執務はっ?!!」
「やれるだけは俺等でやる。てか、何時もやってるしな。だが、市中見廻りは警察庁の他班がやってくれっから、3日間此所で書類整理だ。」
「うげぇー………」
「つべこべ言うな。始めるぞ。」
「あーい。……と、朝飯まだなんで、食ってから行きまーす。」
「あ?俺の部屋にマヨネーズあるからそれ食え。」
「断固拒否仕るっ!!!!」
* * * * *
「よし、取り敢えずはこんなもんか。」
「ぶへーっ!!疲れたァ〜っ!」
書き上がった書類を纏めれば、隣で鷹居が机にへばり付いた。
時計を見れば12時を回っている。
「腹減ったな、」
「そっすか?オレはまだ大丈夫っスけど、」
「ああ。ちっと食堂行ってくるわ。何かあるかも知れねぇし。」
言って立ち上がった俺に、鷹居は机にへばり付いたまま、顔だけ上げた。
「何かあってもマヨ掛けてこないでくださいね。」
訝しげに鷹居は言う。
余程、何時ぞやの土方スペシャルが堪えてるらしい。全く失礼極まりねぇ。つーか腹減ってねぇ癖に食う気か、コイツ。
「わぁーったよ。」
軽く言葉を返して、俺は自室を後にした。
………あれ?普通はコレ、部下がやる仕事じゃね?
例に及んで隊士が出払ったがらんどうの食堂に到着し、戸棚やら冷蔵庫やらを漁れば、賞味期限ギリギリっぽいインスタントラーメンと魚肉ソーセージが見っかった。
両方、山崎って記名されたのだが、まぁ、いいか。山崎だし。
インスタントラーメンは俺が貰うとして、ソーセージは鷹居にやるか。どうせあんま食わねぇだろう。
取り敢えず、お湯入れたラーメンとソーセージ、割り箸を手に俺は自室に戻った。
「おい、鷹居。両手塞がってんだ。開けてくれ。」
……
「…?」
襖の前で声を掛けるが、返事がない。
「鷹居?いるんだろ?」
……
再度呼んでも返答は来なかった。
「……っち、」
寝てんのか?
それとも嫌がらせか?
何にせよ腹立たしいには変わりなく、俺は襖を蹴り倒した。
ドゴッ!
「鷹居……っ!」
「………んぅ…あにじゃ……こづか…い……」
露になった自室でふと目を遣れば、この轟音の中、よくもとは思うが、案の定、鷹居は机上に組んだ腕に頭を載せて寝ていた。
フツーは起きるだろーが。
てか、よくこの短時間でここまで爆睡出来るな…。
しかも意味不明な寝言まで言ってやがる。
兎に角、俺は持っていた物を机に置いて、倒した襖を元に戻した。
「……」
「…ずる……あたし、も………」
「………」
「……にく………」
「……?」
襖直してる間、ガタガタ言ってるにも関わらず、鷹居は一向に起きる気配が無い。そして更に意味不明な寝言を続ける。
「あ゙ぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
「うぉっ?!!」
突然上がった奇声に振り返ったが、鷹居はやっぱり寝ていた。
熟思うが、コイツ、しょっちゅう寝言で叫んでねぇか…?
「あに……め……いと…しぬ……」
「あにめいと死ぬ?」
全く理解出来ない鷹居の寝言もそこそこに、俺は机に戻ってその横顔に目を遣った。
寝顔だけ見りゃあ、確かに女なんだがな…睫毛長ぇし。
んな事思ってると、不意に鷹居の眉間に皺が寄った。
「?」
「……だ、やだ……行かないで………」
「鷹居?」
「やだ……1人、やだ……」
「おい、大丈夫か?」
魘されてるのか、泣き声混じりの寝言に肩を軽く揺すれば、ふっと瞼が開く。
「……んあ?」
「起きたか、」
眠たげな目を何度か屡叩き、鷹居は此方を向いた。
「あ……土方さん。あたし……じゃなくて、オレ、寝てました?」
「ああ。また魘されてたぞ。」
「げ、変な事言ってませんでしたか…?」
「やだやだって、行かないでって言ってたぞ。」
「………そっか、」
俺の答えを聞いた鷹居は珍しく神妙な面持ちで目を伏せる。
「土方さん、」
「何だ。」
「………やっぱなんでもない。」
「はぁ?」
「あはは、冗談ですよ。………留守番、一緒に残ってくれて有り難う御座いました。」
「お、おう……」
自嘲に似た乾いた笑いの後、鷹居は何時ものように無邪気に笑って言った。
おるすばん。
2人だけだから言えた事。
「食べ物ありましたかー?」
「おう。こっちは鷹居にやる。」
「えーっ!ラーメンが良いです!」
「全部はやらねぇが…ちっと食うか?」
「食う!」
fin.
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前身サイト13500打キリ番
依頼 菜摘様
課題 土方 ギャグ甘
20081119
死ねば死に損生くれば生き得
御堂 篝 拝*