extra.7
「あー……腹減ったー」
「何でィ、紅刃。見廻り中不謹慎ですぜ。鯛焼き食いやすか?」
「オメーも不謹慎だがな、総悟!!」
大江戸たいやき物語
「実は朝飯食いそびれちゃったんすよー」
腹を抱えてあたしは苦笑いを溢した。
隣の沖田さんはもさもさと鯛焼きを食ってるらしい。(手元が見えないが、持ってる紙袋に書いてある)
「何やってんでィ」
「いや、土方さんの犬の餌にやられて食えなかったんす。」
「何が犬の餌だ。土方スペシャルだってんだろーが、しばくぞ。」
「いでっ!」
なんて事言えば逆隣の土方さんに後頭部をぶっ叩かれた。
あー、何時もなら反撃するけど腹減ってんな元気もないや。
「沖田さん、鯛焼きくれるってマジですか。」
「オイ、土方スペシャルに謝罪は無しか、お前。」
「はいはいすんません。で沖田さん。」
「腹立つな、オイ。」
適当に土方さんをあしらって、もさもさ口を動かす沖田さんに詰め寄る。
「いいですぜ。ま、鯛焼きがあればの話ですがねィ。」
「は?」
そう言った沖田さんは口元にあった手を放し、逆の手にあった紙袋を逆さにした。
「え?!嘘っ?!もう食っちゃったんスかっ?!」
「食うも何も始めから食ってませんぜ。紙袋持って口動かしてただけでィ。」
「何だそれっ?!!何のためにんな事やってんですかっ?!!」
「今流行りのエア鯛焼きでさァ。」
「知らねぇ!てか、流行ってねぇ!!」
沖田さんにそう言えば、ちぇー、と唇を尖らした。
畜生、突っ込み入れたら余計腹減った!
だけど今月小遣い減らされたから金ない!
買い食いできねぇ!
絶望に打ち拉がれ、肩を落としてると、耳許に紙袋の音がした。
「あ?」
「腹、減ってんだろ?奢るから此れ食え。」
見れば土方さんが何時の間に買ってきたのか鯛焼きの袋をあたしの肩に乗っけているじゃないか。
「ぎゃああああああすっ!!!土方さぁぁぁぁぁんんんんんん!!!!あざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!!!」
「?!」
若干引いてる土方さんは取り敢えず構わないで、あたしは鯛焼きを引ったくった。
紙袋を破く勢いでバリバリ開いて出てきた鯛焼きに涙腺が緩む。
回りのカリカリが…!
出来立て漂う湯気が……!!
「ひ、土方さんっ!!ホント、御馳走ンなって良いんスかっ?!オレ食いますよっ?!!」
「ああ。食ったら真面目に仕事しろよ。」
「合点承知ィィィィィ!!!いただきまーすっ!!!」
半ば呆れ顔の土方さんに沖田さんが抜け駆け云々言ってた様な気がするが、全力で気のせいにして、あたしは鯛焼きに齧り付いた。
ぐにゃ、
「……?」
頭から齧って、生地の次に現れた慣れない感触に気付く。
……な、何だろう?
何か、凄く嫌な予感が………
不安ではあったが取り敢えず、口に含まれた部分を再度噛んだ。
「!!!」
途端、口内に広がる柔らかな舌触りと独特の酸味。
こ、これはもしや………!!
ばっ、と歯形の付いた半身の鯛焼き目を遣れば、湯気の中からテロテロと光った生地より若干濃い黄色。
「〜○×#£%*◆@§¥!!!!」
マヨネーズだぁぁぁぁぁ!!
鯛焼きにマヨネーズが入ってるぅぅぅぅぅ!!!!
認識したが早いか、嬉しくて緩んだ筈の涙腺から別の意味の涙が吹き出した。
「…あり?土方さん、紅刃が酷ェ顔してますぜ。」
わたわたと挙動不審なあたしに気付いた沖田さんが此方に顔を向ける。
「あ?」
その発言で土方さんも此方を向いた。
「何だ?目ェ一杯涙溜めて。ンなに旨いか?」
違ェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!
不味いんだよ不味い!!
何だ此の飴と鞭!!
いや、天国と地獄!!
鯛焼きのふわふわ生地に酸味の利いた脂物なんざ入れんじゃねェェェェェェェェェェ!!!!
「……土方さん、」
じたじたするあたしを目を凝らして見た沖田さんが、ふと口を開いた。
「あの鯛焼き、中身何ですかィ?」
「マヨネーズ。」
当たり前の様に言うんじゃねーコノヤロォォォォォォ!!
「あー……、可哀想に。」
「おい、総悟。何だ今の目。」
「大丈夫ですかィ?紅刃。」
「無視か。」
土方さんを一瞥した沖田さんがあたしの傍に来て背中を擦る。
うあああああっ!!有り難うぅぅぅぅぅ沖田さぁぁぁぁぁんっ!!
でものその前に袋くれェェェェェェェェェェ!!!!
しかし、相手は沖田さん。その優しさに浸る暇無く悪夢が訪れる。
「……紅刃、土方さんが鬼みてぇな顔して睨んでやすぜ。」
「……!!」
ごくん、
耳許で小さく囁かれた言葉にあたしは生唾を………例のアレごと飲み込んでしまった。
「ぎゃあァ゙あああ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙あ゙ア゙あ゙あ゙ァ゙あああっ!!!!ぅお゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!!!!不味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
喉元を押さえ付けて力の限りあたしは叫ぶ。
飲んじゃったぁぁぁぁぁ!!!!
マヨ鯛焼き食べちゃったぁぁぁぁぁ!!!!
「あはは。酷ェ顔。」
「沖田ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!何て事してくれたんスかぁぁぁぁぁ!!!!」
ニヤニヤする沖田さんに半べそかきながらあたしは食って掛かった。
「何でィ。俺に当たんのは御門違いだろィ?元凶を叩きなせェ。」
しゃあしゃあとほざく沖田さん。
言われてみればそんな気もするが、奢って貰った手前……
「鷹居、」
沖田さんの胸蔵を掴んだまま暫し考えてると、背後から殺気を感じた。
振り返れば口から邪気か何かが出てそうな土方さん。
「テメェ……不味いたぁ何だ不味いたぁ……」
「ひぃぃぃぃぃっ!!土方さぁぁぁぁぁんっ!!」
土方さんのその形相で条件反射的に土下座しそうになったあたしは途中でハッとした。
待て、紅羽!此処で謝ったらまたあの鯛焼きを食わねばならなくなるぞ!!
下げ気味だった頭を踏ん張って、眼前の土方さんと目を合わせた。
「ひ、土方さんだって悪ィんですからね!!神様みたいに見えたのに!!中身マヨネーズとか!!」
「あぁ?!鯛焼きの中身はマヨネーズだろーが!!ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ!!?」
「どっちがふざけてんスか!!?天国から地獄に突き落としやがってェェェェェ!!!堕天使か!?ルシフェルかアンタはぁぁぁぁぁ!!!」
「テメェェェェェ!!!黙ってりゃ言いたい放題言いやがって!!マヨ鯛焼きに謝れコノヤロォォォォォォ!!!!」
「謝るかぁぁぁぁぁ!!土方さんが謝れェェェェェ!!普通の鯛焼きに謝れェェェェェ!!!!鯛焼きは白餡だろうがぁぁぁぁぁ!!!」
「邪道だな、オイ!!」
「まぁまぁ、御二人さん、」
ぎゃーぎゃー騒いでると、何か一番原因だったような気もする沖田さんが仲裁に入ってきた。
「何だ総悟!テメェもマヨ鯛焼き虚仮にすんのかァ?!!」
「味方はしやせんぜ。だって不味そうだもん。」
「テメェェェェェェェェェェェ!!」
「っても、紅刃の意見もどーかと思いやすが。」
「えええええええ!!だって鯛焼きって白餡じゃねぇっスかぁ!!」
あたしらの抗議に沖田さんはやれやれ、と肩を竦め、人差し指を立てる。
「いいですかィ、土方さんに紅刃。鯛焼きってのは、鎌倉時代に魚好きの男と餡子好きの女が協力し合って考えたもんで………」
「「鎌倉時代に鯛焼きなんかねぇだろうがァァァァァァァァァァァァ!!!!」」
大江戸たいやき物語
「因みに俺ァ、中身、ずんだ餡派でさァ」
「「コアだな、オイ!!」」
fin.
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前身サイト12000打キリ番
依頼 侑子様
課題 沖田と土方 ギャグ
20080915
死ねば死に損生くれば生き得
御堂 篝 拝*