extra.11
「山崎さぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
「ん?」
俺を呼ぶ声に時計を見れば、8時過ぎ。
「……あ、今日ももうそんな時間か…」
さて、今日は何時まで付き合わされるのかな……
吐き溜めの特権
「聞いてくださいよ、ってか、聞けっ!!山崎さんに拒否権はねぇっ!!」
「のっけから酷い!!!!」
勢い良く俺の部屋の襖は滑った。
目を遣れば、案の定、立っているのは副長補佐の鷹居さん。
新隊士募集活動の時に、俺が男と間違って声掛けちゃったら、なんやかんやで男装しながら副長補佐やる事になった女の子。
「……で、今日はどうしたの?」
「どーしたも、こーしたもねぇですってっ!!あのマヨラーまたオレの誘い断りやがったんスよっ!!」
話を振ればズカズカと俺の部屋に侵入してきた。
……仮にも男の部屋なんだけどなぁ……。
てゆーか、この荒っぽい言葉遣いがナチュラルにハマってる辺り、俺が男と間違っても仕方なかったかなって思う今日この頃。
「また副長のこと?」
「オレが山崎さんトコ来て言う事が他にあると思います?」
「……ないよね。」
「流石。良く分かってらっしゃる。」
鷹居さんは頷きながらその場に腰を下ろす。
「ちくしょー、土方さんめ…。マヨラーの癖に…。此れで73回目っスよ!?断られんのっ!!」
「73回っ?!!…す、すごいね……。」
「いい加減しつけーとは思いますがね。」
苦笑いを浮かべて鷹居さんは言った。
……こうやって見ると、実は凄く美人な鷹居さん。
普通に女の子の格好したらきっと綺麗なんだろーな……。
何時ぞやの忘年会で鷹居のお兄さんが女装した時は似合ってたし。
「……〜で………聞いてます?」
「え?っ、うわっ!!?ご、御免、聞いてなかった……」
ボーッと考えてたら鷹居さんが身を乗り出して俺の顔を覗いた。ち、近くてビビった……
「だから、土方コノヤローが過剰なまでに嫌がりやがるんで、何としてでも連れてってやろーって思ってる訳っスよ、オレは。」
「へぇー……副長がねぇ…」
副長が鷹居さんの誘いを断るってーのは俄に信じ難いんだよね。
あの人無意識に鷹居さん意識してるみたいだし。
……口に出しては言えないけど。
「つーか此処まで来たら意地ですよ。いや、寧ろ土方さんの歪んだ顔が見たいとゆーか……」
「何その沖田隊長的発言っ!!!え?何っ?!鷹居さんもサディスティック星から来たのっ?!!」
「冗談ですよ冗談〜……26分の11くらい。」
「割り切れないっ!!ってか、若干本気の方が多くないっ!!?」
「あっはっはっはっは〜」
「副長ォォォォォ!!!逃げてくださァァァァァァァァァァいっ!!」
やっぱさっきの発言取り消そうっ!!綺麗だな発言!!
見た目そうでも実は腹ん中、真っ黒かもしれないよ、この娘っ!!そのお兄さんなんかは黒すぎてブラックホールだけど、流石兄妹だよっ!
「ま、それは置いといて。今度説得する時、山崎さんも一緒に頼んでくださいよー。」
「え〜…。副長相手に俺に何ができるって言うんだよー。」
「そーですね。何も出来ないですね。」
「即答っ?!!つーか、鷹居さんさぁ、何に誘ってんの?」
「…い、いや……あ、それはぁー……」
聞けば鷹居さんはいきなり吃りだした。
……な、何だろう?言うの恥ずかしい様な事なのか?
…………。
いやいや、まさか。この鷹居さんに限って……
「あ、あんまりデケェ声では言えねぇーんスけど……」
「う、うん……」
躊躇いがちに伏せた目を視線だけ上げて鷹居さんは言う。
てか上目遣いィィィィィィ!!!!
認めたくないけど、可愛い…っ!!
言葉遣いが粗っぽくなければ完璧なのに……って俺何ドキドキしてんのっ?!!
そんな俺の心中を知ってか知らずか、鷹居さんはゆっくりと口を開いた。
「………オレの行き付けのオカマバーです。」
「……………え?」
「オカマバー。かまっ娘倶楽部っての。」
「……………」
ぜ、前言撤回ィィィィィィ!!!!!
ちょォォォォォ!!!!!俺のドキドキ返してェェェェェェェェェっ!!!!!!
てか、かまっ娘倶楽部って前に旦那の身辺調査で行ったけど、寄りによってあんなゴツい店っ!!!!
「山崎さぁーん、戻ってきてください。」
「……あ、うん………てか、何で?何でオカマバー?」
鷹居さんの声に我に帰り再び質問を投げた。
「何でって言われても、ママさんが素敵な心意気持っててそれに惚れたんです。」
「……ほ、惚れた………。もしかして鷹居さんってオカマ好き?」
「まぁ、嘘とは言いませんよ。恋愛対象にはなりませんが。」
「そ、そうなんだ……。」
良かった……恋愛対象だったらどうしようかと思った……
「でさぁ、何で副長を連れてこうとしてんの?」
ホッとしたところで俺は話題を元に戻す。
てかオカマバーなら副長嫌がるよ。たとえ鷹居さんの頼みでもさぁ……
「え?ああ。それはですねー。土方さんが男前だからです。」
「それだけでっ?!!」
「あ、あと店に土方さんの大ファンがいるからですかね。てか皆イイ男大好きだから連れてきてーって言われてるんスよ。」
「そうなんだ……」
うわ、どうしよう。嫌がってる副長がリアルに想像できるよ。再現しろって言われたら出来るくらいリアルに。
「あ゙ー、もう何で嫌がんだよ、あのマヨラーっ!!!」
「……そりゃあ、嫌がるでしょ。」
「え?何でっ?!何がっ?!あ、もしや山崎さんもオカマバー無理とか言いますかっ?!!信じらんねー、あんな楽しいトコっ!!」
「いや、普通男は嫌がるよね?好き好んで行かないよね?」
「えー、勿体ねー。」
「だってさぁ、ゴツい野郎の女装でしょ?気持ち悪くない?」
「気持ち悪いぃっ?!!まさかっ!!皆綺麗な蛾ですよっ!!」
「褒めてないよね。それ絶対褒めてないよね。」
「そーだっ!!土方さん連れてく前に山崎さん連れてきますよっ!!そーだ、それいいっ!!」
「……え゙?」
手を叩く鷹居さんの発言に耳を疑った。
いやいやいや、まさか。まさかだよ。俺連れてくとか言ってないって。うん。
「山崎さん、何かオカマ受けしそうな顔だし、滲み出るジミーオーラがみんな母性本能擽りそうだしっ!!山崎さん行って土方さんに“楽しかったですよー”的な事言えば……うんっ!スゲェ!!我ながらナイスアイディアっ!!」
「オイィィィィィィィィィィィィっ!!全然ナイスアイディアじゃねーよっ!!!何その御試しで山崎いっとくか?的なっ!!」
「あ、今のトコ、母性本能にもツッコンで欲しかった。」
「ツッコミ評価すんなァァァァァァ!!!!新八君に言えっ!!俺には伝家の宝刀のツッコミなんてないから!!只の地味だからっ!!…あ、自分で地味って言っちゃったっ!!」
「いいじゃないですかー。生まれて以来モテ期なんざ経験した事ねーって顔に書いてありますよ。店行ったらヤバイですから。モテモテ(死語)ですから。」
「男にモテてどうすんだよっ!!!兎に角!俺は行かないからねっ!!」
暢気に返事をする鷹居さんに俺は叫んだ。
肩で息しながら、鷹居さんを見れば、にっこり笑い、
「何言ってるんスか?さっきも言ったじゃないですか、山崎さんに拒否権はねぇ。」
「……え?」
それはそれはバックに閣下でもいるんじゃないかってくらいのオーラを醸して言った。
「嫌がろーが何しよーが、連れてきますから。つーかもう予約したし。」
「え?う、嘘、…だよね?冗談だよね?」
「100%本気ですが。」
「………い、いやいやいやいや、無理無理無理無理無理。行かないよ。俺行かないよ。てか鷹居さん未成年でしょ?そーゆー店入っちゃ駄目でしょ?」
「かまっ娘倶楽部に年齢制限ありませんから。ジュースも出るし。」
「そうじゃなくてさ。駄目だよ。未成年が夜の繁華街なんか。」
「だから、山崎さんが保護者ですよ。」
「……え?」
全力でオカマバー行きを拒否してたら、思いがけない答えが帰ってきて、語勢を弱めてしまう。
「な、何?どゆこと?」
信じられない返答に俺は半信半疑に聞き返した。
俺が保護者って……?
「未成年だから二十歳以上の保護者がいないと遊び行けないんです。だから頼んでるんじゃないですか。」
「な、何で俺…?局長とか他にも二十歳以上いるのに…何で俺?」
「役職上一番信用してんのは土方さんですが、そこが潰れたら山崎さんが信用できるからですよ。」
「……うそぉ…」
言って無邪気に笑う鷹居さん。……反則だ、そんな台詞の後に微笑むなんて。
嬉しすぎるじゃないか。
「マジですよ。つーか知らなかったんスか?オレがこーやって愚痴るのだって山崎さんだけですからね。絶対他言しねーから。」
意外そうに鷹居さんは頭を掻いた。
……初耳だ。沖田隊長とかにも言ってそうなのに。
「だから、連れてってくださいよ!今度の非番、1日ミントンにでもカバディにでも付き合いますからっ!」
このとーりっ!と顔の前で手を合わせて肩を竦めた鷹居さん。
何とも男らしい御願いの仕方に笑えてしまう。
だけど、
「………仕方無いなぁ。今回だけだよ。」
「やったっ!!!」
「次の非番、ちゃんとミントンの相手してね。」
「分かってますってっ!!キャホォォォ!!店行くの久し振りっ!!」
重かった腰を上げれば、鷹居さんは子供みたいにはしゃいだ。
吐き溜めの特権
僕しか知らない君の愚痴。
「それにほらっ!ママ達はオレ女だって知ってるから、他の人だと、彼氏?とかって言われますし!その点、山崎さんは安心っ!」
「……そ、そう……………」
fin!
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前身サイト伍阡打多謝企画
依頼 ユリカ様
課題 山崎 ギャグ甘
20080613
死ねば死に損生くれば生き得
御堂 篝 拝*