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2008年2月
零時弐分のバレンタイン
深夜、部屋で総悟が放り出した仕事を片付けていると、襖挟んだ隣の部屋から物音が聞こえた。
がさっ…
「……鷹居、起きてんのか?」
「あ、バレた。」
襖が少し開いて音の主が顔を出す。
「あのな、割りとデカイ音だったんだぞ。バレねー訳あるか。」
「あはは。そっすね。」
「起きてんだったら手伝えや。副長補佐なんだろ、お前。」
「あいあい。分かってますよ。今行きますんでちっと待ってて下さい。」
めんどくせー、とかほざきながら鷹居は顔を引っ込め再びがさがさやり始める。
がさがさっ……
「あ、やべ。剥がれた。」
小さいが何か呟いてるのも聞こえた。
「(………何やってんだ?あいつ)」
不思議に思ったが取り敢えず無視して筆を進める。
暫くして鷹居は、寝巻き(紳士用着流し)に制服の上着を羽織って副長室に入ってきた。
「い゙〜〜さぶっ。布団の外は寒くて敵わねぇ。」
「オッサンかオメーは。」
「あはは。時に土方さん。今日が何の日か御存知ですか?」
「あ?今日か?……特に何もねぇだろ。2月13日は。」
「土方さん、土方さん。時計を確認して下さい。12時回ってますよ。」
「あ?……本当だ。じゃあ14日か………ちっ、忌々しい日だ。」
「やっぱそう言うと思ってましたよ。ニクいね〜、色男!!モテる男にゃ、バレンタインなんざ忌々しい以外の何でもねーですもんね!!」
「で、この忌々しい日がどうしたってんだよ。」
「はーい。よくぞ聞いてくれました!!そんな忌々しい日がほぼ始まったと同時に忌々しい物を差し上げまーす。」
「は?」
視線を書類から外して顔を上げれば、鷹居が嫌な笑みを湛えながら俺の眼前に小さな箱を差し出した。
「………なんだ、コレ。」
「本年の忌々しい第一号ですね。」
「いやいや、そうじゃなくて。何で俺?」
「何時も御世話になってますから。……あと御詫びの意味も込めて。」
「詫び?」
「……まさかこないだマヨ隠したのオメーか?」
「あ、それは違います。あれは沖田さんがやってました。……あ、やべ、言っちゃった。」
「野郎………。で、詫びって何だ。」
「え゙…。聞くんですか?」
「まぁ気になるからな。」
「………(兄が貴方の財産、収入を狙ってて御免なさい、何て言えない……)まぁ、色々です。」
「…………へェ。オメーは上司に隠し事できるような御身分なのか?」
「滅相もない…」
「………言わねぇと襲うぞ。」
「いやいやいやいや!!なぁに仰るんですかっ?!(それこそ兄者の思う壺っ!!可哀想なのは貴方ですよ?!)あー…えーっと……大したことじゃないんですけど、土方さんのライターなくしちゃったのあたしですー…(嘘ではない。兄者から来た変な服燃やしてたら一緒に燃えたんだから……)」
「ライター?……ああ、あれか。ねーと思ってたらオメーかよ。」
「あはは、すんませーん。で、御詫びも一緒にバレンタインです。」
鷹居ははにかんで頭を掻いくと、箱を少し俺の方に近づけた。
俺はその箱をじっと見詰める。
中に入ってんのはきっと、今日と同じ位忌々しい“ヤツ”の好物。
「……チョコレートか?」
「そーですが、そこまで甘くないですよ。カカオ87%でポリフェノールたっぷり。」
「ふーん……ま、貰っといてやるよ。」
「どーもです。やー、助かりましたぁ。礼儀だから誰かにやれーって兄者が五月蝿くて。男として働いてんのに誰にやれって話だよって感じですよねー。」
その言葉につい反応してしまった。
「………鷹居、ひょっとしてお前、……渡すの俺だけ?」
「?そっすよ。昼間渡してたらホ●だと思われるじゃないっすか。」
「………そうか。」
「さー、じゃんじゃん検印押しますよー!!あたし夜行性なんで夜は元気ですからっ!!」
「ああ、頼むわ。」
零時弐分のバレンタイン
社交辞令だろうが何だろうが“俺だけ”って事に何故か優越感を感じちまった……
どうしたんだ、俺───