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2008年3月
弐拾参時伍拾参分のホワイトデー

「土方さーん、オレちょっと出掛けますー。」

市中見廻りから屯所に帰って、敷居も跨がないうちに鷹居が言った。

「あ゙?いきなり何だ。」

「や、あの…ちぃーーーっと用事を思い出しましてね。夕飯までには帰ってきますんでっ、すんませんっ!!」

「あっ!!おいっ!!」

曖昧に答えた鷹居は俺が許可してもいねぇのにあっという間にどっかに走り去っていく。

「……何なんだよ。」

「フラれやしたね、土方さん。」

懐から煙草を出して火を点けると、総悟が嫌な笑みを浮かべて屯所から出てきた。

「……総悟、テメェ、いつからいやがった。」

「土方さーん、からでさァ。」

「最初からじゃねーか。」

大袈裟に溜め息を付き、点火した煙草をから紫煙を燻らす。

「…っとに、アイツは何考えてんだか。」

「何処に行ったんでしょーかねィ?」

「さぁな。」

「………」

「………」

「…土方さん、ちっと散歩にでも行きやしょうよ。」

「なっ?!おま、まさか……!」

「だって気になりやせんか?今日の日が日だし。」

「?」「しゅっぱーつ!!」

「お、おいっ!!俺を巻き込むなっ!!」

俺は総悟に引き摺られて、鷹居が走り去った方へと向かわされた。

……やれやれ、だ。

*****

「はい。コレあげる。*

「!!いいのか、紅羽っ!?」

「まぁ、わざわざこんな……」

途中で鷹居に追い付き、後をつけて着いた先は恒道館道場。
ってか、これストーカーじゃね?!やってる事近藤さんと同じじゃねぇかっ!!

「気にすんなって。二人には何時もお世話になってんだから!!その気持ちっ!!」

「しかし、僕は紅羽にチョコをあげていないぞ…。それなのに。やはり僕は受け取れない。」

「私もよ。気持ちは嬉しいけど…。」

「あ〜っ!!だったらさ、来年!!来年くれたらいいからっ!!せっかく二人の為に作ったんだ……、受け取って欲しいよ。」

「紅羽…」

「紅羽ちゃん…」

流石に中には入れねーから、門前で、鷹居たちの会話を聞いてるんだが……何だ?何の話なんだ?

「分かった。では今回のこれは有り難く頂くとするよ。その代わりに来年は僕からもきっと持っていくぞ!!」

「有り難う!!きゅーちゃんっ!!」

「私も。来年は腕に寄りを掛けて、おっきなケーキを作っていくわ!!」

「妙ちゃんっ!!有り難う!!でも気持ちだけでいいからっ!!出来れば市販でお願いしますっ!」』

「あら、そう?きっと美味しいわよ。」

「ははは……。あ、じゃ、オレはコレで!!」

「もう行くのか?」

「折角来たんだもの、ゆっくりしていって頂戴よ。」

「あ、うん。ありがと。でも貰った子達に返さなきゃだからさ。」

「律儀だな。紅羽は。」

「その気があると思われちゃうわよ。」

「あはは…。社交辞令だよ社交辞令。じゃーねっ!!」

あ、やべ。こっち向かってくるっ!!

「土方さんっ!!急ぎやしょう!!」

「ああ、」

総悟に促され、俺達はそそくさと門前を離れる。……って、ホントにストーカーじゃねーかァァァァァァ!!

鷹居は門から出ると俺達の居る方とは逆の方向へと駆けて行った。

一先ず胸を撫で下ろすと、不意に総悟が口を開く。

「……今日、ホワイトデーでしたねィ。」

「あ?ホワイトデー?」

「バレンタインのお返しの日でさァ。」

「…あ〜」

「まぁ、紅刃から貰ってりゃ別ですけど、俺等にゃ無縁の話ですねィ」

「…そーだな。」

帰ろ帰ろ、と言って俺の前を歩く総悟の後を追うように俺達は帰路に着いた。


…そういや俺、鷹居から貰ったな……バレンタイン。

*****

その晩は近藤さんがキャバクラから帰ってこない為、滞っていた仕事を始末していると、襖を挟んだ隣から、妙な音が耳に入った。

「ゔ〜〜〜。」

「鷹居……?お、起きてんのか?」

声を掛けるも返事はない。

……おいおいやめてくれよ。俺こういう系苦手なんだよ。
いや、別に怖い訳じゃねーよ?そんな事は断じてないぞ。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」

「っ!!!」

いや、まさか。有り得ない有り得ない。俺は霊なんざ非科学的なもんは信じねぇ……。

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「い゙っ!!?」

…た、多分、鷹居の寝言か何かだって。
そうだ。そうに決まってる。
俺は悪夢に魘されてんなら、起こしてやるのが親切だと、起こして仕事手伝わせたろうと、鷹居が眠るであろう隣の襖に手を掛けた。

別に怖いからこの声の正体ハッキリさせてやろうとしてるとかそんなんじゃねーぞ!!

俺は出来るだけ音を立てずに襖を滑らせた。

スッ、

「……鷹居?」

「づぁぁぁぁぁ、ご、ごめっ……すんませ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」

部屋を覗けば、予想通り鷹居が魘されている。
……なんか、謝ってるんですけど。

「すんま、せ……あぁっ!!や、まじ……うぁ……やめてくださ……!!」

……どんな夢見てんだ…。くぐもった声だが台詞だけだと怪しいぞ……

あ、そういや、今日ホワイトデーだったな。
やべ。鷹居に何も返してねーや。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「うぉあっ!!?」

「それだけは…かんべ、ん……ムニャ……」

ビビった……。
いきなり叫んだよ、こいつ。
起きてんじゃねーのか?
近付いて顔を覗いてみる。…大丈夫だ。寝てる。眉間にめちゃくちゃ皺寄ってっけど、寝てる。

「今月……の……小遣い……」

「は?」

「兄…者……たの、む…それだけ、は……」

……小遣い取り上げられた夢か?それで唸ってんのか?

「ふっ……」

やべ、かなりウケる。こいつどんだけだよ。

「まだ、……にしゅうか…んも…うぅ……」

笑いを堪えつつ、俺は部屋に戻った。小遣い取り上げられた位で夢で魘されるもんか?
ホント、何考えてんだか分かんねぇやつだ。

「……あ。」

ふと時計を見れば、23時53分。
もうすぐ今日が、3月14日が終わる。

「……ホワイトデー、やってねーや。」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!兄者っ!!あたしの貯金っ!!!」

「………」

寝言とは思えないヤツの叫びがまた耳に入った。

「………そうだ。」

俺は机の引き出しから茶封筒を取りだし、筆を走らせる。

「(……これぐらいしかできねぇが、無いよりマシか。)」

封筒に数枚の、今鷹居が求める紙を入れて、枕元に置いてやった。





「ひひひひ土方さぁぁぁぁぁんっ!!今朝起きたら枕元に此れがっ!!なんすか此れっ!!?」
「あ?2月14日の仕返しだ。テメーが今一番必要なモンだろ?兄者に取り上げられて。」
「なっ?!何故それをっ…!!」
「昨夜魘されてたぜ。」
「!!!」

END

現金返しはどうかと思います…

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