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2008年4月
第二回陣地争奪
青空。
過ごしやすい気候。
満開の桜。
その下にまた別の花を咲かす男女が一組……
「……鷹居、何でお前はそっちサイドなんだ?」
『今日は非番で妙ちゃんに誘われて花見に来たからです。』
そう、陣地争奪の火花を咲かす…元い、散らす真選組の上司と部下。
第二回陣地争奪
「てめぇ…俺らの誘い断っといて、そいつらと花見たァ、どういう了見だ?」
「フラれたからって俺達に文句つけんなよ、多串くん。」
「オメーにゃ聞いてねーんだよっ!!黙ってろっ!!」
茶々を入れる坂田さんを土方さんが怒鳴った。
「今年の初めぐらいに妙ちゃんに花見は一緒に行こーって誘われてたんで。」
「今年の初めっ?!早ェな、オイっ!!!」
「ま、そんな訳で。真選組の皆さんは他所で花見て下さいよ。」
しれっと言えば、土方さんの目元がピクリと動く。
あ、ヤバイか?
「お、紅刃。今日は自棄に攻撃的ですねィ。」
しかし、土方さんが利き手を柄に添える前に、沖田さんが身を乗り出してあたしに言った。
「妙ちゃんいますし。つーか、皆さん酒が飲めりゃ何処でも良いんでしょーが。」
「言うじゃねぇか。ま、確かにそうですがねィ。」
花なんざ誰も見やせんぜ、と続けて言う。
「じゃあいいじゃないですかー。」
「ふざけんな。大体山崎はどうしたんだ?場所取りに行かせた筈じゃねーのか?!」
「山崎さんならミントンしてたんで、なんとなく殴っときました。」
3メートル位先で事切れている山崎さんを指差しあたしは言った。
「そうか、……って、オイィィィィィィィィィィィィ!!!おまっ、何してんのォォォォォォっ?!!」
「あ、ノリツッコミ。」
「やかましわっ!!」
「まぁまぁ、トシ、紅刃くん。その辺にしといて。」
あたしと土方さんが言い合っていると近藤さんが割って入る。
「あんたらには悪いが、こっちも年中行事でな。おいそれと変更できん。悪いがお妙さんだけ残して去ってもらおーか。」
「いや、お妙さんごと去ってもらおーか。」
「いや、お妙さんはダメだってば」
「いや、…って、アレ?なんか聞いた事あるぞ、この件(くだり)?」
またデジャブですか、あんたら。
てか、何今の文句。
もう既にチンピラだよ。
チンピラ警察の警察とれちゃったよ。
そんな事を考えてると、坂田さんが柄悪そうに口を開いた。
「何勝手ぬかしてんだ。幕臣だかなんだかしらねーがなァ…」
あ、何か喧嘩勃発っぽい。殴り合いだったら混ぜて欲しいな。
「俺達をどかしてーなら、ブルドーザーとロードローラー持ってこいよ。」
「ハーゲンダッツ3ダース持ってこいよ」
「フライドチキンの皮と唐揚げの脂身部分持ってこいよ。」
「あ、案外簡単に動くな……」
「ちょっとォォォ!!こないだよりなんかランクアップしてるけどっ!!それ問題じゃないからっ!!!」
「では花見らしく、第二回陣地争奪叩いて被ってじゃんけんぽん大会と洒落込みましょうか。」
ん?今までにない口調が割り込んできたぞ?
声の方に振り替えれば、あたしらが敷いた敷物の上に正座して、人差し指を立てる……
「兄者ァァァァァァァァァァァっ?!!な、何やってんスかっ?!何でちゃっかり居るんですかァァァァァァっ?!!」
にっこり微笑む金の亡者が居た。
「いやぁ、土方さんと紅刃の声が聞こえたので吹っ飛んできたんです♪」
「きたんです♪じゃねーよっ!!」
「お花見の陣地争奪と言えば叩いて被ってじゃんけんぽんですから。あ、私も参戦したいでーす。」
挙手して言う兄者。
もう、つく溜め息もないよ……。
*****
「えー、勝敗は両陣営代表3人による勝負で決めたいんですがー…前回アレだったので、真面目に勝負できてない副長と万事屋の旦那、あと、鷹居さん兄弟でしてもらいますが……いいですかね…?」
半ミイラ状態で成り行きで司会進行やってる山崎さんが、あたしらに尋ねる。
「っつても、オレは前回知らないし。」
「私は意義ありませんよ。」
「……しゃーねーな。」
「めんどくせーなぁ、オイ。」
「はは…。えと、審判は前回同様公平を期して俺と新八君がします。勝った方はここで花見をする権利+お妙さんを得るわけで……」
「だからなんでそんな山賊みたいなルールにすんのォォォォォォっ?!僕らプラマイゼロじゃないですかっ!!」
「ダメガネ、山賊じゃねーよ。チンピラだよ、チンピラ。」
「鷹居さんんんんんっ?!!そこ問題じゃないからっ!!てか、アンタ、自分の就職先に何て事言ってんのっ!!!」
うん、ナイスツッコミだぜ、ダメガネ。
それでこそボケ甲斐があるってもんだ。
ま、それは置いといて。
確かに山賊みたいなルールじゃフェアじゃないよな。あたしら(万事屋サイド)が勝ったら真選組から酒一本とか?
そんな事を考えていると、隣で坂田さんが挙手した。
「はいはーい。俺等が勝ったら、紅刃くんの勤務先を俺ん所に変える事を提案しまーす。」
「ハァっ?!坂田さん、何言ってるんですかぁっ?!!」
「調子ン乗ってンじゃねーぞ、万事屋。」
「そうですよっ!!そう簡単に紅刃の一生は決められません!!月給は幾らですかっ!!?」
「そこかァァァァァァァァァァァァっ!!!!」
高かったらアンタ故意的に負けるつもりだろっ?!
そうなんだろォォォォォォっ?!!
「えーっと……。先に進まないんで取り敢えず、そーゆー事にして…、2対2なんで、勝敗がつかない場合は4人一斉サドンデスになります。」
「待てェェェェェェっ!!オレ賞品は無しだろォォォォォォっ!!!てか何だよ4人一斉サドンデスって!!叩いて被ってじゃんけんぽんで4人一斉サドンデスなんざ聞いた事ねーよっ!!!」
「黙りなさい、紅刃!!万事屋の月給は仕事次第だそうですが、貴方には特別手当てを出して下さるそうですっ!!」
「何ちょっと惹かれてンだよアンタはァァァァァァァァァァァ!!!」
斯くして、第二回陣地争奪叩いて被ってじゃんけんぽん大会が始まったのだった………
「それでは一戦目っ!!黒刃さんVS万事屋の旦那!!」
山崎さんの威勢のいい声で開幕した第一回戦。
上にヘルメットとピコハンが置かれた粗末な段ボールに兄者と坂田さんは対座する。
「お手柔らかに頼むぜ、お兄さん。」
「勝手にお兄さん呼ばわりしないで下さい。今考えたのですが、やはり安定した高収入でないと困るので、負ける訳にはいきません。」
「えっ?!態度急変っ?!!いきなり酷くないっ!!?」
突然冷酷この上無い視線を発した兄者に坂田さんがたじろいた。すんません、坂田さん。兄者はこーゆー奴なんです…。
「えーっと、じゃあ行きますよー…」
変なオーラ(お金大好きオーラ)を出す兄者にビビりながら山崎さんが音頭を取る。
「はい、せーの、…叩いて、被って、じゃんけんぽんっ!!」
兄者→パー
坂田さん→グー
「ヤベッ!!」
「頂きィィィィィィ!!」
両者それぞれを手にするが、坂田さんのが一瞬早く、頭にヘルメットを被せた。
のだが、
「あっぶねー、ギリ……」
メシャァッ!!!
「…ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
ピコハンのハンマーを持った兄者が、それを縦にして坂田さんの顔面を突いた。
「ちょっ、何すんのォォォォォォっ!!?」
「頭隠して尻隠さず、とは正にこれです!!攻撃が上からだけとは限らないでしょうっ!!!?」
「いや、基本上からだからっ!!ルールだから!!」
「行儀良く真面目なんてクソ食らえと思いますっ!!!」
「何それっ?!尾崎ィィィィィィ!!?」
あー、もうダメだ。勝つ為には手段を選ばないからな、兄者は…
「………山崎さん。今の無効でいいですよ。」
「そ、そうだね…。じゃあ、次で。第二戦!副長VS鷹居さーん!!」
「行くネェェェェェェ!!紅刃ーーーーーーー!!!」
「死ねェェェェェェ!!土方ァァァァァァァァァァァ!!!」
「総悟テメェェェェェェェェェ!!!」
声援(?/いや、少なくともあたしは)を受けて例の段ボールにあたしと土方さんは対座した。
「鷹居。俺に勝ったら、公衆の面前でアレだからな。」
対座するなり、土方さんが口を開いた。
「何スかそのヤらしい言い回し。つーかアレって……、!」
アレってアレかっ?!!3回 回ってわん、かっ?!!
ヒクつくあたしの頬に気付いたのか、土方さんの顔が楽し気に歪む。
「卑怯だ、卑怯っ!!!!職権乱用っ!!!鬼上司っ!!」
あたしは立ち上がって抗議を開始した。
「オメーが負けりゃ良い話じゃねーか。」
しれっと答える土方さん。
「負けるかァァァァァァ!!オレはそんな卑怯なモンに負けねぇですからっ!!!」
「あン?じゃあ何か?オメーはアレやんのか?それで今後、やってけんのか?」
「っぐ!!」
畜生ォォォォォォ!!
人の弱味に漬け込みやがってェェェェェェ!!!
見てろよ、ニコ中めっ!!
一回でカタ付けやるっ!!戦闘不能にしてやるっ!!
「え、えーっと、じゃあ行きますよー…」
今にも噛みつきそうなあたしにたじろいて再び山崎さんが音頭を取る。
「はい、せーの、…叩いて、被って、じゃんけんぽんっ!!」
あたし→チョキ
土方さん→グー
「しめたっ!!」
「させぬわァァァァァァァァァ!!」
コンマ差でヘルメットを早く被ったあたしの頭にピコッ、とハンマーが当たった。
「食らえっ!!ヘルメット返しっ!!」
「は?何言っ…ぐはっ!!!?」
あたしは被ったヘルメットをそのまま土方さんの顔面目掛けて突き返す。
見事なまでのクリーンヒット。
「割れたァァァァァァァ!!!てめっ、これ顎、絶対割れたぞっ?!!」
「メモが挟めて便利じゃないですか。」
「挟めるかァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
ギャーギャーと始まる抗争を山崎と新八は静かに見詰めた。
「……また決着つかなかったね…。」
「……そうですね…。」
「お互い、妙な仲間ばっかで大変だね。」
「まったくです……。」
「……飲もうか、愚痴を肴に。」
第二回陣地争奪
それから暫く、あたしと兄者は暴力凶暴反則兄弟と呼ばれた。
END.