act.5

屯所とやらに向かう車の中、同乗した爽やかルックス君が事の次第をゴリラ近藤さんから聞き、口角を上げた。

「へェ……あ、俺ァ一番隊隊長の沖田総悟でさァ。さっきの騒ぎ、あんたが起こしたそうじゃねぇですかィ。」

「まぁ…不可抗力と言いますか…。」

「面白ェ。近藤さん、俺ァ コイツ気に入りやした。配属は一番隊で御願いしできやせんか?」

突拍子のない爽やかルックス沖田さんにゴリラ近藤さんは苦笑いを浮かべた。


act.5
問答無用で斬る。


「さぁ、着いたぞ、紅刃君。」

近藤さんに声を掛けられ、車を降りる。
眼前には道場のような立派な門。向かって右側に下げられている看板には"真選組屯所"と達筆で書かれてある。

「でけぇ…」

「何やってんでさァ、さっさと入んなせェ。」

唖然と見上げてると、沖田さんに頭を小突かれた。

「もたもたしてると置いてきますぜ。」

「ってぇ……あ、待って下さーい!」

結構強く小突かれ微妙に痛い後頭部を擦り、あたしは、ポケットに手を突っ込んで歩く沖田さんの背を追う。

「此処でさァ。」

局長室、と札の付いた部屋の前で沖田さんは止まった。

「取敢えず此処で手続きをしてもらいやす。しつれーしやーす!」

「失礼しまーす!」

「おー!此方だ此方!!」

引き戸を開けると、中には近藤さんと土方さん。(…いつ帰って来たんだ、という突っ込みは置いといて、)近藤さんが手を挙げてあたしらを呼ぶ。

「じゃあ、此の書類に記名して。あ、あと身分証明も出してくれ。」

「あい。えーっと…運転免許で……」

良くないっ!!
考えてみりゃ、運転免許は本名じゃねぇか!!

どうする!!どうするどうするどうするどうするどうするどうするッ!!!

「何やってんだ、さっさと出せ。」

ギャァァァァァァ!!土方さぁぁぁぁぁぁぁン!!睨まないで下さァァァァァァァい!!

「わ、分かってますよ…えっと…」

懐に手を入れ、探す様に動かす。勿論、免許やら保険証やらは入っている…だが、名前が…

ッく…こうなりゃ自棄だ!!

「あ、あれ?…あ、スンマセ〜ン、車、滅多に運転しねぇんで、免許 家に忘れてきましたぁ〜」

「え?保険証とかは?」

「何時も財布に入れとかないんスよ〜」

かなり苦しい言い訳だが、なんとか切り抜けてくれ!!
すると、近藤さんは首を傾げる。

「そうかァ…じゃあ明日…」

「駄目だ。」

「トシ!!」

「只でさえ素性が知れねェのに、身分証明のねェ野郎を易々と隊士にすんのか?俺は反対だ。」

うぁ、御尤もな意見だよ、副長様。でも、今は素直に頷けない。
あたしだって生活がかかってるんだ。

「確かにそうだが…」

近藤さんは腕を組み、うーん、と唸る。

ヤバい…
でも、此処まで来て、諦めるなんて御免だっ!!

頼む!!近藤さんっ!!何とか土方さんを納得させてくれっ!!
ゴリ…じゃなくて、神にもすがる思いでいると、背後から声がした。

「じゃあ、こんなんはどうでさァ?」

「「総悟。」」

沖田さんだ。
あたしら3人の視線が自分に集まったのを見て、沖田さんは、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべて、言葉を続けた。

「俺達の中から1人出して、そいつと真剣で勝負させるんでさァ。」

何?!

「総悟!それには危険が伴うじゃないかっ!!俺ァ、これ以上隊士が減るのは御免だっ!!」

近藤さんが素早く言い返す。

「心配いりやせんよ。俺が相手しますから。一本でもとれたら入隊許可しやしょうよ。土方さん、こいつに真剣用意してやって下せェ。」

ニヤリと笑って沖田さんは土方さんに目を遣った。
そして暫し睨み合う。

「…分かった。」

「トシっ?!」

土方さんがそう返事するまで然程時間は掛からなかった。
返事をすると、近藤さんの声は気にも止めず、そのまま出ていってしまった。

「え、ちょ!トシィィィィィィィ!!?」

近藤さんは慌てその後を追っていき、あたしと沖田さんが局長室に残された。

一連の出来事に呆気にとられているあたしに、沖田さんが此方に足を進める。

「中庭で勝負するんで案内しまさァ。」

「…はぁ」

付いて来いという催促に従い、部屋を出て、中庭に向かうであろう沖田さんの後を追った。

*****

「ここでさァ」

暫く歩くと、大分開けた場所に出た。
恐らく、練習場か何かだろう、中庭と言うよりは空き地に近く、こざっぱりしている。

「鷹居はここで待ってて下せェ。俺も準備してきますから。」

「あ、はい」

返事をすると沖田さんはにっこりと笑って踵を返した。

「…………。」

「!!」

すれ違い様に耳打ちされた言葉に思わず背筋が伸びる。
バッ、と振り返ると沖田さんは「じゃっ、」と短く言って、軽く手を挙げた。

*****


「総悟。」

「土方さん。何ですかィ?」

俺が自室で刀の準備をしていると土方の野郎が部屋に入ってきた。

「テメェ、一体どういう心算なんだ。」

訝しげに俺を睨む。
俺は口角を少し上げて、眼前の土方コノヤローに答えてやった。

「どうもこうもありやせんよ。鷹居って言いやしたか、アイツ。面白ェ奴ですが、土方さんの言う通り怪しい奴には変わりねェ。もしアイツがテロリストだったら、俺らは邪魔者以外の何者でもねぇだろィ?真剣勝負させりゃ、本気で斬り掛かってくるんじゃねェですかね。」

「分からねぇぞ。」

「どうでしょう。罠かも知れねェこんなふざけた企画に参加するんでさァ、どうせ相手は下っ端か、ちっと頭の足りねェ奴ですぜ。俺らがこんな事考えてるなんて、毛程も思ってませんよ。」

「随分な自信だな。…まぁいい。で、どうやってテロリストかそうじゃねェか調べんだ?」

「……勝負の最中で見極める、と言いてぇが、そうも言ってらんねェ。此方も命張ってるんですからねィ。善良な市民様だったら申し訳ねェんですが、身分証明持ってねェのに来たアイツもアイツだ。その時は……問答無用で斬る。」

俺が応えると、土方の野郎は満足したように口角を上げた。

「…ならいい。」

*****

中庭に1人残されたあたしは縁側に腰を下ろし、空を見上げた。

先程の沖田さんの言葉が脳髄の奥に突き刺さる。

「手加減はしやせんぜ。…覚悟しとくんだな。」

本気でいかないと、確実に殺されるな…。大分疑われてる。
さて、どうやって一本取るか…。

To be continued……

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