chap.2
「いやぁ、久し振りだねー!紅羽ちゃん!元気だったかい?」
「……ウホ」
「え?ウホ?……アレ?何かコレ前にもあったよね?何コレ?デジャブ?」
「あはは、冗談ですよ。●ネゴリ君。」
「エ●ゴリ君じゃないから。エネルギーは素敵に使って欲しいけど、俺、エネゴ●君じゃないから。」
chap.2
全員纏めてハンバーグ
襖の下のペーパーヤマザキ(マ●オ的な)を救出したあたしは現在、局長室にてエ●ゴリ君、否、局長と対面している。
「え?何?もしかして紅羽ちゃん俺の名前忘れちゃったとか?」
「そんな訳ないじゃないですか、悟利羅勲局長。」
「忘れちゃってるよね?絶対忘れちゃってるよね?つーか何でそっち知ってんの?柳生編の時、紅羽ちゃん居なかったよね?」
「あれ?そうでしたっけ?」
「紅羽ちゃん、もしかしなくても俺の事嫌い?」
「…………さぁ?」
「嫌いなんだ。紅羽ちゃん俺の事嫌いなんだ。」
あたしが、意地悪く小首を傾げれば、近藤さんは胡座を崩し、体育座りで小さくなってしまった。
あ、コレ面白いな。
「鷹居、近藤さんで遊ぶな。」
「あてっ!?」
そんな事思ってたら、隣から溜め息に続いて、平手が後頭部目掛けて飛んできた。
スパンッ、と良い音がする。
「いってぇーっ!何するんスか土方さんっ!!」
言わずもがなその平手は土方さんの物で、あたしは後頭部を押さえてそっちを睨んだ。
「こっちが聞きてぇよ。放っといたら、話が進まねぇだろーが。」
「だからって叩く事ないじゃないッスか!!スパン言いましたよスパン!!本気で叩いたでしょっ!?」
「いや。鷹居の頭が空なんだろ。」
「いぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!腹立つぅぅぅぅぅっ!!!」
正座中故、地団駄は踏めず、畳に拳を叩きつける。
何なんだよ一体!!
あたしが何をしたってんだっ!!
意地が悪いにも程があるだろうが……っ!!
そんなあたしとは裏腹に変わらず紫煙を燻らす土方さんに殺意が湧いて、手近にあった灰皿を顔面に投げ付けた。
「!?っぶねっ!!なにしやがんだテメェ!!」
「いてっ!!?」
しかし土方さんは器用に灰皿を躱し、それは後に控える山崎さんにクリティカルヒットする。
踏んだり蹴ったりだな、山崎さん。
「っち、仕損じた。」
「オイ。お前何時からそんなキャラになった?何時から総悟2号みたいなキャラになった?こっち向けコラァァァァァァァっ!!!!」
目的の物に当てられず、あたしは顔を背けて呟いた。
が、その言葉が土方さんに聞こえてたらしく、頭を鷲掴みにされて、向きを矯正される。
「あででででででっ!!首回ってるっ!!首回ってるぅぅぅぅぅ!!!」
「性格矯正された割には態度悪くなってんじゃねぇか!?誰の御陰で再入隊出来たと思ってんだ!!」
「将軍。」
「よーし、分かった。俺が介錯してやる。切腹しろォォォォォォっ!!!」
「何スか、それっ!?理不尽極まりねぇっ!!」
「まぁまぁ。紅羽ちゃんもトシも、落ち着いて。」
もう既に小学生の喧嘩みたいなレベルの言い争いに、何時までも体育座りしている訳にはいかないのか、得意の御節介発動なのか近藤さんが仲裁に入る。
「……っち、」
「あーうー…首いってぇー…。」
流石に局長直々に仲裁に来られたら、小学生の喧嘩みたいなのを続行する訳にはいかず、土方さんは手を放した。
マジで首が痛いんだけど。
今なら梟顔負けなくらい首回転が出来そうな位痛いんだけど。
「しかし、紅羽ちゃんは相変わらずだね。」
「あえ?」
顎と頭の天辺に手を当て、首をゴキゴキ鳴らしてると、近藤さんが微笑んだ。
「どゆ事ですか?」
「トシ相手にそんな口を叩けるのは総悟と紅羽ちゃんくらいだよ、ホント。」
「………嫌味ッスか?」
「違う違う!物怖じしないって褒めてるんだよ!!」
眉間に皺を寄せて問えば近藤さんは慌てて補足する。
「どーも貶されてる様な気がする…。」
「んな事ァねーよ。」
「土方さん?」
首を傾げれば、隣の土方さんが不意に口を開いた。
「鷹居が物怖じしねーのは事実だし、実際、俺にンな口利くのは隊内じゃテメェと総悟だけだ。」
仏頂面に拍車を掛けた不機嫌な顔で土方さんはそう言うと、懐から煙草を取り出す。
さっきのは吸い終わったんだろうか……。早ぇー…。
「……じゃー褒め言葉として貰っときます。」
少し間を開けて近藤さんにそう告げると、何処かほっとした様に胸を撫で下ろしてた。
仕事中はまだしも、こんなんじゃ威厳も糞もあったもんじゃねーよ。
しっかりしろ、局長!
「あ、そうだ。時に近藤さん。あたしの配属と部屋割りはどうなるんですか?」
それはさておき、今の今まで何か色々グダグダがあったから忘れてたけど、一番大事な事をあたしは聞く。
「希望制だったりしますか?」
「あ、いや。実はもう決まってるんだ。」
すると、近藤さんはちょっと済まなそうな顔をした。
「各隊、欠員がいる訳じゃないし、勝手が分かった方が良いと思ったから、また副長補佐になってもらおうと思うんだ。」
「えー…」
「えー…って何だ。俺の補佐じゃ不満か?」
「いや、そうでなくて、また土方さんのパシリですか?みたいな。」
「パシったことなんざねぇだろーが。」
「あれ?そうでしたっけ?」
「お前今日それ2回目だぞ。」
「あれ?そうでしたっけ?」
「態とやってやがるな……。」
白々しく首を傾げれば、土方さんは額に青筋を浮かべる。
が、次の瞬間、徐に口角が上がった。
「……紅羽、3回、」
「うぬぅおわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!あたしが悪う御座いましたァァァァァァ!!許して下さい、御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさいっ!!!」
「分かりゃ良い。重いから放せ。」
後に続くであろう言葉を予想したが早いか、あたしは土方さんの肩を押し倒さん勢い掴む。
若干驚いたみたいだけど、土方さんは平静を装って、あたしに指図した。
勿論、言われたら放さないと、また何言われるか分かんないから素直に放す。好きで放さないでいる筋合いもないし。
そんな事より土方さんに弱味を握られてるのが悔しいったら無い。
もうこれは、これを土方さんに教えた兄者を死んでも恨むしかないのだった。
……あれ?何で語り口調?
「まぁ、役職は副長補佐で妥協しま………」
「………。」
「……否、副長補佐を喜んで御受けしますけど、部屋割りはどうなるんスか?」
せめて発言で悔しさやら恨みやらを晴らさんと、棘のある言い方を敢えて選んで、近藤さんに聞こうとしたら、土方さんの無言の威圧に発言を訂正せざるをえなかった。
何なんだよォォォォォっ!!
あたしは何時からこんなに立場弱くなったんだよォォォォォっ!!!
「部屋?ああ。空き部屋は結構あるけど、やっぱり使い勝手が分かってる方が良いと思って前と同じ部屋にしてあるよ。」
近藤さんは相変わらず人の良さそうな笑顔で答えた。
「………と、言うと、」
「うん。トシの部屋の隣。」
ガタガタガタッ!!!
「!!?」
そう近藤さんが言った直後、後方から何か倒れる様な音がして、思わず肩が飛び跳ねる。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!重っ!!重いっ!!!」
山崎さんの悲鳴に振り返れば、局長室の襖が内側に倒れ、見た事ある顔の隊士の皆がぞろぞろと雪崩れを起こしていた。そして再度その下敷きになってる山崎さん。
もう襖の神様とかに嫌われてんじゃね?
「な……何だ…ぁ?」
「テメェ等!何やってんだっ!?」
土方さんの怒声に皆はビクッとした。が、内1人がビビりつつも土方さんを見上げ口を開く。
「だって、副長ばっか、何か……狡いじゃないッスかっ!!!」
「「はぁ?」」
図らずも、疑問符が土方さんとハモってしまった。
それはさておき、さっきの隊士の発言を皮切りに、口を噤んでいた隊士達も思い思いに文句を言い出す。
「新隊士が女子だって俺達楽しみにしてたんスよっ!?」
「なのに所属も部屋割りも副長絡みじゃないっスかっ!!」
「何か副長ばっかり狡くないッスか!?」
「狡い狡いっ!!」
そーだ、そーだと隊士達は、下に山崎さんが敷かれてる事なんか御構い無しに身を乗り出した。
「お…、重い………、って…っ!!」
若干不憫である………助けないけど。(酷い)
「おいおい……。女子ったってコイツぁ鷹居だぞ?」
ぶー垂れる隊士達に土方さんは呆れ返った。
何だよそれ。
それじゃあたしが女子の底辺以下みたいじゃないか。……いや、実際そうだけど、本人の前で言う事じゃなくね?失礼じゃね?
頭を掻く土方さんに文句を付けてやろうと口を開いた刹那、山崎さんの上の襖の上の隊士達が目を丸くし、口を揃えて言った。
「「「「「「鷹居って、あの鷹居さん?嘘だっ!!」」」」」」
「……あ?」
「鷹居さんって言ったら男より男らしい鷹居さんでしょ?!」
「女って言われたけど信じらんねーしっ!」
そーだ、そーだ、とまた声を荒げる隊士達。
土方さんに文句を付けてやろうとして開いたまんまの口が別の意味で塞がんねぇ。
つーかアンタ等のが失礼だよ。
そんな状態のあたしとは裏腹に皆は相変わらず文句を言ってるし、更に土方さんは必死に笑いを堪えてるのか肩が震えてるし、山崎さんは……もういいや…。
そんな訳で、あたしの堅くない堪忍袋の緒は音を立てて千切れた。
「…………土方さん、」
「……あ?どうした?」
沸々と込み上げる感情を抑えて先ずは土方さんに一言。
「土方さん……緒が切れる音がしました……。」
「は?」
疑問符を浮かべる土方さんには気にせず、あたしはゆっくり立ち上がった。
「黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって……」
そりぁ、あたしが男に見えたり男っぽかったり男らしかったり男前だったり男もすなるだったりするのは知ってるさ。
自覚の上だよ。
別に気にはしないけども。
「……あたしが鷹居紅刃と同一人物だって分かんねぇってか?…そーかい、そーかい……、」
それはいいよ、別に。
割り切ってるし諦めてるから。
だけどさ、服が変わったくらいで別人呼ばわりはなくね?
そりゃ、晒し巻いてないから若干胸はあるにせよ顔は鷹居紅刃のまんまですけど。化粧もしてないし、髪だって染めてないんですけど。
なのに分かんねーって……。
女らしくないって言われた事でなくて覚えてない事に腹が立つっ!!!、
ダンっ!!と音を立て、あたしは勢い良く畳を踏む。
「上等だコラァァァァァァァ!!表出ろォォォォ!!1人残らずミンチにして全員纏めてハンバーグにしてデミグラスソースで和えてやらァアァァァアァァァアっ!!!」
To be continued……