chap.3
「上等だコラァァァァァァァ!!表出ろォォォォ!!1人残らずミンチにして全員纏めてハンバーグにしてデミグラスソースで和えてやらァアァァァアァァァアっ!!!」
「「「「「ぎゃあああああっ!!ホントにあの鷹居さんだったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」
相変わらず雪崩れたままの隊士達を横目に、あたしは肩を怒らせて局長室を後にした。
chap.3
身長差は5pだし
「っとに人の事何だと思ってんだよチクショー。」
近藤さんの話では変わっていないと言う自室に行けば、案の定、前日に送った荷物が佇んでいた。
ガムテープを剥ぎ取り、こっそり忍ばせておいた袴を引っ張り出してあたしは呟く。
「そんな変わっちゃいねぇってのに、どんな嫌がらせだよ。」
ぶつぶつ言いつつも、あたしは現在着ている小袖を脱ぎ散らかして、紳士物の上着に手を通さんと持ち上げた所で手を止める。
「…っと、晒し、晒し……」
いかんいかん。忘れるとこだった。あれ巻かないで手合わせとか無理だし。胸邪魔だし。
そんなにねぇけど。
端から……っつーか兄者が見たらぶっ殺されそうな格好のままあたしは再度段ボールを漁り始めた。
「あっれー…?この辺に入れたんだけどなー……」
兄者に見つからない様に中央底部に入れた筈なのにな……。
引っくり返してみっか。
「…よっ………と………お?」
段ボールをくるりと回せば不自然極まりないガムテープが底部中央にベタベタ貼ってあった。
……何だコレ。
何だこの嫌な予感。
何だこの例え様の無い悪寒。
何だこのガムテープに書いてある「愚者の分際で!」って達筆。
何だこの小さく書いてある「晒し頂戴」って字。
何だこの沸々と沸き上がる感情。
つーか………
何やってんだ兄者ぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!
「うををををんぬォるぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!あの変質者ァァァァァァァ!!!」
探してもねー訳だよ!!!
つーか底に穴開けて晒しだけ取り除くとかどんな神業!!?
その前に何で晒しが底部中央にあるか分かってんだよォォォォォォっ!!
もう此の場に山崎さんがいたら腹いせにエジ○゚ト壁画にでもしてやってる所だ。
確実に壁にめり込ませてる所だ。
「おい、何やってんだ。うるせぇぞ。」
腹立たしい事極まりない兄者の策謀にガニ股で地団駄を踏みつけてると、廊下からそんな声がした。
「あ。すんません。てか土方さん居たんスか?」
低い不機嫌な声は紛れも無く土方さんで、地団駄を止めたあたしはそう問う。
「で、何か用ッスか?」
「隊士が中庭で文句垂れてっから呼びに来た。」
「あ。忘れてた。」
そうだ。
全員纏めてミンチにしてからハンバーグ作んなきゃいけないんだった。すっかり忘れてたよ。
「おいおい……。自分から吹っ掛けた喧嘩だろーが……」
「あはは…すぐ行きますんで。」
溜め息混じりの呆れ声に苦笑いを浮かべつつ、あたしは散らばった荷物の中から紳士物の上着を取り上げた。
「それから…、」
「はい?」
と其処で再度土方さんから声が掛かり、手を止める。
「何スか?」
「新しい隊服出来上がんのが明日なんで、それまで俺の予備着てろとの事だ。」
「新しい隊服?別に前とおんなじ平隊士ので良いじゃないッスか。」
「そいつには同感だが、何せ、とっつぁん等がな……。女子用隊服作るって聞かなくてよ…。」
「げ、」
困った人達だ、と、また溜め息を吐き出す土方さん。
………つーか、何だこの嫌な予感は。
あ、このフレーズ今回2回目だ。
ってンな事どうでも良い!!
あたしは背中に走る何とも言い難い感覚に身震いした。
「……そっすか。で?」
何とも言い難い感覚は何かの間違いである事を祈りつつ、あたしは話を土方さんが来た訳に戻す。
「ああ。そんで、隊服持って来た。今開けらんねーなら、此処に置いとくが、大丈夫か?」
「有り難う御座います。あ、大丈夫っすよ。開けても問題無………い゙!!?」
返事した後に、あたしは今の状況に気付いた。
大変だ。
あたしは今、大変な格好をしているではないか。
小袖を脱ぎ散らかしたそのまんまだよ。
しまったァァァァァァァ!!!
つい何時もの癖でOK出しちゃったァァァァァァァっ!!!
「じゃあ入るぞ。」
「あぎぃっ!!?」
そんな事なんか知る由も無い、土方さんが襖に手を掛けた。
待て!
待て待て待て待て待て待て!!!
落ち着け紅羽!!
この状態で何が出来っか考えろ紅羽っ!!
しかし声がしてから物の1秒で開く襖に落ち着いて考えるなんざ無理な話であって、襖が開き始めた瞬間、あたしは手近にあった物を襖に向かって投げ付けていた。
「ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!」
「!!?おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!?」
ごすっ!!!!
鈍い音と土方さんの悲鳴と共に手近にあったそれは庭へと吹っ飛んでった。
その隙に着流しを素早く着て慌てて部屋の外に出ると…、
「ひ、土方さん?だ、大丈夫っスか……?」
土方さんはあたしが牽いてきたキャリーバッグの下敷きになっているではないか。
あたしが投げた手近にあった物とは、禄に荷物の整理もしてねー結構な重量のキャリーバッグだったらしい。
「…てっめぇ…、鷹居………っ!!」
尻餅と両手を付いた状態で、只でさえ瞳孔全開なのに、更に開いた土方さんは上目にあたしを睨んだ。
「いや、あの、アレ、ほら、あたしアレ、着替えてたんで、吃驚したんで……」
「吃驚したんで、で済むかァァァァァァァっ!!どう吃驚したらキャリーバッグ投げ付けるに至るんだよっ!!?大分重てぇぞっコレ!!?」
「いや、だから吃驚したから…」
「だからそれじゃ済まねぇってんだろ。」
「だって吃驚したんだもの。」
「だからそれじゃ済まねぇんだよ。てか何その口調?」
「吃驚したものは吃驚したんだからしょうがない。」
「しょうがなくねぇよ。何だよその妙な語呂の良さ。」
「そんな事言ったって吃驚、」
「よし分かった。俺が解釈すっから腹切れ。」
「………御免なさい。あたしの不注意で御座いました。」
叱られたくなくてグダグダ言い訳垂れてたら、立ち上がった土方さんが抜刀したんで、あたしは有無を言わずに土下座する。
だって目がマジなんだよっ!!!
どの位マジかってーと、マジと書いて敢えて本気って読むぐらいマジなんだよっ!!!
「自分が着替えてんの忘れてました。自宅に居る気満々でした。すいませんでしたーっ!!!」
「自分が着替えてんの忘れてたって、お前……」
額を地べたに擦り付けてれば、カチン、と金属音がして土方さんの溜め息が聞こえた。
刀は仕舞ってくれたらしい。
って事は腹切り取り消しの御咎め無しなんじゃね?
「此の件はまた後回しにすっから、取り敢えずコレ着てさっさと中庭行ってこい。」
御咎め有りだった!
後回しにされただけだった!
畜生期待させやがって…っ!!
がっかりしつつ頭を上げれば屈んだ土方さんはきっちり畳まれた隊服を差し出していた。
アイロンまで掛かってるよ、この几帳面が。
「あーい。有り難う御座いますー。」
あたしは額に付いた土を払って、隊服を受け取り一礼する。
「急げよ。家に気の長ぇ奴ぁ少ねぇからな。」
「あーい。」
それだけ言い残すと、紫煙を吐き出しその場を立ち去った。
「………。」
あたしはその背を見送り、手元にある隊長服に目を落とす。
土方さんの隊服だからヤニ臭そうでアレだが、身長差は5pだし、サイズは問題なさそうだ。
……あ。
………そう言えば、あたし、土方さんと身長5pしか違わないんだ……。
「…………。」
面白い事考えた……!
「…………ふふ、ふへへへへへへ………!!」
あたしは奇っ怪に笑って、引っくり返った荷物から一応持ってきた“例のアレ”を探しださんと、散らばりまくった物の山を漁り始めた。
To be continued……