Memo
相澤
ある時はゼリー飲料で
またある時はサルミアッキ
「お前ぐらいだよ、これ食うの」
手の上にざらざらと出された菓子を
まとめて口の中に放る
「まぁ食べられなくはないかな」
「好きなわけじゃないのか」
貴方がくれるから食べてるだけだと
いつか白状するその日までマイク
肩を並べて窮地を脱する
何でもお願い聞いちゃうぜ
軽口を叩きお礼を言ってくれる彼
少しだけ真面目な顔で
提示してみる交換条件
きょとんとした顔をした彼に
冗談だよと流そうとすると
頬に一瞬唇が触れた
びっくりして見上げた私の目に
「こんなんでいいの?」と
彼がはにかむ相澤
隣の席の同僚は
最近物思いに耽る事が多い
学校付近の敵制圧
駆け付けた女性ヒーローと
交わす一瞬のアイコンタクト
彼女がアイツの名を呼ぶと
見事な連携で敵を追い詰める
どうやらそういう事らしい
ハイタッチに応じる
ゴーグルをかけたアイツの口元は
ほんの少しだけ笑っていたマイク
何やら疲れているらしく
彼が腰に抱きついて動かなくなった
「もーヤダ、今日は人と会いたくNEEE!」
腹に顔を埋めて喋る
頭をわしゃわしゃ撫でてやる
私も「人」なんだけどと
言ってみたらへにゃりと笑い
ちょっと考え照れくさそうに
「君は別腹ってヤツ」相澤
救助者の意識を確かめるため
彼女が順番に頬に触れ
間近で瞳を覗き込み声をかける
中には頬を染めるヤツもいて
男はこっちによこせと言うと
理解していない顔で頷いた
「そういうとこだよ」と一人ごちる
男だろうが女だろうが分け隔てなく接する
そんな彼女がたまらなく嫌いだマイク
スーツで隠れる身体に
残る数多の過去の傷跡
彼のグローブに指を忍ばせ
まだ生々しい傷を指の腹でなぞる
瘡蓋触れる指先は
そっと握られ止められて
「誘ってンの?」彼が言う
私だけが知っているという
ほの暗い優越感に酔う
貴方はきっと気づいているのに
何も知らない顔で笑う相澤
ため息をついて見やる携帯
元彼からのメールがしつこく
最近辟易しているのだという
「着信拒否じゃダメなのか」
「いやぁちょっと怖くてさ」
画面をいじる彼女の指を取り
通知の出ない新規フォルダへ
「後は俺に転送しとけ」
単なる独占欲なのに
気楽な彼女は助かるよと笑ったマイク
画面に表示される
新着メール一件
添付された短い動画
見て見てとはしゃぐ彼女と満点の星空
一番に俺に見せたかったのだという
メッセージに頬が緩む
彼女の言葉を信じるならば
誰に恋をしているのかを
知る方法があるという
日常の小さな幸せを
教えてあげたくなる相手相澤
目を覚ますと既に隣にぬくもりは無く
どうやら仕事に出たらしい
肩にかけられた毛布と
何故か置かれた一枚の封筒
今日はいったい何の日だっけ
彼らしくシンプルな
愛情を示す一言が
書かれた便箋に頬が熱くなる
多分これは初めての
彼から貰った手紙
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珍しく鳴る玄関のチャイム
「悪い、出てくれ」という彼が
浴室から顔だけ覗かせる
先日参列した結婚式の
引き出物が届いたらしい
彼の名字で書くサイン
結構上手に書けたので彼に見せると
髪を拭いたタオルを被せられ
「何度も書くから練習しとけ」と
持っていた伝票に花丸をくれた
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