Memo
相澤
彼の手から茶碗を受け取る
「大盛りにする?」
「いいのか、頼むよ」
ゼリーばかり食べているから
食が細いのだと思っていたという独り言に
「お前の作るご飯は美味いからな」
という彼の返事
西京焼きを一切れおまけして
私はお茶を飲みながら
ご飯を頬張る彼を眺めていたマイク
ラジオから帰ってきた彼と
音楽を聴きながら
朝日差し込む湯船に浸かる
舟をこぎはじめた彼を見て
寄りかかれるよう背中側に回り込んだ
「アレ、オレ寝てた?」
「枕になってあげるから寝てていいよ」
このアルバムが終わるまで
少しだけ寝かせてあげよう
彼の寝息を首筋で感じて相澤
目が疲れたという彼の背を押し
光を落として暗闇の中
背中を預けて入った湯船
濡れた髪を彼がまとめてくれる
「目は楽だが良く見えないな」
言いながら後れ毛を掬い上げ
うなじをなぞるその指に
くすぐったくて笑いが零れる
暗い中はいるのも悪くないなと
呟く声を聴きながらマイク
ぽつんと忘れられた携帯がひとつ
ロック画面には夕日の沈む海をバックに
佇む女性の小さなシルエット
「Oops!やっぱココにあったか。そいつは俺の携帯だぜリスナー」
先生の手に携帯を返し
彼女ですかとこっそり聞いてみたら
人差し指を唇に当てて
上手なウィンクを返された相澤
教卓に置かれた携帯が震える
ロック画面は膝に乗った猫
誰のだと騒いでいるところに聞こえる
俺のだという返事に固まる皆
先生の手に携帯を返す
ヘソ天で寝る猫が乗っている膝は
先生とは違って細かったように思う
「…何だ。可愛いだろ猫」
彼女ですかと、聞く勇気は僕にはないマイク
蜜柑を一房もいでは口に入れる
もう一つ食べようと皮を剥くと
彼が天板に頬をくっつけこちらを見ていた
「チョーダイ」
あんぐりと開けておねだりする
彼の口には
一房はちょっと少ない気がして
二房ずつ放り込む
彼があまりに美味しそうに食べるので
蜜柑は一つも残らなかった相澤
炬燵の上にあった蜜柑
どうせ温まっているのならと
白いところをどれだけ上手に取れるか
頑張って数分
無言で彼も同じことを始めた
「できた!」
「俺もできたよ」
何故かそのまま交換されて
私は今、私がやるよりはるかに綺麗に
白い所を取り去られた
つるつるの蜜柑を食べているマイク
自分のと素材が違うなと思って袖を通したら
意外と伸縮性があって着やすくて
上下ともに彼のスーツを身に着ける
気づいたらお風呂上がりの彼が居て
「あっごめん、今脱ぐね」
「WaitWait!まって脱がないで携帯取って!」
あまりの慌てぶりに私はにっこり微笑んで
スーツを脱いだ相澤
タンスの奥から彼の旧式スーツを発見
部屋着の上から着てもブカブカで袖を折る
「………何やってんだ」
「コレいつの?今のと違うね」
「待て、振り向くな。俺は出てくから脱いでそこに置け」
「え、あ、はい」
なんで危険物扱いされるんだか解せないが
首を捻りつつスーツを脱いだマイク
お茶を飲みながら近況を話す
仕事にしているだけあって
彼の話は聞いていて飽きない
手を動かさなくても喋れるだろうか
くるくるとよく動く手を取って
テーブルの上に指を絡めて縫い止める
「な、何Soon?どしたのHoney?」
聞いてくる彼は
きっと少しだけ照れていた
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