Memo
相澤
パソコンを前にして
目頭を抑えて動かなくなった彼を見て
作ってきたのは蒸しタオル
無理矢理膝に頭を乗せさせ
目の上にタオルを乗せたら大人しくなった
「どうよ」
「悪くないな」
膝枕が?タオルが?と聞いてみたい
衝動に駆られる
貴方はなんて答えるんだろう相澤
ヒーロースーツの仕様が変わり
不慣れな高いヒールになってしまった
痛む爪先に舌打ち一つ
敵の引き渡しを終えて帰ろうとしたら
引き止める彼の声
「やるから履いて帰れ」
彼の手には買ったばかりらしいクロッ○ス
彼らしさに笑いが溢れる
「ありがと。お礼にラーメンでもどう」マイク
水の個性持ちの暴走であたりは水浸し
貞子状態になった髪をかき分け顔を覗き込む
「オヤジさんやってる?」
「閉店だYo...」
生ぬるい水が滴る濡れたジャケットが
私の肩にかけられる
髪の毛のセットが大変なのだと怒る彼が
意外と紳士なのだということは
あまり知られていないマイク
『あいこでしょ!』
買い出しをかけた真剣勝負
「やりぃ!オレの勝ち」
「負けたー!…行ってきます」
上着を羽織って玄関に向かうと
目に入ったのはコートを着た大きな背中
「勝ったのになんで?」
「夜に一人で行かせるわけないデショ」
いこうぜ、と差し出される手を取って相澤
爪には塗りたてのネイルコート
目の前には溶けてきたアイス
「何やってるんだ」
「アイスと格闘してたら爪が欠けまして」
「溶けてきてないか」
「助けて…」
ため息とともに、目の前に差し出される
アイスの乗ったスプーン
冷凍庫に入れてきてほしかったんだけど
まぁ、いいかマイク
目の前にある階段を駆け上がり
彼に向かって振り返る
メガネを取り上げ
彼のおでこにキスをして
赤くなった彼にくるりと背を向けメガネをかける
それは反則じゃナイ?なんて声は
聞こえないことにした
背の高い彼に、一度やってみたかったのだと
後で教えてあげようか相澤
そもそも彼はずるいのだ
私からでは届かないし
出来ないと思っているのだろう
こちらを見下ろす彼のマフラーを引いて
ちくちくする頬に唇で触れた
口じゃないのか?と笑われる
やっぱり彼はずるいのだ
勇気が足りなかったことは
分かっているはずなのにマイク
「もーちょいココいるから、部屋帰ったら窓開けて」
車で送ってくれた彼が言う
言われた通り、自室の窓から彼を見下ろすと
携帯の液晶が光る
表示されるのは彼の名前
「オヤスミ」「おやすみなさい」
投げキスをする彼にキスを返して手を振って
これが心配性な彼と私のお約束相澤
「あれ、何でここいんの」
終電で帰る最寄駅
ほろ酔いの私が目にしたのは
マフラーに顔を埋めた彼の姿
「お前携帯どうした」
「持ってるけど…あ、充電切れてた」
ため息をついて「帰るぞ」と先を行く彼の背を追う
充電した携帯には一言
遅い帰りを心配するメッセージマイク
髪を掴まれ咄嗟にナイフに手をかける
髪に向けて思い切り振りぬこうとした瞬間
手首が掴まれ、横から伸びた足が敵を蹴り倒した
「っありがとう!」
「No worries!気ィつけてな」
歯を見せて笑う表情と裏腹に
踵で敵を容赦なく踏みにじる彼の目は
果たして笑っていたのだろうか
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