Memo
相澤
髪を引かれて立ち止まる
「待て。俺のスーツに絡まってる」
「マジかゴメン!切っちゃって」
「少し待ってろ…もういいぞ」
振り返ると私の髪の端をつまんだままの彼
「切らなかったんだ」
「綺麗な髪なんだから勿体ないだろ」
指を離した彼は何事もなかったかのように背を向けたマイク
走りながら歌を口ずさめる肺活量に感心しつつ
ルームランナーについた
スピードアップのボタンを連打する
「Hey.Honeyそれはないんじゃナイ?!」
「頑張れ*頑張れ*」
焦って全力ダッシュする彼がなんだか可愛くて
意地悪したくなったのだと言ったら
許して貰えないだろうか相澤
ストイックに腕立てを繰り返す彼に
ちょっと悪戯心が芽生えて跨ってみた
「おい」
「やっぱ重い?」
「いや、乗るならちゃんと乗れ」
あぐらをかいて彼の背に座りなおす
まさかこれが日課になるとはこのときは思いもしなかった
「腕立てするから乗ってくれ」「マジで言ってる?」マイク
「唇剥けちゃってるぜ」
己の唇をトントンと指で叩いて見せる彼
舌で探ってみると微かに血の味がする
「舐めねぇの。ホラこっち向いて」
リップヴァームを付けた彼の長い紅差し指が
優しく私の唇をなぞる
私もリップクリームは持っているけれど
今日は忘れたことにしよう相澤
吹き付けた風のせいで目にゴミが入り
ゴシゴシと目を擦るが取れる気配がない
「見せてみろ」
擦るな、と手を取られ
顎に触れる手に誘われるまま彼を見上げる
大粒の雫が目を洗い流し
滲んだ景色の向こうでは愛用の目薬を持った彼が
使い回しは良くないんだがなと苦笑していた相澤
非強制の出動要請
待ち合わせ場所から近い
迷わず飛び出し走る
ヴィランの姿を探し屋根の上に駆け上がると、見慣れた背中
「今日のデート、随分きな臭くなったね」
「コレがデートでいいのか?はよ終わらせるぞ」
ゴーグル代わりに私のアイウェアを投げて、私は彼と肩を並べたマイク
ベッドに縺れ込んだ所で鳴り響く本日三度目の着信音。
「…アー…お互い非番なのは分かってんだケド」
「うん…必要無いかもだけど」
『行っていいかな』
お互い目を見合わせて笑い、彼に手を引かれて起き上がる。
サングラスを掛けなおした彼はもうヒーローの顔をしていた。マイク
邪魔をしないよう、ソファに座る彼の足元に座り
彼の長い脚に身を寄せる
「Sorry.もーちょいで読み終わる」
「いいよ、仕事でしょ」
台本に視線を落としたままの彼の手が頭に触れ
私の頭を膝にもたれかけさせるように髪を撫でる
彼の体温を頬に感じながら私はそっと目を閉じた相澤
キーボードの上を忙しなく動く彼の指
新しい珈琲を淹れて手渡す私
「ああ、すまん」
こちらを見もせずカップに伸ばすその手を取って
お姫様にするように、その甲にキスを落とす
「…くれるんじゃなかったのか」
後で構ってやるからいい子にしとけという彼を
もう暫く待つとしようマイク
余興をやる羽目になりDVDを見ながらダンス練習
「Hey.どっち側担当?」
「…左の女性パート。見てたの?恥ずかしいんだけど」
「OK、オレ右側な。…で、踊る相手は男?」
「ううん女の子」
先に完コピした彼が教えてくれた…が、
…さっきのは焼きもちだったんだろうか?
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