Snooze
開けっ放しのカーテンから射し込む光が目に刺さり、私は顔を歪めた。
「もー…消太、また窓から帰ってきたな…」
そろそろ起きようかと身体を起こすと、太くて傷だらけの腕が腰に絡みついて、再び布団の中に引きずりこまれてしまった。
「まだいいだろ…寒い」
「珍しい、今日はオフなの?」
私を湯たんぽがわりにする彼は、うんとも、ううんとも取れる音にならない返事を返しながら無遠慮に胸や腹をわし掴みにして、首元にぐりぐりと頭を押し付けると、再び眠りの中に落ちていく。
重い腕を少し退かして、彼の方に向き直り、眉間に皺を寄せた寝顔を見つめる。彼女を抱き枕にしておいてその寝顔は無いんじゃないかと思いながら眉根を指で撫でると、少しだけ皺が浅くなった。
そういえば、眉根に皺の寄っていない寝顔は見たことがないかもしれない。
長い前髪を払う。少しでも穏やかに眠れればいいのにと彼の頭を胸元に抱き寄せてみた。
「………ん、なんだ」
「難しい顔して寝てたから…、心臓の音ってリラックスできるらしいよ」
ハグにもストレス解消効果があるらしいし、と胸元の彼を見下ろすと、まだ目を瞑ったまま眠りと現実の間を彷徨っているようだった。
「まだ寝てていいよ。…今度窓から入ったらカーテン閉めること」
癖のある髪を撫でると、また音にならない声でなんとも言えない返事が聞こえる。起きたらもう一度言ってやろう。
「おやすみ」
額に唇を落とす。微かに微笑んだ彼が、穏やかな寝息を立て始めるまで、そんなに時間はかからなかった。