ここまでとは。

無事お金を引き出すことに成功。
後は働くところだけど、腹が減っては戦は出来ぬ。

ということでとりあえずその変にあった飲食店に入る。

適当なものを頼むと、携帯を取り出し、メモを開く。

とりあえず、私の今置かれている状況について軽く整理する。

・ここは名探偵の世界
・錬金術使える
・ある程度の保証はされている
・とりあえず巻き込まれない!

……整理しようと思ったけど余計混乱してきた。

ついでにこの世界について色々と検索をかけてみた。
名探偵コナンについては全くヒットしなかったし、所々違っているところもあるけど、大方は一緒らしい。

「小説、新人賞、か……」

検索をかけているうちにふとそんな文字が目に入る。

前に、諦めた夢だ。

「……」

暫く文字を読むでもなくその画面を眺めていた。そろそろでようか、とレジに向かった時。

「う、動くなああああっ!!!」

引き寄せられる感覚と共に、首に冷たい何かが当てられる。

「かかか、金を出せ! さもないとこここ、この女を、ここ、殺すぞ!」

「まじか」

銀行でこのイベントあると思って銀行は大丈夫だったし完全に気を抜いてたぞ。

え、まじか!!

首に当てられたナイフは紛れもなく本物だし、この強盗の男、おどおどして何をしでかすかわからない。

そして、1番の心配は、

(なんで貴方がこんな所にいるんですか安室さん!!)

これは、ちょっとまずい。
手っ取り早く退散したい。

(って、私錬金術使えるのか)

ナイフの刃先を、気づかれないように錬金術で丸めてしまえば一件落着な気がする。

安室さんが一歩前に踏み出す。
犯人はそちらを向く。

(今、いける)

両手でナイフを掴み、見た目は限りなく変わらないようにして刃先だけを丸める。

バチッ、とナイフを包み込んだ手の中で音が鳴る。

「ななな、なんだこの女ぁっ! 正気か?!」

若干犯人に引かれる。手より心が痛いわ。

「……こんな玩具で強盗しようなんて、もう、やめましょう?」
「え?」
「何?」

犯人と安室さんの驚く声が聞こえる。
犯人がぐっと力を込めるが、私の首に切り傷がつくことはない。

「ど、どうし、ひ、ひぃ」

ナイフを投げ捨て、犯人は逃亡しようと試みるが、安室さんに呆気なく捕えられていた。

警察が来て、色々あったけれど、犯人のナイフは刃先が丸まっていたし、被害もなかったということで思ったより早く解放された。

バイト探しはまた今度。早く帰ろう。

「大丈夫でしたか? 随分怖い思いをしたと思います、良い店を知っているのでコーヒーでもご馳走しますよ」

……にっこり笑顔、に見える顔でそこに立っている安室さんさえいなければ、私、今頃家だったと思うんですが。