長い廊下を走り、重たい扉を開けるとそこには想像を越えた光景が広がっていた。
一面真っ白なとても広い部屋に瀬谷の血の匂いが広がっているのか、頭をクラクラさせ吸血鬼化を軽々と誘引される。仁王は深呼吸と共に自らを落ち着かせると、ようやく部屋の中央に倒れている瀬谷に気づく。
「千尋っ!!……っ!」
「やあ、仁王!…会いたかったよ」
倒れた瀬谷に近づこうとすると幸村が立ち塞がり、仁王は瞬時に距離をとる。
幸村は横たわる瀬谷に近づき、胸元から小さな薬品入りの試験管を取り出す。試験管はコルクによって蓋がされており、それを外し口元へと運ぶ。
「お前さん…何するつもりぜよ!」
「大人しく見てろ、一歩でも動けば…この子は助からないよ」
口元の笑みを仁王には見せないように、瀬谷の口元を少し開かせ薬品を流し入れる。
幸村は知っていた、仁王がこの女が自らの手にある以上攻撃が出来ない事を…。
薬品を流し入れた試験管を胸元に戻し、女から離れると仁王は瀬谷に駆け寄る。額にはうっすら汗が滲み苦しげな表情を浮かべている事を見るなり、良い物を飲まされたわけではないのは仁王でも分かった。
「何飲ませたんじゃ!」
「ふふふ…ゆっくりと身体を蝕んで行き最終的には死んじゃう薬だよ」
幸村は高らかに笑い、椅子に座り仁王と瀬谷を見下ろす。
「まさ、は…る」
「俺はここに居るぜよ、」
意識朦朧とする瀬谷の手を握り、仁王は安心させるかのように優しく頭を撫でてあげる。
机の引き出しから幸村は別の小さな試験管を取り出し、仁王にそれを見せる。
「そう、これが解毒剤。しかもこれ1つしかないから割れたらその子は治らないよ…さあ仁王どうする?」
「それを、頼むからこいつにやってくれ」
「じゃあ、君はまた僕の元へ戻ってくると…そう誓うんだね?」
視線を変え瀬谷を見ると苦しそうに顔を歪め、今の自分は幸村を攻撃しようとすれば解毒剤を壊されかねない…。
自分は何千年も生きる命だが千尋はそうではない。そう考えれば、再び実験台として過ごすしかないのだ。
「さあ、君は柳が作った新作を試してもらわなきゃ…ここで抵抗したら解毒剤は壊れるからね?」
「分かってる、早くしてくれ」
銀の拘束具を用意し、両手両足に嵌められる。こうなるともう俺は能力を使えない。
幸村から解毒剤を渡され、味見をするなり薬の味が舌に広がる。どうやらこちらは本当に解毒剤であっているようだ。
瀬谷の息は非常に細くなり、早く解毒剤を飲ませないといけない状態であった。
拘束され自由に手を動かせない仁王は、自分の口に解毒剤を含み口移しによって瀬谷の口へ解毒剤を流し入れた。
「良かった、顔色が戻ったなり…」
「んん…まさはる?わたし…」
頭を押さえながら上半身を起こした私は、意識朦朧としている間のこの状況を判断出来ずに居た。分かった事は自分の代わりに雅治が犠牲になってしまったという事だ。
「はーっははは!!仁王…君は君で無くなるけど、悪く思わないでくれよ?」
