05


明日は彼の生活に必要な物を買い揃えよう、と考えながら瀬谷はそんな彼のために仮ではあるが布団を用意した。

するとゴミ捨てが終わった仁王が帰ってきたのかドアを閉める音がした。リビングに入ってくるや否や用意した仮の布団に仁王は倒れる。


「え、仁王さん、大丈夫?」


すると規則正しい寝息が聞こえてくる。誰だ吸血鬼は夜行性と言ったのは、と思ったがカーテンの向こうは薄明るくどうやら太陽が昇ってきていた。

仁王に毛布を掛け瀬谷は自らのベッドに入り明かりを消し、静かに目を綴じた。


―――
――



「千尋は俺が化け物になっても…愛してくれるかのう…?」


またこの声の夢だ。あれ?でもこの声どこかで聞いたことがあるような…この声、この変わった話し方をするのは仁王さんしか居ない。でもどうして私の夢の中に仁王さんが居るの?愛してくれるってどういう事?


「仁王さん待って!仁王さんは化け物なんかじゃな――」


い、と言い終わらぬ内に瀬谷は夢から醒めてしまった。朝日が差し込み時計の針はお昼前を指している。

再び夢の中に戻るために寝返りをしようとすると、何かとぶつかり身体が動かない。目を開けて確認するとそこには静かに眠る仁王の姿があった。


「うわぁ!」

「ん、うるさ……うわ眩し…もう昼か?」

「な、なんで仁王さん私のベッドで一緒になって寝てるんですか!仁王さんの用意しましたよね??」

「人肌っつーのは眠り心地よくての、ついな!それに千尋の寝顔可愛かったナリ」

「もう、話逸らさないでください!」


掛け布団引っ張りなさんな!なんて壁の方を向いた瀬谷に仁王が言う、名前を呼ばれるのもたまには悪くないかもと壁を向いたまま微笑む。ふと、夢の事を思い出し仁王の方を振り向く。


「仁王さんって、私とどこかで会ったことありますか?」

「雅治でええよ。んーどうだろうなあ、俺はずっと軍に隔離されとったから外に出たのはもうかれこれ数年ぶりぜよ」

「吸血鬼ってやっぱり皆長生きなんですね、朝は平気そうだし。あの…軍って何?」

「活動向きでは無いが太陽の光を浴びても死んだりせんよ。大都市の下にでっかい地下施設があっての、俺はそこで軍にあらゆる実験をされててな…実験っつーのは簡単なものじゃなくモルモットのような扱いばっかりだったんじゃ。そのせいで仲間もたくさん死んだ」


自分の事を語る仁王はとても悲しい目をしていた。何百何千とこれから生きる彼に何て声を掛けていいか分からない。


「あの場所にはまだ俺の仲間が軍の施設に囚われてるんじゃ、助けに行かんといけん。この世界を楽しみたいし、千尋の血があれば過ごしやす…おっと後半口がすべったぜよ」

「後半ばっちり聞こえてます!もう、心配して損した!早く着替えて、お出かけの準備!!」


掛け布団と仁王ごと床に用意した布団へ瀬谷は笑いながら落とす。

ベッドから落ちた仁王が顔を覗かせる。


「やりおったな…こちょこちょの刑じゃ」


形勢逆転、ベッドに再び上がった仁王に脇の下をくすぐられた瀬谷は笑い転げる。

こんなに笑ったのはいつぶりだろう、彼が吸血鬼という事を忘れてしまいそうになる。