09


軍は海岸沿いに小さな建物を建設し、そこから地下施設へと出入りしている事を柳生は教えてくれた。瀬谷が仕事の間仁王は軍の地下施設へ行くための建物へと足を運んでいた。


「見張りは三人か」


闇夜でも視界が昼間と変わらず見える吸血鬼にはもってこいの夜だ。

岩陰に隠れ仁王が手を海に向けると、水はしゃぼん玉のようにふわふわと浮くと三人の目の前で思い切り弾ける。見張り三人は驚き辺りを見渡すが、一体何が起こったか分からなかった。

その間に仁王は建物中へと侵入していた。


「どこに地下施設への通路はあるんじゃ、どこ見ても分からんぜよ」

「吸血鬼に、簡単に分かるわけがないだろ」


仁王はすぐさま振り返るとそこには、黒い軍服を身に纏う真田の姿があった。

床に手を当て仁王は能力を使おうとしたが、力は発動されず気づいた時には真田が剣を振り下ろしているのが見えた。


「っ…うぁっ!」

「ふっ、力を使えぬ吸血鬼など非力に過ぎん…!」


剣はどうやら銀で作られていたのか、仁王の傷は中々塞がらず腹と足に傷を受けてしまった。真田は追い討ちをかけるように仁王を思い切り殴り飛ばし建物の外へ近くにある木に頭と背中を強く打ちつけ仁王はそのまま気絶してしまった。


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その頃中々シフトが被らない白石と瀬谷が久しぶりにシフトが被りカウンターの中で、お客さんが居ないため会話していた。


「遅番久しぶりですね、白石さん」

「せやなあ、切原君が珍しく夜休みたい言うてたらしくてな。朝と交換してくれたからええけどな」


乾いたグラスを瀬谷は棚に戻しつつ、白石が洗った物を受け取り布巾で拭いて棚に戻していく。


「なあ、千尋ちゃんってこの前一緒に居た白髪の男好きなん?」

「えっ…!」


動揺したのか手からお皿は離れ、ぱりんと音を鳴らしお皿が足元で割れる。


「悪いな、俺が変な質問したばっかりに…。ホウキとちり取り持ってくるまで、そのまま触らんでおいとくんやで」


白石は謝りながらホウキとちり取りを探しに事務所に消えた、その間余りにもする事がなく散らばったお皿の大きな破片だけをホウキで集めやすいように真ん中へと集める。


「いたっ…!破片刺さったかな…」


指先に小さな破片が刺さってしまったのか血が止まらず、不慣れな逆手で瀬谷は救急箱がある戸棚を開けようとする。

そこに丁度ホウキとちり取りを手にした白石が戻り、待っていられず破片を触った瀬谷に気づき慌てて近づく。


「傷、見せてみ?」

「あ、はい……えっ!」


一瞬の事で分からなかったが白石が瀬谷の指を口に入れ、俗にいう唾をつけとけば治るという事ををしているのか瀬谷は余りの恥ずかしさから白石の顔を直視出来ず顔を逸らしされるがままになっていた。

一瞬だけど白石さんの目が赤く見えたような気がしたけど、目を綴じてる今では分からない。それに私の見間違いかもしれない。

口から手を離されたと思ったら絆創膏を貼られ、確認しようにも白石は瀬谷から視線を外し外を気にしているのか余計に聞きづらい状況になってしまった…。


「なあ、千尋ちゃん?悪いんやけど少し店番頼んでもええか?」


そう言うと瀬谷が答える前に、白石は焦っているのか上着を片手に店を飛び出して行った。